混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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最新話を追って頂いてありがとう御座います。
最初の頃に比べ、私も成長したかと思います(多分)
更に成長する為に最初からここまで読んでお気づきの点、またストーリーなどを更に面白く、深く出来ますので、有りましたら是非、感想やメッセージにてお知らせ頂けると幸いです。
面白かったの一言だけでもとても喜びますのでお願いしますm(__)m

最初の方の文章は鋭意改稿中ですので、最近のでお願いします。




14-11 希望の光

 

 既に始まっている戦闘。史上最大規模の両軍がひしめき合う戦場で俺はコクピット内で待機していた。

 まだ見つかってないものの、いつ見つかるか分からない。その時は我々の負けだ。

 

 そして味方が戦っているのはどれも旧世代の兵器ばかり。圧倒的な力で敵軍は要塞に取り付いていた。

 もう囮部隊は壊滅しており、僅かに残る砲火が抵抗していた。

 

 作戦開始はまだか、まだか、と手に汗を握る中、突如通信が入る。

 

「作戦開始。作戦開始」

 

 2回に通して言われた言葉はゴーサインだった。

 その言葉を聞いたユリエルが指示を出す。

 

「目標は敵地上部隊。陣形は先程言った通りだ。功を焦るなよ!! 全機、出撃!!」

 

 出撃の指示に俺は機体に掛かってる光学迷彩を外す。太陽が視界に入り、外部カメラの光量が自動で調整される。

 そして起き上がると周りの機体も起き上がっていた。

 

 そしてユリエル機を先頭に楔型ーー逆Vの字ーーの陣形で敵に突入する。俺とグレンは後方の真ん中。一番安全な場所だ。

 

 敵は不意を突かれ、砲身もこちらには向いていない。更に敵HAWは要塞に向かっており、ここにはアイギスと車両群しかいない。

 

「全機、攻撃開始。こんな所で落とされるなよ」

 

 上からアサルトライフルによって銃撃の雨を降らせる。抵抗出来る数少ないアイギスが反撃を試みるが、我々の集中砲火を受けて瞬時に沈黙する。

 

 そのターゲットの仕方は見事で、抵抗しようとしている奴から狙い、次々と戦意をそいでいき、危険を減らしていった。車両群はもはや的で逃げ回るだけ。ほとんどが輸送車や歩兵支援車両なのだから当たり前だ。

 

 それらに弾を使うのは勿体なく、本命まで取っておく。

 

 あらかた敵を片付けるとレーダーが知らせる。戻ってきた敵の大量のHAWを。

 

「全機、我々は陽動だ。まともに敵に当たるな。そして作戦エリア内には入るなよ」

 

 陣形を保ったまま、後退する。敵は我先と殺到し、物凄い数だ。

 確かに先程の戦闘では物足りないだろう。やっとHAW同士の戦闘になるのだから。

 

 だがこちらはまともにやるつもりは無い。守りを固くして、時間を稼ぐ。近接戦や乱戦にならなければそうそうやられるエルピスではない。

 

 味方に囲まれた安全地帯からレールガンをぶっ放す。その威力は相変わらずで、易々と敵を貫く。

 

 だが敵の数は全く減らず、ハエのように群がる敵。外側の味方が次々と火花を上げていく。

 

 早く、早く、作戦を次の段階にーー

 

 焦る心を抑えながらトリガーを引くのであった。

 

 

 

 

 

 -----

 

 -地球連合軍 ユルゲン-

 

 作戦は開始され、伏兵となっていたHAW隊が敵の左右から襲いかかる。それと同時に要塞のゲートが開き、温存していたHAW隊が出撃する。

 敵が不意を突かれたのもあるが、味方が無残にやられるのを指をくわえて見ていた憤りもあるだろう。

 凄い勢いで敵を撃破していく。

 

 自分自身が決行した作戦だが、複雑な感情が心の中を渦巻く。

 ホントにこれで良かったのだろうか、これよりも良い作戦が有ったのでは無いかと考えてしまう。

 

 味方を犠牲にする作戦。味方の勢いは凄く、効果はてきめんだが多くの部下を失った。それも犬死にという形で。

 もちろん無人機という手もあった。だが囮と思わせないように大量の兵士が必要で、一方、無人機では捨て駒だと思われるからだ。普通では考えられない、それほど非道な作戦だった。

 

 しかし既に作戦は決行され、多くの兵士が死んだ。もう時間は戻らない。ならば決行した自分は最後までやり遂げ無ければ、本当に彼らの死が犬死になるではないか。

 

 弱気の自分を奮い立たせて、前を向く。

 

 その時オペレーターが悲鳴を上げる。

 

「ーー左翼のHAW隊の外側に新たな敵HAW隊が出現!! 逆に我々が包囲されます!! ーー機体照合……新型、イルⅡです!! その数10!!」

 

 突如現れたイルⅡに左翼の包囲部隊はなすすべも無くやられていく。正面に多くの敵を抱えたまま、後ろに新型が出現。もはや一方的だった。

 

「どうにかならないのか!?」

「ダメです!! 敵の勢い止まりません!! このままでは包囲が失敗します……」

 

