混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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はい、予定に無かった日本へ……先週の作者は何やってるんだ!! アニメの影響受けすぎだろ!!


〈13章 ライン 日本編〉
13-1 憧れの日本


 

 左遷当日、ウェリントン空港には見知った顔が見送りに来ていた。

 

「ライン……僕も行きたいけど……」

 

 泣きじゃくるマナン。でも追いかけてくるんじゃないぞ。

 

「いいや、責任は俺が取らないと行けない。それにあの日本へ行けるんだぜ」

 

 慰める為に精一杯の笑顔を見せる。マナン、俺は大丈夫だ。

 

「う、うん……あ、ご飯に困ったら言ってね。送るから」

 

 お前は俺の母親か!! だがその優しさが嬉しい。

 

「……相変わらずの夫婦漫才ね。ライン……私は待ってるわよ」

 

 薄い胸を張るティナ。待っているか……戻る所があるというのは良いな。

 

 一瞬ティナの表情に陰りが見えたがティナでも寂しいと思うのかな。

 

「……元気でね、ライン」

 

 明らかに落ち込んでいるドリー。いや俺は死にに行くんではないぞ。確かに敵領内だが。

 

「ふんっ……何も言うことは無い」

 

 目を合わせてくれないアーロン。いや言わなくてもお前の気持ちは分かるぞ、多分。

 

「ライン君……」

 

 こちらも泣き出しそうな女性が居る。エマ先生だ。

 

「大丈夫ですよ。代表に危険な任務を与えられた訳ではありませんし、これは自分への試練だと思います」

 

 勝手な解釈だったが、それで納得したのかエマ先生も頷く。

 

「じゃあ、行きます。見送りありがとうございまーー」

 

「ーーおい!!」

 

 振り向くとそこにはあの3人組が。たのむから最後にイヤミで送らないでくれ。

 

「……お前、帰ってこいよ」

 

 は? 今なんて言った? お前死んでこいだよな?

 

 珍しく居心地が悪そうにモジモジしているエドウィン。

 俺が呆けていると大声で叫ぶ。

 

「だから!! お前が居ないと弄れないだろ!! 日本なんぞで死ぬなよ!!」

 

 大きく肩を上下するエドウィン。不器用な言葉だが気持ちは伝わった。

 

「ああ、次は俺がいじめる番だ」

 

 お互いに不敵に微笑むとそれを合図に飛行機への搭乗開始のお知らせが聞こえる。

 

「では、皆ありがとうな。いつになるか分からないが必ず帰ってくる!!」

 

 ギリギリまで手を振ってくれるマナン達と離れる事に寂しさを感じて足が重くなる。だが後ろから迫る乗客達が急かしていく。

 

 

 

 

 

 動き出した飛行機の窓側の席が取れた。大きなウェリントン空港の様子が見える。多くの飛行機が離発着をしている。世界でも有数な空港だから当たり前の事だが。

 

 飛行機を見るための展望台には多くの子供と親が来ている。飛行機マニアも居るみたいだ。

 だがそこに明らかに目立つ男が居た。赤髪の男、グレンだ。グレンもこちらに気付いてるらしく目線が交差する。

 

 たった1秒の交差だったがその間に手話によって交わした言葉で十分だった。

 

 アイツは言っていた。

 

 俺はここで待っていると。

 

 

 

 

 

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 同じ地球だというのに季節が真逆な日本。こちらはまだ残暑が残っている。向こうはもうすぐ春だというのに。

 地球連合国へ飛行機で行き陸路で火星独立軍の領内に行き、海路でやってきた。それも見つからないようにだ。

 海岸線が多い日本には簡単に入れるがもし警察にでも捕まったら偽造パスポートはすぐにバレてしまう。まあ泊まったり、レンタルする分には問題ない。

 

 さてどうするか……

 

 とりあえず目の前の崖を登っていく。魔法で強化した肉体ならば楽々だ。少しの取っ手があれば上がれる。これが忍者の気分なのか。

 

 崖を上がると幸いな事に誰も居なかった。そもそもここは観光スポットでも無いしな。

 

 目の前に有るのは片道の舗装されてない道路。近くに民家は無いし、来た車に乗せて貰うしか無いな。

 

 暫くして日が暮れて来た頃、石を海に投げるのも飽きてきた。そんな頃に白塗りの軽トラックが目の前に止まる。

 

「こんな所でどうした?外人さんよ。何にも無いぜここには。あ、Do you speak Japanese?」

 

 たどたどしい英語で真っ黒に日焼けしたおじさんが声を掛けてくれる。

 

「こんにちは。実はサイクリングしてたら海に自転車が落ちてしまって……戻ろうにも駅が遠すぎて途方にくれてました」

 

 全て作り話だが、それよりも俺の日本語にびっくりしたようだ。

 

「え? 日本語喋れるのかい? なーんだ、頑張って損しちまったよ。それにしても流暢な日本語だね。留学生かい?」

 

