混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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9/28改稿



4-2 意味不明な試験

「軍人になりたい……と?」

 

 ブライスは再度ラインに問う。

 

「はい」

 

 ラインは即答するが、ブライスは難しい顔をしていた。

 

 少し悩んだ後、ラインに質問する。

 

「君は軍人になるという意味が分かっているかね?」

「はい」

 

 即答するラインに再度質問する。

 

「軍人になるという事は人を辞めるという事だ。軍人は戦争において、一つの駒でしかない。捨て駒にされるかもしれん。そして、死ねと命令されるかもしれん。それでも君は軍人になりたいのかね?」

 

 ブライスはラインの真意を図るように目を見つめる。

 

 だがラインの心は揺るがなかった。

 

「私は……この戦争で両親を失いました。両親を奪った火星独立軍を恨んでいた時、ある人に『敵を恨むのでは無く、戦争を恨め』と言われました。その言葉はまだ私には分かりません。ですが、なんとなくですが間違って無いような気がするのです」

 

 そう話すラインの目には強い意志が垣間見えた。

 

 ブライスはそうか……とだけ言い、部下に指示を出す。

 

 そしてラインに視線を戻し、話しかける。

 

「君の思いは分かった。私も敵では無く、戦争自体を恨んでいる。だから君の力を借りたい。戦争を一刻も早く終わらせる為に」

 

 ブライスはラインに手を伸ばす。ラインは手を取り、一緒に立ち上がる。

 

「よろしくお願いします!!」

 

 そう頭を下げたラインの心は少し晴れていた……

 

 

 

 

 

 

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 その後、ラインは部下に連れられ外に出る。

 

 外に出たら焦げ臭いが鼻に付く。

 そこにはまだ炎が燃え盛る街と戦闘の痕跡……悲惨な街の様子が目に飛び込んで来た。

 

 もちろん戦闘は軍事施設を狙って行われるが、流れ弾、建物を盾にしたりして被害が出てしまうのであった。

 

「ヒドい……これが戦争なんだ……」

 

 そうポツリと漏らすと部下の背中を少し駆け足で追いかけて行く。

 

 

 

 

 

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 その後、ラインが着いたのはノースランドの南端、ウェリントンだ。

 

 ウェリントンはエルス国の首都であり、司令部が有るところでもある。海沿いに発展しており、大きな海軍基地も存在している。

 

 オークランドも発展していたがウェリントンも負けずに立派だ。

 

 そんな感想を抱きながらラインは車に乗せられ、ウェリントン基地にゲートを通り、入って行く。

 

 

 

 基地に入ると中はとても広く、野球や、どんなスポーツをしても足りないくらい広大な広さだった。基地の果ては豆粒にしか見えない。

 どこまでも続く滑走路、巨大な格納庫、荷物を運んでいるHAW。それらがラインの目に付いた。

 

 スゴイ……これが基地の中なのか……

 

 とラインは興奮しながら心の中で呟く。

 ひたすらキョロキョロと首を動かしている間に車は止まる。

 

 降りるよう促され、降りるとそこには沢山の同年代ぐらいの男女でごった返していた。

 

 部下はラインが降りたのを確認して、走り去ってしまった。

 

 残されたラインはとりあえず話誰かに聞いてみる。

 

「あの、此処は何の会場ですか?」

 

 ラインが話しかけたのは三人組の青年達だった。

 

 右から茶髪のツンツン頭。

 真ん中は金髪のサラサラ頭。

 左はふくよかな金髪頭。

 

 話しかけられた3人はラインを睨んで来る。

 

 それに少し気圧されたラインだったが、勇気を振り絞り再度質問する。

 

「あの、此処は「聞こえてるよ!!」」

 

 ふくよかな青年が突然、大きな声を出す。

 

 聞こえてるなら答えろよ……

 

 とラインは不機嫌に思うが返事を待つ。

 

 すると真ん中の金髪サラサラ頭が口を開く。

 

「はあ!? お前は此処がどこか分からず来たのか? コレだから田舎もんは!! ほれ、迷子はあちらだ」

 

 そいつが指を指す方向は北の海だ。ラインの故郷はオークランド。あながち間違ってもいない。

 

 だがそれは彼らにはツボだったのか大きな声で笑い始める。

 

「ちょっとそれは……くくく……海が故郷てか? くくく……」

「流石、一流IT企業の御曹司!! 笑いのネタも一流だな!!」

 

 と身内で爆笑し始める。

 

 聞く相手を間違えたか……

 

 とラインは意気消沈していると突然の大きな声に4人は肩を震わせる。

 

 声が聞こえた方向を見ると、ゴリラのような身体付きの軍人が大声で拡声器を使わずに説明をしようとしていた。

 

 俺らじゃなかった……

 

 とホッとしている彼らはラインを睨みながら去っていく。

 

 開始早々、全く変な奴に絡まれたな……

 

