混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~ 作:氷炎の双剣
最近小説関係の時間が取れず申し訳ない。
そういえば、前回の最新話が異常に伸びてましたがどなたか何回も見たのですかね?
ラインが逃げた祝勝会の3日後、次の試合の日となる。
この3日の間に怪我を治療したり、英気を養うのだ。
また演習場の修理もこの間に行われる。
季節は冬。良く晴れた空がライン達を出迎える。強い日差しだが動かないと寒い。まあこれから激しい運動するから汗掻くだろう。
試合会場は軍事基地。市街地と比べて2倍以上大きい。
中央に滑走路が有り、その左右に格納庫が存在する。
スタート位置が滑走路を挟んで対照でまた滑走路が平坦な為、滑走路を挟んでの遠距離戦が予想される。
もちろんウォールシールドによる移動も可能だが、隠れる場所も無く、滑走路の横幅が長い為集中放火を受けるのは目に見えている。
ちなみに幅は60mぐらいだがライン達が肉体強化魔法を使うと、5秒ぐらいで移動出来る。
たったの5秒だが狙う側としてはその間に集中放火が出来る。ウォールシールドをもってしても魔法師達の集中放火は防ぎよう無い。
それを上回るスピードと魔力量があれば話は別だが彼らの魔力量は大して変わらない。
そして相手のチームはエドウィン達3人組を含め5人。
詳細は不明だが、ファルク、エドウィンと実力者が揃っている。
トムは戦闘向きでは無いが今回どう出るか気になる所だ。
強い日差しで少し汗ばみ始めた頃スタートのブザーが鳴る。
目の前には格納庫群。戦闘機やHAWを収納する倉庫だ。ちなみに壊すのは勿体ない為、中は空だ。
とりあえず格納庫の中に入って窓から滑走路の方向を覗く。
相手はまだ見えない。向こうもこちらを探しているのだろう。
バックパックから双眼鏡を出して、
その時、ライン達の上空を1機のドローンが通過する。
撮影用にしてはやけに高度が低いな。
すると遠くからボンッボンッと小さな音が聞こえる。
それから3秒後、風を切る音がライン達の上空から聞こえる。
「ーーっ!? 皆、ウォールシールドを!!」
突然のマナンの悲痛な叫びに慌ててウォールシールドを張ると、その直後、屋根が爆発して破片がウォールシールドに降りかかる。
「何だ!? 何処からの攻撃だ!?」
慌てて戦闘態勢になって外を見るが相手の影も形も無い。
混乱するライン達にマナンが落ち着くよう言う。
「皆、落ち着いて!! これは多分迫撃砲。超遠距離からの攻撃だよ」
「そうか!! 迫撃砲か!!」
確かに迫撃砲ならば上から降ってきたのも頷ける。
大きさは人が担げる物からヘリから吊り下げて運ぶような物もある。筒状の砲身から発射され放物線を描いて飛来する砲弾は人吹っ飛ばすには十分な威力だ。
そして最終試験では人が運搬可能な重量までの火器の持ち込み可となっている。
「これは厄介だな……迫撃砲は隠れた敵をあぶり出す為には効果的だ。だが何故位置が特定されたんだ?」
迫撃砲に関わらず、支援火器は前線から砲撃観測して位置を修正する物だ。そもそも遭遇してもいないのに無差別でいきなり当てて来れるか?
