混沌の中で選ばれし英雄 ~理不尽な世界を魔法と人型兵器で破壊してやる~   作:氷炎の双剣

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今話は作者が執筆中に思い付いたコメディーです。
苦手な方は飛ばしても結構です。
本編には影響ありません。

裏話とか日常を書いて行く予定です。

8/16改稿


1-A ユーリ達の日常(閑話)

 ◆葬式の惨劇◆

 

 作戦で死んだ人達を弔う葬式での出来事……

 

 サイオンが前に立つ。

 

「皆、集まってくれてありがとう。ユーリから聞いてた通り、今から葬式を行う。

 死体は腐敗が進んでいるから見る事は出来ない。今、ここで別れを告げてくれ」

 

 その言葉を聞いた途端に、嗚咽を漏らしたり、泣き声を上げたり、人それぞれの反応を示した。

 

 ユーリもその中の一人だ。

 ユーリも思い出すウィリーとの思い出を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あれ?

 

 確かにウィリーとは友達だけど思ったより思い出無くね?

 アイツ、親友とか言ってたけどあまり一緒にいなかったなあ。

 

 むしろ、最近知り合ったアンジェリカ達との思い出ばかりだ。

 

 頭の中を角から角まで思い出を探すが、なかなか思い出せないユーリだった……

 

 

 ◆葬式の惨劇 完◆

 

 ユーリ……ヒドいだろ……

 有ってはいけないNGシーンでした。

 

 意外と思い出が無い友人っていますよね。

 

 ※本編ではちゃんと思い出しています。

 

 

 

 

 

 

 ◆地球連合軍の緊急事態◆

 

 -地球連合国 本部-

 

 地球連合国の役員達、10人が会議を行っている。

 その中の一人の男が、足を揺すりながら口を開いた。

 

「マズいですな、皆の不満が募ってきてますぞ」

「何かいい対策が無いか……そういえば、誰かが貯めていると噂が有りますが」

 

 男は会議室にいる役員達を一瞥する。

 

 すると50代ぐらいの女性は不満顔で答えた。 

 

「いやよ。あんなおいしい物が毎日食べれないなんて……食べれないなら死んだ方がマシよ!」

「ははっそうですな。老人にとって唯一の楽しみですからなあ」

 

 会議室中に笑い声が響く。

 すると一人の老人が自慢げな顔で口を開いた。

 

「いい考えあるのじゃが、火星から取り寄せたらどうじゃ?」

 

 その提案に女性が食いつく。

 

「え? 火星に有るのですか?」

「え? 無いのか?」

「有るわけ無いでしょう」

 

 すると、女性はヒステリックに叫びだす。

 

「あれが無いと死んでしまう! 軍を出動させなさい!」

「はっ!!」

 

 部下に指令を出す。

 

 地球連合軍は大量の兵士を動員し、目標地点に向かう。

 そして包囲した。

 

「こちらは地球連合軍! 直ちに降伏しろ! 抵抗するなら手段を問わない」

 

 だが、反応は無い。

 ついに突入する。

 

 兵士は入り口から一斉に入り、中に居た人に銃を向ける。

 中に居た人は手を上げ降伏する。

 

「こちら、アルファ、目標を確認奪取した」

「こちらもだ。ブラボー、目標を手に入れた」

 

 どちらも手に入れたのは白い液体だった。

 ドロドロした粘り気たっぷりの液体である。

 こんな物良くそのまま飲めるなと兵士達は呻くのであった。

 

 一時間後、白い液体が女性の元に到着する。

 

「お主、良く飲めるな。ワシには気持ち悪くなるわ。普通はかけるもんだぞ」

「私にはコレが無くては生きて行けませんわ」

 

 女性は直接口を付け、ゴクゴクと飲んで行く……

 

 周りの人達はあまりの熱中さに呆れるのであった……

 

 

 

 ◆地球連合軍の緊急事態! 完◆

 

 皆さん女性が欲しがって居た物、何か分かりますか?