 と頭をポリポリと掻きながら、ゴリラのような軍人の説明を聞きに行く。

 

 

 

 

 

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「此処はアカデミーの入学試験会場だ。試験費用、資格は要らん。普通科はここでは無い。普通科の奴は手を挙げろ」

 

 だが誰も手を挙げない。

 軍人は辺りを見回して誰も手を挙げてない事を確認して、頷く。

 

「よおし、貴様ら全員アカデミー入学希望者だな? これより試験を始める!! まずはこの紙に名前を書いて、中に進め」

 

 ぞろぞろと紙を受け取り、建物の中に入って行く。

 

 中には沢山の部屋が存在していた。紙に書いてある番号の部屋に入ると、中にはオドオドしている黒髪の青年が居た。

 

 ラインと同じ黒髪。ラインは青年に少し親近感が湧いた。

 

「こんにちは。同じ部屋みたいですね」

「えっ? ……ああ、そうみたいですね」

 

 青年は声を掛けられるとは思って無かったのかビックリしていた。だが、すぐに目を伏せてしまう。

 

「俺はラインです。よろしく」

「あ、ぼ、僕はマナンです。よろしく」

 

 軽い挨拶が終わり、ラインが辺りを見回すと何にも無い白い壁の部屋だった。広さは20×20mだろうか。

 

 唯一あるのはモニターだけだ。

 そこには何も映されていない。

 

 ラインは一息付くと、ガチャという音が聞こえた。

 

 音が聞こえた方向を見ると、入って来た扉が閉まっていた。

 

 なっ!? 

 

 とラインが驚いてドアを調べるとカギがかかり、ドアはビクともしなかった。ドアには鍵穴が無く、電子錠だ。

 

「カギを閉める? ……どういう事だ!? それにこの部屋に2人だけしか……」

 

 2人が慌てているとモニターが点灯し、さっきの軍人が現れる。

 

『これより、試験を開始する。試験内容は単純。番号の書いてある箱の中身を確認しろ』

 

 ライン達それぞれは部屋の真ん中から対称の位置の床から出てきた箱をそれぞれ開封する。お互いの距離は20m。

 

 中身を見たラインは驚愕する。

 触ってみるとずっしりとした重み、微かに香る焦げ臭い匂い。

 

 

 こ、これはハンドガン!? この重厚感……本物なの……か?

 

 とラインは混乱しているとモニターから追加情報が足される。

 

『そのハンドガンを使ってこれより殺し合いをしてもらう』

 

 その言葉は更にラインに対し、混乱を拍車を掛けていく。

 

 モニターが消え、異様な静まりの中、カチャというという音が聞こえる。

 

 ラインはとっさに銃を手に取り、振り返るーー

 

 ーーそこには銃をラインに定めたマナンが居た。

 

 お互いに銃を向け合う形になる。

 

 お互いの目線を交差させ、極度の緊張が2人を襲う。

 

 異様に喉が渇き、身体が酸素を欲する。

 

 次第にお互いに肩で息をし始める。

 

 呼吸音だけがこの場の音を支配していたーー

 

 ーーが突如音が鳴ったモニターに2人共、身体をビクリと震わせる。2人共、目線をモニターに目を向ける。

 

 モニターには制限時間が表示されていた。制限時間は10分。

 

 デジタル表示の時間が秒単位で減って行く……

 

 ハッと2人は思い出したように銃を構え合うが、もう既に緊張は解けてやる気にはならなかった。

 

 2人共は嘲笑い笑いながら銃を下ろす。

 

 お互いにやり合いたくないのだ。ならばこのまま時間が過ぎれば良いのではないだろうかという空気がお互いの間に流れる。

 

 するとモニターには他の部屋の様子が映し出されていた。

 

 そこにはお互いに撃ち合い死んだ部屋、一方的に殺した部屋、自殺した部屋が沢山映し出されていた。

 

「こ、これは……」

 

 2人共、声にならない声を出す。

 

 暗い雰囲気になった時、またモニターに軍人が映る。

 

『さて、そろそろ終わった部屋も多くなって来たな。だが終わらない部屋も有るみたいだが、「時間切れ、帰ります」は無いぞ? 時間切れは両方とも死だ』

 

「「なっ!?」」

 

 2人共驚き、モニターを良く見るがルールは変わらない。

 

 既に残り5分を切っていた。

 

 二人は頑張って出口を探すが、見つからない。

 

 

 

 

 

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 そして、時間は一分を切ろうとしていた。

 

 ラインは諦めて、床に座る。

 

「はあ……何だこの試験は!? 人を殺したら合格!? 馬鹿らしい!! なら死ぬ方がマシだ!! ……だろ? マナン?」

 

 ラインは気だるそうに振り返るーー

 

 

 

 ーーそこには黒い銃口をライン向けたマナンが居た。

 

「ごめん、僕はどうしても魔法師に成りたいんだ。だから……ごめんーー」

 

 マナンの指が引き金を引くーー

 


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