混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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9/29 改稿


4-7 ライン×マナン!?

 翌日、ラインとマナンが教室に入ると無数の視線を感じる。身体中が全方位から見られているという感覚ーー気持ちいい物ではない。

 

(……何だ? この異様な雰囲気は?)

 

 ラインが異様な雰囲気を感じるのと同時にマナンも感じ取っていた。

 

 2人は小さな声で囁き合う。

 

「……どういう事だろうね?」

「……分からん」

 

 2人は何故教室がこんな雰囲気なのか分からないがとりあえず、席に着く。

 

 席には既にティナが来ていた。

 

 ラインはティナにいつも通りに挨拶する。

 

「ティナ、おはよう」

 

 するとティナは身体をビクリと震わせ、顔をひきつらせて返事をする。

 

 今にもギギギという機械が回転するような音を出しそうな感じで首をこちらに向ける。

 

「え、ええ……おはよう」

 

 それだけ言うとプイッとそっぽを向いてしまう。

 

 そしてライン達に聞こえないぐらい小さく呟く。

 

「まさか……この2人がねぇ……まあ男の友情延長線上だし、可笑しくないよね?」

 

 ラインからはブツブツと呟くティナはとても変に見える。

 

 顔を赤面させ、チラチラとこちらを見てくるのだ。

 

 ラインは訳が分からず、ほっとくしかなかった。

 

 

 

 

 

 -----

 

 授業が終わり、昼休み。

 

 ラインは一息ついて、マナンに顔を向ける。

 

「ふう。さて、今日はどうするか」

 

 するとマナンはカバンからゴソゴソと物を取り出す。

 

 出て来たのはあの『重箱』。

 

「良かったらまた食べない?」

 

 マナンはニコニコと重箱を差し出してくる。

 

 ーーもちろんこれは食べるしかないだろ。

 

 早速重箱を手に取り、食べようとするがラインは更に無数の視線を感じ、手を止めてしまう。

 

 周りを見ると、皆がチラチラと2人を見てくるのだ。

 

 ーー今日は一体何だ? 弁当が羨ましいのか?

 

 と思うラインだったが、突如目の前に来た赤髪の男ーーグレンに引っ張られ、教室を出る。

 

 何だよグレンーー

 

 とまで口に出るがグレンの真剣な目を見て、口を閉じる。

 

「なあ、ライン。別にお前の趣味はともかく言わんが、こんな場所でイチャイチャされても困るのだが」

「はぁ?」

 

 イチャイチャ? 誰と誰が? 全く分からん。

 

 それがラインの顔に出ていたのかグレンはため息をつく。

 

「お前なあ……あれがイチャイチャしてなければ何なんだよ?」

 

 そう言いながら指差したのはマナンだ。

 

 ーーマナンと俺? 同じ弁当を食ってただけじゃないか。

 

 まだ分かりきって無いラインにグレンは近づき、耳打ちする。

 

「お前らって付き合って無い訳?」

「付き合う? 誰と誰が?」

 

 ティナとは仲はそれなりだろうが、精々友達以上恋人未満だろう。これはかなり甘い見積もりだ。

 

 グレンは溜め息をつき、回りくどいのが嫌になったのかストレートに切り出す。

 

「だから、お前とマナンは付き合ってるのか? 別に隠さなくてもバレバレなんだけどな」

「……はぁ!? 俺とマナンは男同士。同性だ。もちろん同性のとやかくを否定する訳では無いが、俺達は違うぞ!?」

 

 面白いぐらいに慌てふためくライン。

 この焦りは今年一番だろう。

 

 だがグレンは手をフリフリと振り、ラインをフォローする。

 

「別に良いんだぞ? 俺はお前がそんな趣味でも友達で居てやるし」

「グレン……」

 

 とてもグレンが良い奴に見えて来た……

 

「ーーって違うわ!? 俺は普通に異性が好きだぞ!?」

「分かった、分かった」

 

 そう言うグレンはもう既にラインの事を見ていない。

 

 ラインの肩に手を置き、席に戻って行く。

 

 ラインは頭を抱え、席に戻る。そこにはニコニコとしたマナンが居る。

 

「用事は済んだ?」

 

 マナンの無邪気な笑顔が眩しい。

 

 ラインは苦悶な表情を浮かべながら頷く。

 

 まあ……マナンに罪は無いしな……

 

 勝手な想像をしたグレンを心の中で恨む。

 

 ーーん?

 

 ここでラインはふと思いつく。

 

 まさか皆が勘違いをしていて、俺達が付き合ってると思っているのでは? と。

 

 ラインはチラッと周りを見る。

 

 すると周りの人の視線は好奇心いっぱいの視線だった。

 

 その1人と目線が合った気がして咄嗟に目を伏せる。

 

 何とも言えん気持ちだ……

 

 そして隣に戻って来たティナの方を振り向く。

 

 するとティナはラインと目線が合ってしまい、慌てて逸らす。落ち着かないのか、そわそわしている。

 

 ラインは恐る恐るティナに尋ねる。

 

「なあ、ティナ」

「な、なに?」

 

 ティナはもじもじとし始める。不覚にも一瞬可愛いと思った思考を振り払い、質問する。

 

「俺とマナンはどう見える?」

 

 ど真ん中ストレートにも取れるし、曖昧にも取れる発言だ。

 

 ティナは困惑した顔をして、うんうん悩む。

 

 そして小さく呟いた。

 

「……お似合いだと思うよ?」

 

 ビンゴ。

 

 ティナは迷った挙げ句、本音をぶつけて来た。これはもう皆が勘違いしてるという事だ。

 

 難しい顔をしているラインにティナは不安げに聞いて来る。

 

「えっ? 不味い事言ったかな?」

 

 いつも元気なティナからは考えられないほどオドオドしていた。

 

 流石にこんなに答え難い質問を真面目に考えているティナが可哀想になってきたので、助かったとだけ言い、ティナを解放する。

 

 するとティナは『助かった』という言葉を必死に考え始め、1つの考えにたどり着く。

 

「そっか、2人共、自信無かったのかな」

 

 と勝手に結論付けてしまう。

 

 これはラインの耳にも届いたが、否定しても照れ隠しと思われるのでスルーする事にする。

 

 昼休みが終わり、授業が始まる。

 

 授業内容など頭の中に入って来ない。そりゃあ、あられもない疑いをかけられているのだから。

 

 

 

 

 

 -----

 

 授業が終わり、自由時間となる。

 アカデミーは軍人育成する所だが、あくまでも教育機関である。

 

 無理矢理詰め込んでも自分で考える力を手にすることはない。

 

 なので各々、自由時間を謳歌(おうか) していた。

 

 その一方、ラインはグレンを探していた。

 

 誤解を解く為だ。

 

 何故グレンの誤解を解く事を優先するかというとグレンは顔が広いからである。

 

 だが校舎内を探し回って見ても、グレンの姿は見当たらない。

 

 ……あいつ、どこ行ってるんだ?

 

 ラインは少し歩き疲れ、近くのベンチに腰を下ろす。

 

 はあーという大きな溜め息をつきながら、ふんぞり返って空を見上げる。

 

 雲が空の3割ぐらいを占めていた。

 天気としては晴れ。

 しかし、その雲の大きさはまるでHAWのようだった。

 

 ラインは家族を失った時の事を思い出し、顔をしかめる。

 

 チクショウ……まだ俺は引きずってるのか……

 

 頭をブンブンと振り、勢い良く立ち上がる。

 

「よし、再開するか」

 

 自分に言い聞かせるように言ったラインの足取りは軽いようでさっきより重かった。


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