 メッセージを送ってくだされば、答え合わせします(*´ω`*)

 

 いつでも応対しますので、気になる方はどうぞ( ・∀・)つ

 

 

 

 

 

 

 ◆もし、サラが話しかけて来なかったら……◆

 

 

 そのトラックには自分と同じぐらいの女の子がいた。

 ユーリが女の子に向けた時、目が合った。

 ショートヘアーの赤い髪が印象的で目が大きく、可愛らしい少女だった。

 

 ユーリはしばらく無言のまま、見つめてしまった。

 だが少女は目線をすぐ逸らし、どこか上の空だった。

 ユーリがどれだけ見つめていても、少女は気づかない。

 

 ユーリはどうしても話したい。この子とお話したいという気持ちでガン見する……

 しかし、少女は全くユーリには気づかない。

 

 その様子を見かねたユーリの父がユーリに話しかける。

 

「ユーリ、あの子が気になるのか? 話しかけてみれば良いじゃないか」

「ええ!? ……僕には出来ないよぅ」

「このままじゃ見るだけになるぞ? 良いのか?」

「でも……うーん……だけど……」

 

 ユーリのそんな様子にため息を付き、父は呆れたのか、力を貸す事にした。

 

 ユーリ父はサラ父に話しかける。

 

「こんにちは。アナタも家族で火星に?」

「こんにちは。ええ、家族で火星に行きますよ」

「家族連れとは嬉しいですよね。一人では寂しいですからね」

「そうですね。私も一人では……」

 

 2人共苦笑いする。やはり単身赴任は父親としては寂しいのだろう。

 

 続いてユーリ父が話す。

 

「家族は奥さんと娘さんで3人ですか?」

「ええ。2人共来てくれてホッとしてます。地球に残りたいとか言われたらどうしようかと思ってました」

「大変ですねぇ。ウチはすんなりとも来てくれて助かりました」

「私はウチの中で権力弱くて、女2人、男1人ですからいつも負けてます……」

 

 サラ父は苦笑いするがそんなに困ってないようだ。なんだかんだ上手く行ってるらしい。

 

「お互い頑張りましょう。ああ、失礼。自己紹介してなかったですね。私はユーリ父です。この子は息子のユーリです」

「あ、どうも。私はサラ父です。ウチの娘のサラです」

 

 サラの父はサラを呼ぶが、サラは上の空である。

 サラの父はサラの肩を叩く。

 

「サラ! 挨拶しないか!」

「えっ? な、何?」

 

 サラはハッとして慌てて返事する。そんなサラを急かす父。

 

「ほら挨拶しなさい」

「は、はじめまして。サラです」

 

 サラは明らかに動揺していて、目線が定まらない。

 

 ユーリの父は、慌てているユーリを小突く。

 

「ほら挨拶しろ。これで話せるだろ?」

「う、うん。父さんありがとう」

 

 そしてサラに向かい、口を開く。

 

「ぼ、僕はユーリ=エリクソン10歳です! よろしくお願いします!」

 

 

 ◆もし、サラが話しかけて来なかったら……完◆

 

 お父さんイケメン(#^_^#)

 結局本編に収束させました。2人が出会うのは運命なのだ……

 

 もうお父さん達はお役御免です。安らかにお眠り下さいナム

 

 

 

 

 

 

 

 ◆アンジェリカとクリフ◆

 

 火星独立作戦前に(さかのぼ)る 。

 

 サイオンから呼び出しを受け、アンジェリカは会議室に入る。

 サイオンからはようやく時が来たとしか聞いていない。

 だが、何かが始まるのだという事は理解出来た。

 

 アンジェリカが会議室に入ると中には老人だけだった。

 その老人は椅子に座り、微動だにしない。

 

 しばらく椅子に座り、ぼーっとするが、老人をチラッと見る。

 

 老人は入って来た時からまだ微動だにしない。

 

 アンジェリカはまさか……と不安になり声をかける。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 だが、反応は無い。

 アンジェリカは更に不安になり肩を揺する。

 

 すると、老人はゆっくり椅子から倒れるように落ちた。

 

「えっ!? あの! 大丈夫ですか?」

 

 アンジェリカは慌てて脈を取る。

 だが、すでに脈打ってはなかった。

 

「えっ? まさか心筋梗塞!? ……それとも……」

 

 アンジェリカは必死に考えるがどれもアンジェリカには今からは何も出来ない。

 

 せいぜい、心肺圧迫か人工呼吸しか出来ない。

 