 優勢になるかと思ったがここに来て、新型かっ!! またもや新型に我々は負けるのか……

 グレートブリテン島でもHAWという新型に負けた。いつの世も技術が世界を支配するのか……

 

 だがその時、ふと思い出す。ルーカスが言っていた言葉を。

 

『いつの時代も新兵器が強いのは当たり前だ。戦争は相手との国力戦。だが技術力や工業力だけが国力とは言わない。人材も国力に含まれるのだ。もし指揮官が戦況を左右出来ないのだとしたら、我々は無用の長物になってしまうぞ』

 

 と最後にオチを付けて言っていたのを思い出し、笑ってしまう。

 

 そうだな。俺は無力じゃない。戦場を支配するのは俺だ。技術力なんぞに左右されてたまるか!!

 このままじゃ給料泥棒なんて呼ばれてしまう。

 さぁ、人の力を見せてやろう。

 

「直ぐに作戦を次の段階に進めろ。この好機を逃してはならん。もはやこれ以上は悪化の一途を辿る。この一撃を持って戦況を変えるぞ!!」

 

 その言葉にオペレーター達が慌ただしく動き始める。

 そして横に居たレジスが満足そうに頷く。

 

「ご英断です、ユルゲン閣下。私もそう提案しようとしてました」

 

 そう同調するレジスに周りの部下らが白い目を向ける。

 それを気にした様子もなく、レジスは言葉を続ける。

 

「砲撃後、敵のイルⅡ部隊にはエルス国部隊を当てましょう。実力は我が軍よりも高く、それに我々は部隊を失いません」

 

 同盟国を利用しようとする意見に俺のこめかみが動く。だがその提案は理路整然で何も反論出来ない。

 俺は死んだ者に対して顔向け出来るような成果を出さなくてはならない。この際は感情を捨てなければならない。

 

「……その通りだな。砲撃後、エルス国部隊に指示を送れ。勝つ為に俺は鬼にも悪魔にもなろう」

 

 そう言うと心が締まった気がした。

 

 そしてオペレーターが次々と状況を報告していく。

 

「レーザー砲、オールグリーン。山頂へのエレベーター、オールグリーン。山頂の開口部の障壁の展開を確認。砲身、外部に露出しました。付近に機影無し。エネルギーライン、接続。エネルギー、注入開始」

 

 カウントダウンが始まる。全てを賭けた一撃が放たれる。これが壊されたら終わりだ。

 

 30秒ぐらいのカウントダウンだがとても長く感じる。そして残り時間が減る度にどんどん心の中にある期待が大きくなっていく。

 

 早く、早く……と急かしたくなるが、残り時間は変わらない。

 

 残り時間が半分を切ったときレーダーに近付く機影が見える。

 

「敵機がレーザー砲に近付いてます!! 気付かれました!!」

 

 その情報に司令室内の空気が一変する。レーザー砲近くのモニターを見ると、レーザーソードを片手に猛スピードで斜面を駆け上がるイルが見える。

 

「マズい!! 誰か、止めろ!!」

 

 オペレーターが応援を呼ぶが、間に合うかどうか分からない。

 

 レーザー砲に付けてあるカメラから目の前まで迫り、腕を振り下ろす姿が見える。

 

 ーー誰もが心の中で叫んだ。こんなにも呆気なく俺達の博打は終わってしまうのかと。

 

 その時、モニターに黒い影が落ちて、直上をレーザーソードが通過する。

 

 外した!? 何で!? と思ったのも束の間、直ぐに理由が明らかになった。

 

 黒い影はセイバーで、イルとレーザー砲の間に機体を潜り込ませていた。そしてその機体を貫くレーザーソード。自ら盾となったのだ。

 

 その機体から通信が入る。

 

「……ご無事で……しょうか、我々の希望は……」

 

 息も絶え絶えに言う言葉に俺は強く頷く。

 

「ああ、無事だ。よくぞ来てくれた!!」

 

 俺の言葉に血を吐きながら、微かに笑うパイロット。

 この吐血はここからは見えない下半身に怪我を負っているのかもしれない。

 

「最後に……約に立てて……光栄です。絶対に……この刃は通さない……ので、どうか……撃ってください。死んだ者の……為に……」

 

 セイバーがイルの腕を掴み、それ以上下に振り下ろさせないようにしていた。朦朧とする意識の中、彼はずっと敵を離さなかった。

 

「……ユルゲン閣下。チャージ完了です」

 

 小さな声と共に振り返るオペレーター。その表情には撃て、という感情が見て取れる。

 ああ、死んで行った者達の為に撃つ!!

 

「この一撃をもって戦況を変えるぞ!! 見よ、死んで行った者達よ!! これがお前らが守った希望の光だ!!」

 

 発射ボタンの上に掛かっているカバーを上にずらし、ボタンに指を置く。そのボタンには多くの人の思いが込められている気がした。

 

 その思いに覚悟を決め、強くボタンを押す。

 

 するとレーザー砲から青白い光が放たれ、まず目の前に居た2機のHAWを光で包み、縦横に更に大きくなった大出力の光は多くの物を呑み込んで空に消えていった。

 

 


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