 日本語が通じると知って上機嫌になるおじさん。これはいけそうだ。

 

「いえ、留学生では無いのですが、日本が大好きで独学で勉強しててとうとう来てしまいました。初めての日本ですが、親切な方ばかりで嬉しいです」

 

 わざと所々片言にしておく。勉強中の留学生の方が都合が良い。日本を良く見せたいと親切になるからだ。

 

「そりゃあよかったな。あ、でも海に自転車落としたのは災難だったな。そこからじゃもう海の藻屑だな」

 

 崖の高さを確認しながら自転車は諦めなと言うおじさん。さあここからが交渉の時間だ。

 

「あの、すみませんが、近くの駅まで送ってくださりませんか? こうなってしまった以上サイクリングは諦めて名所巡りでもしようかと思ってます」

 

 車を奪うという手もあったが、好きな日本にそんなことしたくないし、穏便で済むならそれが良かった。

 

「もちろん良いって事よ!! 良し、乗りな」

 

 助手席のゴミを中に入れるおじさん。そんな適当でいいのか。

 

 一応綺麗になった助手席を叩いておいでと言う。まあ乗れるなら文句は無い。

 

 そして道中、質問攻めにあった。

 何処から来たのか、日本語はどこで勉強したのか等々。

 

 一応、出身はヨーロッパの方と答えた。あそこらへんは火星独立軍の支配下だから可笑しくはないはずだ。

 

 するとおじさんは顔を曇らせて言う。

 

「ここだけの秘密な。俺は火星軍か地球軍かなんかどうでも良い。平和に暮らせればどっちでも良いもんだ」

 

 この意見は心からの言葉だと思う。

 戦争なんてオセロゲームと同じだ。白黒すぐに入れ替わり、支配者が変わるだけだ。それが良い支配者ならば文句は無い。悪い支配者ならば戦うだけだ。

 

 独立国出身の俺としてはこの考え方に違和感を感じる。自国への誇りはないのかと。自分達の手で国を動かせる方が良いではないか。

 

 だが長らく地球連合国に統治された日本はもう支配者は遠い存在なのだろう。

 

 戦争に関わらない人々も居ることを思い出させてくれた時間だった。

 

 

 

 

 

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「じゃあ日本を堪能して行けよ」

 

 手を車内から振って走って行くおじさん。ありがとう。

 

 やっとのことでついた駅は寂れた駅だった。利用者はほとんどおらず、同じように待つのは学生か老人だった。外国人が珍しいのかチラチラと視線を送ってくる。

 

 確かにこのような場所には火星独立軍は来ない。また観光客も来ない。ならここは昔から変わらない日本なのだ。

 

 古き良き日本を堪能していると、車輪付きの車両がやって来る。

 何とここは一世代前なのか。

 

 エルス国にもあるが、あくまでも懐かしい乗り物として使われている。観光用だ。

 

 だがここでは未だ、実用されている。ほとんどの電車はモノレールと化している。

 

 一定間隔に感じる振動と音が飽きさせない。むしろ心地良く感じさせてくれる。

 速度は遅いがその分景色が良く見える。モノレールでは一瞬だから楽しめない。観光スポットの低速なら楽しめるが。

 

 トンネルを抜けると山々に色付いた紅葉が見える。一面に見える紅葉はなんと美しいのだろうか。

 興奮してしまい思わず、手に持つ端末で写真を撮ってしまう。

 

 大人気ない行動に周りの視線が集まるが気にしない。素晴らしい物に素晴らしいと言って何が悪いのだろうか。

 

 

 

 

 

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 そして終点に着くと、大きな駅が鎮座していた。この地方では最大の駅らしい。

 流石に大きい駅なので外国人も多く、視線は感じなかった。

 そして所々に居る兵士を避けて通る。

 俺のかっこうは怪しく無いにしろ目につけられるのはあまり宜しくない。

 不自然にならないように距離を空けて通り過ぎる。

 

 するといきなり後ろから肩を掴まれる。

 振り返ると少しボサボサの髪とよれよれのコートを来た男が俺を睨んでいた。

 

「なぁ……ここに来た目的は?」

 

 誰だコイツ。目的?何の事を言っている。

 

 困惑した表情をしているとニヤリと笑う。

 

「ほう、これは当たりかな? じゃあ身分証を見せて貰おうかな」

 

 身分証!? なぜ見せないといけないのだ。

 

「あの、あなたはどちら様ですか?」

 

 すると男は内側のポケットから警察手帳を取り出す。それをつまんで垂らして俺に見せつける。

 

「俺はこういう者だから。分かる? ポリスだよ」

 

 クソッ、何故いきなりバレたのか……

 

 混乱した頭で打開策を練っているラインの後ろに迫る来る人が居た。

 

 

 




英語の間違いを指摘しようとした皆さん。
それあってるんですよ(本人もびっくり)
canではなくDoの方が丁寧らしいですよ。

間違えた英語話させるつもりが……

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