 とりあえず、アンジェリカは誰か呼ぶ為に会議室を出ようとするーー

 

 

 ーーその肩に誰かの手が置かれる。

 

 アンジェリカは恐る恐る振り返るとそこには先程の老人が居た。

 

「……お嬢ちゃん、どこ行くんだい?」

 

 その老人の顔は死にかけてるゾンビみたいな顔であった。

 

 その言葉にアンジェリカはーー

 

 ーー悲鳴を上げるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

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 アンジェリカが落ち着いて来た頃、顔が腫れたクリフが居た。

 

 アンジェリカは嬉しいような、怒っているような形相でクリフに怒る。

 

「ヒドいじゃないですか!! 何ですか、死んだふりって! そんなの普通の人には出来ませんよ! ホントに死んでますし!」

「ワシだけの特技じゃ。少しやりすぎたかもしれんのう」

 

 だが全くクリフに反省の色は見えない。

 

「あんな特技要りませんよ! ……やり過ぎです!」

「老人の楽しみじゃ。

 ……ところでお主も叩き過ぎじゃないかのう。これ老人をいたわりなさい」

「騙す人にはこれぐらいしなきゃダメです!

 ……ところで自己紹介してませんでしたね。私はアンジェリカです」

 

 アンジェリカはペコリと頭を下げる。

 

「クリフじゃ」

 

 そう言いながら自慢の白髭を弄る。その長さは胸まで届きそうだ。

 

 アンジェリカは少し長い髭をチラッと見てからクリフを見る。

 

「クリフさんですか。よろしくお願いします」

「うむ。……ん? お主悩み事あるな?」

 

 クリフは目を細め、不敵に微笑む。

 

「えっ? 分かるんですか?」

「ワシぐらいになると分かるのよ」

 

 クリフはフッフッフッとドヤ顔をする。答えを急かすアンジェリカにもったいぶりながらゆっくり答える。

 

「それはじゃな。……ズバリ……恋じゃな?」

「え? ええっっーー!? 何で分かるのですか!?」

 

 アンジェリカは目を見開き、口を抑える。当てられた事が信じれないみたいだ。

 

 クリフは慌てているアンジェリカには分からないようにニヤリとする。

 

(このぐらいの年頃の悩みは恋が定番じゃからな)

 

 不敵に微笑むクリフには気づかないアンジェリカは更に質問する。

 

「私、どうすればいいのでしょうか?」

 

 もう既にアンジェリカは信じ込んでいるみたいだ。

 

「ふむ。まずは相手を知らずには攻略出来ん。相手を知るのじゃ」

「相手を知る……確かにあまり知らないですね」

 

 アンジェリカはうんうんと頷き、納得している。

 

「ならばじゃ。まずは顔見知りになる事じゃ」

「分かりました! アドバイスありがとうございます、クリフさん」

 

 これからどうしようかと考えて、楽しそうなアンジェリカを尻目にクリフはにやける。

 

(楽しくなってきたわい)

 

 

 

 

 

 ◆クリフとアンジェリカ 完◆

 

 実は2人はここで仲良くなっていたのでした。

 

 アンジェリカは真剣ですがクリフは楽しんでそうです。

 まあ2人共win-winなら良いんじゃないでしょうか。

 

 さてお次はあの方の復活回です。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆血のバレンタイン◆

 

 作者の時期からもやや遅いが気にしない。

 作者も関係なかったのも気にしない。

 だが、一部の人には大イベントである。

 

 わ•た•しには関係ないが火星では一大イベントだ。

 

 ※誰も死んで無い設定で、火星独立作戦後です。

 

 火星にバレンタインがやって来る!