砲音が聞こえ、爆発したのはこれが初めて。
初弾から当ててくるのはまぐれとは思えない。
「何かでこちらの位置を特定しているはず……」
ふと大空を見上げるとそこには無数のドローン。特に可笑しい所は無いがどこか違和感を感じる。
すると同じく空を見上げていたドリーが大声を上げる。
「あーー!! あの一体にはマークが付いてないよ!!」
ドローンの群れに一体だけエルス国のマークが付いていないドローンが紛れ込んでいた。
こちらがそれに気付くと向こうも察したのか慌てて逃げていく。
あれで俺達の位置を特定していたのか。
そのドローンは向こう側の格納庫に収納されて行った。
「なるほど、ドローンでの砲撃観測か。やるねぇ……」
まさか卒業試験で砲撃してくるとは想定していなかった。
だがドローンを止めた以上、今はこちらの動きは把握出来てないはず。
「今のうちに滑走路を渡るぞ!!」
壊れた格納庫の壁の穴から外に出る。
目の前の滑走路を魔法で強化した脚力で駆ける。
風を切って進むのは気持ちがいい。
そんな感覚を楽しむ暇も余り無く、相手の魔法攻撃をウォールシールドで受ける。
だが軍事基地が幅広い為、集中放火には至らないみたいだ。
ウォールシールドを酷使してギリギリたどり着いた格納庫に飛び込む。
中は相変わらずの殺風景。でも穴が空いているさっきの場所よりは落ち着けた。
だがここに入る所を見られている以上いつ砲弾が飛んできても可笑しくない。
ライン達が乱れた息を整えていると走行音が耳に入る。
そして入口に現れたのは軍用多目的ロボットーーバッグポットだ。キャタピラで移動するバッグポッドは本来、爆弾処理や危険な所での作業を行う遠隔操作ロボットだ。
だがこのバッグポットはキャタピラでは無く、タイヤ。そして上部には軽機関銃が搭載されていた。
そして入口に4台も現れたバッグポット達はライン達に銃口を向けると容赦なく発砲を始める。
雨あられと降り注ぐ銃弾に堪らずウォールシールドを張る。
迫撃砲といい、バッグポットといい、遠距離からしか攻撃してこないぞ!!
焦燥感が募るライン達に跳弾した音が嘲笑っているかのように思えた。
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一方その頃、画面を見つめてコントローラーを手にしている男とそれを見守っている男が居た。
「良いぞ、トム。こいつらは見事に俺の掌で踊っているぞ」
高笑いし始めたのはエドウィン。自分の策が上手く行き過ぎて笑いが止まらないようだ。
それに対してトムはコントローラーを操作するのに必死で、応える余裕も無い。
モニターを見ながらコントローラーで操作するのはさながらゲームのようだ。
「ククク……このまま消耗戦を続けさせ、弱った所を倒すというのは兵法の基本。さあ、じっくり見させて貰おうか」
椅子に優雅に座ってせせら笑うエドウィンだった。
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「ちくしょう!! ちょこまか逃げやがって!!」
吠えるように言ったアーロンは魔法で攻撃していたがバッグポットは機動力が高く、ちょこまかと動き攻撃を躱していた。
「面倒くせぇ!! 近接でぶっ壊す!!」
イライラが頂点に達したアーロンは自分にウォールシールドを張りながら炎を片手に突っ込む。
そして目の前まで来ると遠慮無くぶっ放す。
炎の直撃を受けたバッグポットは機能停止をするが、機能停止したバッグポットは突如大きな爆発を起こす。
その爆風は離れたライン達にも届くほどだった。
「アーロンぉぉぉぉぉーー!!」
爆発に巻き込まれたアーロンの姿は粉塵で見えない。
嘘だろ……? まさかアーロンが? こんな大きな爆発は爆弾でも付けてないとあり得ない。くっ、近接で破壊することも読んでいたというのか!?
悔しさで歯を噛み締めるラインに粉塵の壁は次第に落ち着いてくる。
そこには膝を地面に付けたアーロンが居た。だが満身創痍で今にも倒れそうだ。
そして既に自動防御は発動していた。
「アーロン!!」
銃弾の雨の中、アーロンに近づいて何とか物陰に救出する。
「やっちまった……済まねぇ……」
息も絶え絶えに言うアーロンにラインは首を横に振る。
「いいや、アーロンは良くやったよ……後は俺達に任せてくれ」
するとアーロンは薄く笑うとそのまま意識を手放した。
相変わらずけたたましい音を放つバッグポットを睨みつける。
「俺達は必ず勝つ。それまでゆっくり休んでいてくれ」
目の前で眠るアーロンに反撃を誓った。