混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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〈9章 ライン 合宿編〉
9-1 合宿という名の息抜き


 照りつける日差し、黄金の砂浜、宝石のように青く綺麗な海。

 来たぞ、夏だ!! 海だ!! 水着だ!!

 

 と言ってもほとんどは野郎共ばかりで目の保養にはならないのが現実だ。

 

 ビーチパラソルの下にシートを引いて遠い目をしながら休んでいたラインは溜息を付く。

 

 ライン達、1年生は夏に、合宿という名の息抜きでクック諸島に来ていた。

 クック諸島はウェリントンから2000km右上に行った位置にある。飛行機で2時間ぐらいだろうか。

 クック諸島には住民が住んでおり、リゾート地として密かに有名だ。やはりグアムやハワイが人気だが知る人ぞ知る秘境だ。

 そこにライン達は貸切で息抜きに来ていた。

 

 だが現実は筋肉ムキムキの海パン共がはしゃいでいて、息抜きどころか暑苦しい。それから逃げるように宝石のように輝く美しい海を眺める。

 

 潮風が熱い砂浜では涼しげに感じる。

 その時、頬に急に冷たさを感じてヘンな声を出してしまう。

 振り向くとそこにはラインの頬に缶ジュースを当てているティナがニヤリとしていた。

 

「ふふっ、驚いたでしょ?」

 

 イタズラが成功して楽しそうにしているティナにラインは非難の視線を向ける。

 

「普通に渡せよ!! びっくりしただろうが」

 

 と言いつつ、ジュースを受け取るライン。やはり冷たいジュースには勝てない。

 

 大人しくなったラインにティナは棒読みでごめんなさいねーと反省の色が全く見えないまま、ラインの隣に座る。

 だがその距離はかなり近い。

 

「ちょ、近いわ!!」

 

 とラインが抗議するが、ティナはむしろラインを睨みつける。

 その視線を辿るとシートだった。

 あっ、そういう事ね。

 

 ラインは横にずれる。

 空いたシートの広さにティナは満足する。熱い砂浜に座るのが嫌だったらしい。

 

 遅れてクーラーボックスを抱えたマナンが戻ると、ギリギリふたり入ったシートには海パンのラインとパーカーとショートパンツを穿いたティナが座っていた。

 マナンの座る場所が無い。

 

「ちょっと、僕の座る場所が無いじゃないか!!」

 

 と抗議するが、ラインとティナは意気投合して死守の構えだ。

 

「此処は渡さん」

「此処は占領したのよ!!」

 

 ラインとティナが腕を組んで姿勢にマナンは頬を膨らませる。

 そして2人の間に突撃する。

 2人はマナンを止めようとするが飛び込んで来たマナンを跳ね返せず、揉みくちゃになる。

 

「ちくしょう、そこまで此処が欲しいか!!」

「ちょっと!! どこ触ってるのよ!!」

 

 ティナのビンタの乾いた音が辺りに鳴り響き、その音によってこの戦いは終焉を迎えた。

 

 

 

 

 

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 ラインとマナンが正座してティナから説教を受けていると、後ろから笑い声が聞こえる。

 

 振り向くとグレンが手を口に当てて、笑いを堪えている。

 

「お前ら、馬鹿やってんな」

 

 と言うグレンも体中海水を浴びて、肩が上下し、髪が乱れている。

 

「そういうお前も相当馬鹿やってんな」

 

 肩に付いている砂を見て、ラインもニヤリと笑う。

 

「ふふっ、お前も投げてやろうか?」

 

 笑うグレンの背中の向こうではまた誰か担がれて海に投げられていた。悲鳴が上がるのと同時に歓声も上がる。

 

 あれには関わりたくない……

 

 という感情が顔に出てたのか、グレンは後ろに振り返る。

 

「おーい、こっちにも投げて欲しい奴が居るぞー」

「おっ……まえ!!」

 

 グレンをボコしてやりたい所だが、今は逃げる!!

 

 正座からクラウチングスタートの体勢に移行ーー地面を蹴って追っ手から逃げる、逃げる、逃げる!!

 

 熱い砂浜を走って足が焼けるように痛いが、ここで死ぬわけには!!

 

 その時目の前の何かに勢いそのまま衝突する。

 

「いってぇぇぇぇぇ!! 何だこの見えない壁はーー」

 

 ーーはっ!? まさか魔力の壁か!?

 

「ティナぁぁーー!!」

 

 魔力の壁を生成した犯人に抗議の声を上げるラインだが、既に彼は追っ手に担ぎ出されていたのであった。

 

 その様子を見つめる人物には誰一人気づく事は無かった。

 

 


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