 

 

 

 

 

 

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 2月14日ーー地球だけでは無く、火星にも例外なくバレンタインデーはやって来る。

 

 その日の前日。

 

 火星の女の子達もやる気まんまんだ。

 

 そして多くの戦う乙女達が厨房に集まっていた。

 

 

 

 

 

 -火星 厨房-

 

 2月13日

 

 地球連合の施設には大きな厨房が有る。ユーリ達が使っていた食堂の厨房だ。

 ユーリ達に出す物は単純な物だったが、兵士達に出す物はそれなりの物であったから厨房はそれなりに広く、設備も揃っていた。

 

 そんな立派な設備の中、みんな試行錯誤しながらチョコを作っていたが、まだ座って動かない3人がいた。

 

 サラ、アンジェリカ、ベティである。

 

 なぜ3人が動かないかというと雑誌とにらめっこしていたからである。

 

 雑誌の内容は

 

『オリジナルチョコで他の人を圧倒しよう』

 

 という記事であった。

 

 記事にはその人の特徴が分かる材料を入れていて、食べた瞬間、誰のチョコか分かるという事が書いてあった。

 

 たくさんあるチョコの中でどれが誰のか分からなくなる物だ。

 そんな中明らか印象強いチョコは記憶に残り、上手く行くと書いてある。

 

 しかし、3人の女の子は自分らしさに悪戦苦闘していた。

 

 自分のらしさとは何か?

 

 3人は長い間、考えたが自分達で結論を出すには難しいという結論に至った。

 

 そこで他の人に聞くのはどうだろうかと思いつく。

 

 3人は思い思いに厨房から散って行った。

 

 

 

 

 

 

 -サラ サイド-

 

 まず真っ先に向かったのはユーリの所である。

 

 ユーリは部屋で筋トレをしていた。

 

 サラが近付くとユーリは気づき、筋トレを止め、サラの方へ向く。

 

 逞しくなった身体に汗が滴り落ちる。

 

「あれ? サラ戻って来たの? 早いね」

「違うよ。ねえユーリ君に質問有るんだけどいい?」

 

 ユーリは驚いて自分を指差す。

 

「え? 僕、頭良く無いけど大丈夫?」

「ふふふ。勉強じゃないわよ。あのね、私の特徴って何?」

「特徴? ……うーん」

 

 ユーリは首を捻って考える。サラの行動や雰囲気を振り返る。

 

 しばらく考えるとユーリは思いついた。

 

「サラは太陽かな」

「太陽?」

 

 サラの疑問にユーリは自分で確かめながら話す。

 

「うん。サラは僕を明るく照らしてくれる。サラがいなかったら僕は生きてなかったかも」

 

 その感謝の言葉に、サラは頬を緩ませる。

 

「ふふ、ユーリ君は大袈裟だね。……ありがとう。私もユーリ君に助けられたから今こうして生きてるんだよ」

「じゃあお互い様だね」

「うん。ユーリ君ありがとうね」

 

 サラはユーリにお礼を言い、部屋を出て行く。

 その足取りは軽やかでイメージが固まったみたいだ。その足先は厨房だ。

 

 

 

 

 

 -アンジェリカ サイド-

 

 アンジェリカは悩んでいた。誰に聞くかである。

 本心ではユーリに聞きたいがサラが向かったはずである。

 

 私がユーリさんの所に向かったら……

 

 と心の中で攻防していると、クリフがやって来る。

 面白い物を見つけた子供のような笑顔だ。  

 

「お悩みですかな、お嬢ちゃん?」

「あ、クリフさん!」

 

 クリフの顔を見たアンジェリカは笑顔になる。

 そこですかさず、クリフは助け舟を出してあげる。

 

「明日の事かね?」

「ふふ。さすがですねクリフさん。その通りです!」

 

 アンジェリカは多少驚くが、もうクリフがお見通しな事には慣れてきたようだ。

 

「で、何かな?」

「あの、私の特徴って何ですか?」

 

 クリフはアンジェリカを頭の天辺から足の爪先まで見る。

 クリフにアンジェリカは見透かされてるような感じになり恥ずかしくなり、身体を少しモゾモゾとさせる。

 

 顎の白髭を弄ったクリフは少し考えた後、答えを出した。

 

「ふむ。清廉じゃな」

「清廉ですか?」

 

 クリフはうんうんと頷きながら続ける。

 

「お主は清廉じゃ。何色にも染まらない白色のような心が綺麗じゃ」

「ありがとうございます」

「このまま清廉で居るんじゃぞ」

「はい! ありがとうございます!」

 

 アンジェリカもチョコのイメージが固まったのか、厨房に向かう。

 

 その途中、ユーリと遭遇する。

 ユーリは汗を流す為、浴場に向かう途中だ。

 

