meet again 作:海砂
「初めまして、ステファン・ジェバンニです」
大学を出てFBIに入り様々な事件に携わってきたが、これほどの大きな事件に関わるのは初めてだ。
通称「キラ事件」、そして、以前にもLの指揮下に入った事はあるけれど、直接Lの顔を見ることすらも初めて……。なぜ僕が突然この事件に呼ばれたのかはわからない。けれど、何かしら役に立てるからこそ呼ばれたはずだ。大学の頃に語学の勉強をしておいてよかった。英語以外にも、日本語・ドイツ語・イタリア語を話す事ができる。日本にキラが潜伏しているというのも、何かの縁なのかもしれない。
「初めまして、Lです。ここでは竜崎と呼んでください」
Lに、ここにいる捜査本部のメンバーを紹介してもらい、ウイングと名乗る青年の下に付くよう指示された。少し下か、同じ歳くらいか……日本人は年齢がわかりにくい。
「日本語、話せますよね?」
「はい。日常会話でしたら大丈夫です」
見たところは普通の青年だ。けれどLの例もある。見た目で人を判断するのはまずい。Lが信頼しているフシもあるし、この人もおそらく何らかのエキスパートなのだろう。
「ボトルシップとか、好きじゃね?」
「……は?」
「細かい手作業とか、大好きじゃね?」
「……はぁ」
まさか僕の趣味を知っているわけでもあるまいに……いや、もしかしたら調べられているのかも……けれどそんな事が何か関係あるのか……?
「アナタを見込んでお願いがあるとです。Lを含めた俺以外のメンバー全員に内密で」
内密の仕事、だがLにも内密というのはまずくないか? いや、もしかしたらそれも全て把握した上でこの人の下に付けといわれたのかもしれない。ここはいう通りにしておくべきだろう。
「わかりました」
「うんうん、口の堅さは信頼してるけど、作業してるのを絶対に他の人に見られないように注意してね。で、頼みたい事なんだけど……」
この作業が、捜査の役に立つとは到底思えない……けれど、やらなければならない。幸い僕の得意分野だ、日数さえもらえれば出来るだろう。念のため、ウイングさんには十日と言っておいたが、出来る限り短い期間でやるようにとのことだ。
言われた事をこなす。それだけでも人間の評価というものは上がる。理不尽な命令を受けることもままあるが、出来うる限りの事はすると、この職業に就いた時に決めたんだ。今は、この仕事に集中する事にしよう。
それから五日間、ジェバンニの姿を見たものは誰もいない……。