混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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お久しぶりです。長らくお休みを頂き、モチベが回復しました。また更新をして行きたいとおもいます。


14-17 鏡

 

 要塞内奥深くにある司令室。火災発生の混乱で司令室に向かう道には一人も警備兵も居らず、スムーズに入ることが出来た。

 

 入口まで来ると血まみれで倒れてる兵士達。そして中から、けたたましく銃声と悲鳴が鳴り響いている。

 どうやら既に戦闘は始まっているみたいだ。

 

 隣に居るグレンに目線を送ると頷く。

 

 途中の警備所から奪ってきたAMAと剣を装備して中に突っ込む。

 

 中はやや暗く、目が慣れるまでに時間が掛かる。だが飛び交う火線の光でどこに誰が居るか分かる。

 

 こちらの方に銃を突きつけてるのはユルゲン閣下。その瞳には強い抵抗の意志が見られる。そして固く閉ざされた唇が開き、決意が告げられる。

 

「……残念だが、君の提案は飲めなくなった。最後まで抵抗させて貰うよ」

「その選択、仲間の悲鳴を聞く度に自分が愚かだったと思うが良い」

 

 と相手が強気に返した所にグレンが介入する。

 

「その選択、正解っすよ」

 

 と言いながら怪しげに微笑むグレン。

 そうだな、俺らが来たからにはユルゲン閣下はやらせはしない。

 

 そして突然の来訪者に驚く敵。だが直ぐにあざけ笑う表情に変わる。

 

「なんだ、援軍が来たかと思ったらガキ2人か。地球連合軍も廃れたものだな。おい、コイツらを片づけろ」

 

 すると2人の魔法師がこちらにかかってくる。

 詠唱されたの初級魔法ーーファイヤーボール。

 何とも舐められたものだな。

 

 ウォールシールドで防ごうとするーーが途中でかき消える。

 

 横のグレンを見ると腕をファイヤーボールのあった所に向けていた。どうやらグレンが消したのか。

 

「さて、次はこちらの番だな」

 

 グレンの言葉と同時に敵に向かって俺らは敵に駆け出す。

 

 敵は捕虜だった為、魔法師としての装備はしていない。だから近接戦を避けるためにウォールシールドを張るが、俺らは難なく中和し、一太刀で斬り捨てる。

 

 仲間が一瞬でやられた事を悲鳴を聞いて理解した敵の指揮官はこちらを忌々しく睨む。

 

「生意気なガキ共が……良いだろう、私がひねり潰してやる」

 

 指揮官は帽子を捨てると、長い赤毛が明らかになる。よく見ると女だ。声も確かにやや高い。

 

 一方、グレンはうーんと頭を抱えていた。

 

「いやぁ、女かぁ……女をいたぶる趣味は無いんだがなぁ……」

 

 と個人的な事で悩んでいた。確かに少しは抵抗が有るが、そんなことは言ってられない。

 

 そんな俺らに女指揮官は憤慨する。

 

「これだから地球連合国は腐っているのだ!! 軍人に女性が居ても良いではないか!! 未だ男社会に拘るから落ちぶれるのだ!!」

 

 とさっきまでと違う様子を見て、グレンが頭を抱えるのを辞める。

 上げた顔には怒りの感情が見てとれる。

 

「……いいや、知ってるさ。自分の命をかえりみず、仲間の命を救う誇るべき女を」

 

 そして哀しげに俺を見るグレン。

 

 ああ、グレンが言ってるのは俺を救ってくれたマヤの事だ。彼女は躊躇いも無く、俺を救う為に命を投げ出した。そんな凄い勇気を持つ女性も居るんだ。

 

「その通りだ。確かに軍人は男社会だが、別に女を差別してるわけじゃ無い。皆が大切な仲間なんだ!!」

 

 意見が一致した俺らは目線を合わせ、頷き、再度敵に刃向ける。

 

 だが敵の女指揮官は未だに怒りが収まってない。

 

「お前らは何も分かってない!! 地球連合軍ではどれだけ卑下に扱われたか!! お前らには分からんだろう!!」

 

 彼女に何があったかは分からないが、地球連合軍への殺意は本物のようだ。

 そんな彼女にグレンは刃先を向ける。

 

「……俺は女を愛でるのが趣味でいたぶるのは範囲外だが、ここは戦場。お前が軍人として殺意を持って立つというのならば殺す事に躊躇はない。死ぬ覚悟は良いか?」

 

 殺気を放つグレンに応える女指揮官。

 

「おい、さっさとクソガキ共を血祭りに上げ、使命を果たすぞ!!」

 

 部下にユルゲン閣下への攻撃指示を出し、女指揮官は一人で俺らを向かい撃つようだ。

 

「ライン、俺に任せろ」

 

 覚悟を決めたグレンの意志は固く、グレンに任せて大丈夫だと確信する。

 そう言ったグレンは消え、一瞬で敵の懐に潜り込んでいた。敵は驚愕の表情を浮かべたまま、一刀の元に斬られる。

 

 半分に切断された身体はボトリと落ちるーーが敵だった身体は溶け出す。

 まるで氷のようにみるみる液体になってしまった。

 

「どうなっているっ!?」

 

 と混乱しながら叫んだグレンの周りを氷の槍が囲む。

 マズいっ!!

 

「ウォールシールド!!」

 

 俺がグレンの周りに張ったウォールシールドに当たって砕ける氷の槍。細かい氷の粒子がきらめく。

 

 敵は死んでないのかもしれない。そう思わせるほど、敵の一方的な攻撃が続く。そしてグレンだけでは無く、俺にも氷の槍が降り注ぐ。

 

 何とかウォールシールドに(こも)りながら、グレンとこれからどうするか協議する。

 

「どうする……このままじゃじり貧だし、ユルゲン閣下の方も保つか分からんぞ」

 

 気持ちは焦るが(こら)えて頭を回し、対策を考える。

 グレンも爪を噛みながら、顔を歪める。

 

「敵の位置が分からんなぁ……この部屋には居そうだが……」

 

 と言った矢先、正面に突如敵が現れる。

 

 直ぐにライトニングを放つーーが、直撃すると砕け散り、氷の粒子となる。

 

 それを見たグレンが更に苦い顔をして呟く。

 

「氷の鏡かぁ……これじゃあ目の前に現れても本物かは分からないな……面倒なこった」

 

 グレンの言ってる事はその通りで、氷の鏡は精度が高く、本物と区別が付かない。そして鏡なので反射した方向に居るかと思えば居ない。自分の姿を鏡に投射してるような物だろうか。

 

「厄介な敵だな……ここら辺吹き飛ばせば終わるが、味方も居る……こういう敵は苦手か?」

 

 とグレンに聞くと大きく溜息を付く。

 

「まあな。俺自身が色々やるのは面白いが、相手にされるのは嫌だわ……性格の悪い女だぜ」

 

 舌打ちをして降り注ぐ氷の槍を忌々しく見上げるグレン。

 

 どうにか敵の位置を掴めないものかと思案してると一つだけ思い付く。

 

 だがそれは今となってはもう禁断とも言える手であった。

 


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