「お、アンジェリカじゃないか。みんな何してるんだ?」

「ユーリさん……こんにちは。それは秘密です♪」

 

 誤魔化すアンジェリカにユーリは少し拗ねる。

 

「えー教えて欲しいなあ。

 ……そういえば、サラが変な事聞いて来たな」

「私の特徴って何ですか? とかですか?」

 

 その的確な答えにユーリは驚きながら、疑問に思う。

 

「そうそう! ーーって、何でアンジェリカが知ってるの?」

「あ、私も聞いてみたくて……ダメですか?」

 

 そのキラキラとした視線にユーリは諦める。

 

「ダメじゃないけど……うーん、アンジェリカは健気かな」

「健気……」

 

 アンジェリカは健気という言葉を思い浮かべる。

 

「うん。アンジェリカはスゴいようには見えないけど、アンジェリカは必死にみんなの為に頑張っている姿が印象的だなあ」

 

 しみじみとユーリはアンジェリカが頑張る姿を思い出し、頬を綻ばせる。

 

 そんなユーリを見たアンジェリカも笑顔になる。

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

 アンジェリカの感謝の言葉に、ユーリは悩みながら聞く。

 

「こんなんで良いのかな?」

「いえ、助かります」

「良かった。じゃあまた後で」

 

 ユーリはそのまま、浴場に歩いていく。

 そのユーリの背中を見つめているアンジェリカの顔は少し哀しげだった。

 

 

 

 

 

 -ベティ サイド-

 

「どうしようかしら……」

 

 と溜め息付くベティの心は晴れなかった。

 

 何故かと言うと、ベティにはあまり男友達は多くない。

 誰に聞こうか悩んでいる所にウィリーが通りがかる。

 

「お嬢さん、悩み事かい?」

 

 と自称イケメンスマイルで話しかけてくるウィリー。

 

 ベティは無視しようと思ったが、ついでだから聞くかという軽い気持ち聞いてみる。

 

「ねえ、私の事どうおもう?」

 

 その質問にウィリーはキョトンとする。

 しばらくするとウィリーは慌てて出す。

 

「い、いきなり、ドストレートな質問だなあ! 俺的にはなかなか可愛いと思うけど……まだ知り合ってから日が経ってないし……もう少し知り合ってから答えても良いかな? 最初は友達からで良い?」

 

 その答えを聞いたベティはみるみる赤面し、大きな声で否定する。

 

「ちょっと! そういう意味じゃないわよ! 私の特徴って何? って聞きたかったのよ! ウィリーのバカ!」

「え? 痛っ! 痛いって! ごめん、勘違いしたんだよ! 許してー!」

 

 ベティはウィリーをボコスカ殴る。

 少し殴って気が済んだのか、早くと答えを催促する。

 

 ウィリーは咄嗟に出てきた考えを口にする。

 

「え、えーと。……女王様?」

 

 ベティは無言で拳を振り上げる。

 

「冗談です! アメリカンジョーク! 真面目にやるから! ……えーと。センニチコウとかどうかな?」

「センニチコウ? 何それ?」

 

 センニチコウ……ベティには聞いた事の無い言葉だった。

 

 頭にクエッションマークを出しているベティにウィリーは得意げに説明する。

 

「センニチコウは花の一つで花言葉に強い意志とか有るらしいよ」

 

 強い意志ーーそれはベティにぴったりだった。

 

「良いわね。私にはピッタリだわ。

 ……ところでウィリーが花言葉に詳しいとはびっくりしたわ」

「俺は博学だからな!」

 

 と言うウィリーは鼻を高くして、ふんぞり返る。

 

 だが、ベティは冷たい目線を向ける。 

 

「……そうね。そういう事にしとくわ」

 

 冷たい視線に気づいたウィリーは居たたまれなくなる。

 

「ど、どうも」

「ありがとう。参考にするわ」

 

 だがベティも感謝はする。ウィリー、最初はふざけていたが最後には正直に言ってくれたのだ。

 

 ベティの気持ちも決まったのか、厨房に向かって行った。

 

 そして3人は思い思いのチョコを作り始める……

 

 

 

 

 

 

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 2月14日 バレンタイン当日

 

 ユーリは朝から筋トレしていると、ウィリーがやって来た。

 

「よお、ユーリ。朝から精が出るな」

「おはようウィリー。少しでも強くならないと……」

 

 とウィリーに返事をしながら腕立てを行う。

 ウィリーは感心しながら腕立てをしている様子を眺める。

 

「やるなあ。てかお前今より強く必要あるのか?」

「ある。地球には魔法師は沢山いるから……まだ僕はどの位強いか分からないから精進しないと」

 

 火星独立作戦ではユーリは、火星司令長官に敗北している。だからまだ上を目指す必要が有るのだろう。

 

「なるほどなあ。

 ……そういえば、今日、何の日か分かるか?」

 

 ウィリーはニヤニヤしながらユーリに聞く。

 だがユーリには分からないようだ。

 

「え? 何の日だろう。なんかの記念日?」

 

 ユーリの分からないという顔を見たウィリーは呆れる。

 

「ハァ。お前……まあユーリなら納得するわ。今日はバレンタインだよ」

 

 ユーリに今日がバレンタインだと教えると納得した顔になる。

 

「あ、バレンタインは今日なんだ。なんかチョコが貰える日でしょ?」

「……それは勝ち組。お前は俺の仲間だよなあ?」

「仲間? そういえば、この時期に良くチョコ貰ってたなあ。バレンタイン、今日だったのか」

「ーーこの裏切り者ーー!!」

 

 ウィリーは泣きながら走り去って行く。

 ユーリには結局なんでウィリーが泣いてるか分からなかった。

 

 

 

 

 

 

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 ユーリが筋トレから戻って部屋に戻ると、既にサラが部屋にいた。

 だが、少し様子が変だ。何故かモジモジしている。

 

「ただいま。ん? サラ、トイレはあっちだよ?」

 

 そう言うとサラは赤面し、怒り出す。

 

「ユーリ君のバカ! トイレじゃないよ! あの、これ!」

 

 と少しプンプンと怒りながら、サラは何かを差し出して来た。

 良く見るとチョコである。

 

「サラ、ありがとう! 嬉しい!」

 

 そんなユーリの様子を見てサラは安堵した。

 

「良かった~ユーリ君喜んでくれて」

「サラから貰えて嬉しいよ。あ、もうすぐご飯だからその後でもいい?」

「うん。今渡さなくても良かったね。感想楽しみにしてるね」

 

 感想か……難しいなあ。

 

「感想かあ。僕、評論家じゃないから上手く出来ないかも」

「素直な感想で良いんだよ」

 

 そう言ってくれるとユーリの気持ちは少し軽くなる。

 

「さあ、ご飯行こうか」

 

 二人で食堂に向かう。

 

 食堂には既にみんなが居た。

 

「ほれ、二人でいちゃついて無いで席に着かんか」

「クリフさん、別にいちゃついて無いよ!」

「今日は辞めといた方がいいぞ、ユーリ」

 

 サイオンが指差す方向には血走った目をしたウィリーが居た。

 

(これはヤバそう……大人しくしよう)

 

 と大人しく席に付くユーリであった。

 

 

 

 

 

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 食べ終わって食器を洗っていると、トトトとアンジェリカが近づいて来る。

 

 近づいて、気持ちを固めたのか話しかけて来る。

 

「あの、ユーリさん」

「ん? アンジェリカどうした?」

「良かったらこれ!」

 

 アンジェリカが両手で差し出したのはチョコだった。

 

「アンジェリカもかい? ありがとう」

「あ、サラさんも渡してましたか。いつもユーリさんにはお世話になっているのでどうぞ」

「僕の方こそお世話になってるよ。いつもありがとうね」

「いえ。それではまた後で」

 

 アンジェリカは急いで小走りで去って行った。

 

 

 

 

 

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「はあはあはあ……」

 

 ユーリから走って逃げたアンジェリカは息を落ち着かせて居た。

 

(私……何で言い出せなかったのよ!!)

 

 とアンジェリカは自分を責める。

 

 本命チョコを義理チョコとして渡すという女性は誰しも経験してるので無いだろうか? 

 アンジェリカもそれに苦しむ1人の乙女だ。

 

 するとそこにクリフがやって来る。

 

「アンジェリカ……渡せたかのう?」

「渡せました……でも義理チョコとしてです……」

 

 そう言うアンジェリカは俯く。

 だが、クリフは悲観していない。

 

「ふむ。アンジェリカはどうしたいのじゃ?」

「ユーリさんと! ……でもサラさんを困らせたく無いです……」

 

 アンジェリカは一度強い意志でクリフを見つめるが、現実に見て、目線を伏せてしまう。

 

「ならばじゃ。正々堂々サラに話してみたらどうじゃ? お互いに隠し事無しで競ってみたらどうじゃ?」

「でも……」

「恋は戦争じゃ。だが、正々堂々やらんと反感買うんじゃ。だから正々堂々正面から行くのじゃ!」

「……分かりました。ありがとうございます!」

 

 恋は戦争ーーこれはあながち間違いでは無いと思う。どんな手段を使おうとも相手の心を手に入れたら勝利である。

 勝てば官軍。

 

 そんな非情な戦いだが、お互い仲間、恨み合いたく無い。

 

 だからお互いに納得行く経過を経て、白黒はっきり着けたかった。

 

 アンジェリカは決心したのか駆け出して行った。

 

 だが、しばらくするとアンジェリカが戻ってきた。

 

「あ、クリフさん! クリフさんにも、どうぞ!」

「お、ワシにもくれるのか!」

 

 そう言うクリフはとても嬉しそうだ。

 

「はい! いつもお世話になってますから!」

「ふっふっふっ。ワシにも春が来たかのう」

「もちろん、義理チョコですけど!」

「グフッ……」

 

 当然な義理チョコにダメージを貰うクリフ。

 

 今度こそアンジェリカは走って行った。

 

 

 その背中をクリフは暖かい目で見送る。

 

 

 

 

 

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 アンジェリカはサラの元に着く。

 

「サラさん!」

「アンジェリカじゃないの。どうしたの?」

 

 アンジェリカは一度深呼吸する。

 気持ちを固め、サラと目を合わせる。

 

「私は……ユーリさんが……ユーリさんが大好きです!」

 

 決死の告白をサラにぶつける。素直な気持ちを述べたまでだ。

 

 その告白にサラは特に驚いた様子ではなかった。

 

「知ってるわ」

 

 その言葉にアンジェリカは頭が真っ白になる。

 

「え?」

「なんとなくアンジェリカの目がユーリ君の事好きって言ってるような気がしたから」

 

 アンジェリカは目を隠す。また見透かされてような気がしたからだ。

 

「ふふ。今じゃないのよ。たまにそんな感じがするのよ」

 

 アンジェリカが偶にチラッと見せるユーリを見つめる乙女の視線。

 それをサラは見抜いていた。

 

 もはや隠し事はしないと決めたアンジェリカは提案する。

 

「そうですか……サラさん。是非私とユーリさんをかけて競いませんか?」

 

 頭を下げ、懇願する。

 

 しかし、その答えは否定だった。

 

「ダメ」

「え?」 

 

 アンジェリカは落胆した。

 

(ダメだよね……そりゃあ横取りしようとしてるだもんね)

 

 否定される事を納得している自分もどこかに居た。

 

 俯いて、サラから離れようとした時、サラが近づいて来る。

 

 次にサラの口から出た言葉は衝撃だった。

 

「競うんじゃなく、共有しない?」

「共有ですか!? い、良いんですか?」

 

 サラの言葉は信じらんないのは当然だ。

 

 自分が独占出来るというのに、わざわざ半分こしようと言うのだ。

 

 こんな素晴らしい彼女は世界中、探しても居ないのでは無いだろうか?

 

「アンジェリカなら私は良いのよ。どちらかが悲しむのは嫌だしね」

 

 サラはウインクする。

 サラは本気みたいだ。

 

 その強い意志を感じたアンジェリカは深々と頭を下げる。

 

「サラさん……ありがとうございます!」

 

 サラはアンジェリカの顔を上げさせる。

 

 そして笑顔で提案する。

 

「じゃあ、お互いにユーリ君が好き者同士、ユーリ君について話さない?」

「良いですね!」

 

 ここにユーリ大好き同盟が結成された。

 

 

 

 

 

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 -ベティ編-

 

「ふう。作ったけど誰に渡せば良いかしら」

 

 完成したチョコを目の前にため息を付いていた。

 

 勢いで作ったベティは作ったが誰に渡すか全く決めていなかった。

 

 捨てるにはもったいないので自分で食べようとしていた所にウィリーがやって来る。

 

 ベティの手元を覗き込み、チョコを見ると、質問してくる。

 

「なあなあ、それ誰かに渡さ無いの?」

「ええ、とりあえず作ってみた感じだわ……無駄にしたわ」

 

 ベティは額にシワを寄せ、勢いで作った自分を反省する。

 

 困っているベティにウィリーは提案する。

 

「余ってるなら、俺にくれないか?」

 

 その提案に感謝しようとするが、直ぐに察する。

 

「……なるほどね。哀れなウィリー君にあげるわよ」

「え! 良いんっすか! ベティの姉御!」

「その呼び方止めて! 可愛いく無いじゃないの」

 

 ウィリーはベティを姉御と拝みながら、大事そうにチョコを貰う。

 

 ベティからチョコを受け取ると卑しい人みたいにチョコを懐に抱え込み、絶対に渡さない態勢を取る。

 

「もう返してって言っても返さないからな!」

「そんなに固執しなくても……」

 

 ベティは髪を弄くりつつ、呆れながら、言う。

 

「そんなに欲しいなら……来年もあげるわよ」

「マジで! あざっす!」

 

 こうして来年のバレンタインもウィリーのチョコは一つ確保されるのであった。

 

 

 

 

 

 

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 -エピローグ-

 

 それぞれがチョコを想いの人? に渡した後の事である。

 

 ユーリはサラとアンジェリカのチョコを。

 クリフはアンジェリカのチョコを。

 ウィリーはベティのチョコを。

 

 それぞれ食べようとしていた。

 

 泣いて居たウィリーはどこへやらの円満の笑みだ。

 

「なあなあ、ユーリはいくつ貰ったんだ? 俺は一つ」

「2つだね」

「チクシュウ! サラだけじゃないのか!」

 

 ウィリーは机を叩く。そんなウィリーにクリフからの追撃が入る。

 

「ワシもじゃよ」

 

 チョコを片手に嬉しそうなクリフがやって来た。

 

「クリフさんもアンジェリカに?」

「うむ。さて食べようじゃないか」

 

 2人がチョコを取り出すのを見て、ウィリーも渋々、席に着く。

 

 サラのは見た目は普通のチョコで有ったが、臭いが普通とは違った。

 サラのはオレンジの臭いであった。

 

 

 

 そしてアンジェリカはホワイトチョコ。

 

 ベティはストロベリーのチョコであった。

 

「「「おおー!!」」」

 

 3人共、驚く。予想以上に見事な見た目である事に。

 

 ユーリはサラの。

 クリフはアンジェリカの。

 ウィリーはベティの。

 

 チョコを食べる。

 

 一口目……パクッ……

 

 ユーリはオレンジの香り。

 クリフは甘ーいチョコの香り。

 ウィリーはストロベリーも香りを

 

 

 

 

 

 感じるハズだったーー

 

 

「「「しょっぺえーーー!!」」」

 

 3人は咄嗟にチョコを吐き出す。

 

 口の中をしょっぱい……を通り越し、塩辛くなっていた。

 

 なんとチョコには砂糖では無く塩が使われていたのであった。

 作った3人は余りにも自分らしさを表現するのに必死なあまり、材料の確認をしていなかったのだ。

 

 

「何だこのしょぱさは!? あいつら、俺達を高血圧で殺す気か!!」

 

 ユーリはクリフの歪めた表情を見て、手元にある未開封のアンジェリカのチョコに恐怖を感じる。

 

「まさかアンジェリカのチョコも……」

「ダメじゃぞ、ユーリ……」

 

 クリフは絶え絶えにユーリに忠告し、倒れる。

 

「「クリフさーん!!」」

 

 

 ここに血のバレンタインが起こった……

 

 

 ◆血のバレンタイン 完◆

 

 バレンタインは恐ろしい((((;゜Д゜))))

 私には無くって良かった(涙目)

 




とりあえず、閑話は今話でお終いです。

次話でユーリ編は最後です。

また思いつき次第閑話投稿しますね。

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