meet again 作:海砂
あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おれはマリみてを全巻読破していたと
思ったらいつのまにか会議が始まっていた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった
頭がどうにかなりそうだった……
警察を辞めるだとか再就職だとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
えーとですね、俺がマリみて読んでる間に事件がどんどん進んじゃってたわけですよ。気が付いたらね、竜崎の目の前のでかいモニターにどどーんとヨツバ会議の様子が映し出されてたとですよ。原作どこまで進んだのか……わ、わからない……。
「ウイング、次」
「あ、はい」
クロロもマリみて隣で読んでいるとですよ。これはもうクロロのために俺の取って置きの同人誌も持ってくるしかないな……。
で? えーと、原作のどこだ今。ヨツバを見つけて、そういやアイバーとウエディを紹介されたな。んでエラルドコイルって名前も聞いたぞ。つか既にヨツバに監視カメラ仕掛けてるってことだよな。あれ、ということはマッツーの大ボケは既に終わったということかしまった見逃した。つか何で俺呼ばれなかったんだ? いらない子ですかそうですか……
ていうかあれ? 何で葉鳥がまだ生きてるんだ? 確かお葬式から見始めるんじゃなかったっけ? こっそりパームに確認してみると、やっぱり原作とは違っているらしい。こいつは……カナの影響か? カナの叔父さんだっけか。それにしちゃ若いよな、葉鳥。
「す……凄いですね。ガンガン自白してるって感じだ」
画面の中では着々と会議が進められている。コイルの事、キラが誰か、前西とELFの殺しの依頼……お、夜神が電話かけ始めた。奈南川にだな。うん、間違いない。
一体どこまで原作どおりで、どこまでが違っているのかわからない……。現時点で確定的なのが、俺ら四人の介入、カナの存在、それに、葉鳥が生きている事……。
「なあ、やっぱりアタシが叔父さんにもっぺん近付くのあかんかな?」
「駄目です。もしも葉鳥氏がキラであれば間違いなくあなたが殺されますし、そうでないのならば意味がありません。また、この捜査本部のことがばれる恐れもあります。戻るのは自由ですが、その場合はこの場所へ立ち入る事を禁じますし、秘密を漏らされるのも困ります。やはり、ここからあなたを出すわけにはいきません」
「でも叔父さんはキラちゃうと思うよ。どっちかっつーと気弱な感じやし、このメンバーの中でも発言権あんま無さそうやしな」
食い下がるカナを、夜神もたしなめている。
「確かにそうかもしれないが、君の命を賭けてまでの情報が得られるとは到底思えない。ここは他の手段を考えるべきだろう」
そして……やはり夜神がキラであったと考える竜崎に怒って、二人がまた殴りあう。こいつら意外にケンカっぱやいな。近付かないようにしておこう。そんなことよりキラだ。
「ウイング」
シュートがこっそりと俺の袖を引っ張る。ここではまずい話のようなので、俺達は三人で部屋を出た。クロロは竜崎の部屋に残したままだ。もっとも、事件はガン無視してマリみてに夢中になっているようだが。
「何だ、どうした?」
部屋を出て、他の人間が出てこない事を確認してから尋ねる。
「キラ……ヨツバキラは、火口じゃない」
……えーと、何でそんな事わかるんでしょうこの子。……あなたが神か? まさかな。
「馬鹿。私とシュートはミサちゃんと接触した時にレムとも接触してるのよ。だから、誰に憑いてるかが一目でわかるの」
そうか、すっかり忘れていたが、こいつらにはレムも見えるんだった。
「それで、レムが憑いてるのは火口じゃない……葉鳥だ」
ちょっと待て。ということはだ。カナの兄貴殺したのは葉鳥ってことか? 自分の甥を殺すか普通。
「夜神月は父親でさえも見殺しにしたよ。甥っ子くらい殺しても不思議は無いんじゃない?」
「だが葉鳥がそういうことをする人間とは思えないな」
うわぁビックリした! クロロ、その気配を消して背後から近付く癖やめてください心臓に悪い! この人盗賊じゃなくて忍者だったんでしょうかもしかして。いや忍者はハンゾーか。元気かな、ハンゾー。前の世界でもらった名刺どうしたっけかな……。
「私もあの会議の映像を見る限り、葉鳥がこんな事をするような人とは思えない。所有権が今葉鳥にあるってだけで、裏で誰かが彼を動かしてるんじゃないのかな」
しかし裏で動かすっつったって、誰がやるんだ? あの会議のメンバーだとしたらわざわざ葉鳥に持たせることなんてせずに自分で所有権も持つだろうし……。それ以外? それこそ考えられない。
「ひとまず、キラがあの中に居る、という事実は変わらない。推理するのは竜崎と夜神にまかせて俺達はしばらく傍観しよう」
「また小説に逃避するの?」
うるさいよシュート。俺のような凡才ではここにいたって手持ち無沙汰なだけなんだよ。お前さんはいいよな、野球っていう逃げ道があって。
竜崎の部屋に戻ると、一ヶ月の間にキラをどうやって追い詰めるか、という話に移行していた。
「竜崎、俺らはいつものように別行動をとらせてもらうぞ。何か人手がいるような事があれば言ってくれ、出来る限り協力する」
「はい、居場所だけは必ずわかるようにしておいてくださいね。皆さんは松田さんのようなドジは踏まないと信じていますが」
マッツーがいじけている。気にするなマッツー、俺の中でお前さんは英雄だ。まだ大事な見せ場が残ってるだろうが。あれ、でもキラが火口じゃないなら緊急特番もなくなるのか? ……まあ、どうでもいいや。
「で、小説の世界に戻るの?」
うるさいなパームまでそういうこと言うか、俺もすねるぞ。
「もし時間あるならさ、オレの球受けてよ。やっぱキャッチャーが入るだけでも随分違うし」
馬鹿野郎、オレがプロの球受けられるわけないだろう常考。
「手加減するし、ミット構えててくれるだけでいいからさ。コントロールは任せてよ、一応これでメシ食ってるわけだし」
「ならオレがバッターボックスに立ってやろうか?」
クロロまで余計な事を言い出す始末。
「うわ、それ凄く助かるかも。パームは球速測っててよ」
俺を無視して話がどんどん進んでゆくとです。ちょっと待てよ俺はまだ受けるといってないのにミット手渡されたんですがどうすればいいんでしょうか。やるしかないですかそうですか……。
そして俺様の黄金の右手は真っ赤に腫れ上がってしまって、お箸を持つのすらおぼつかんとです……。何で俺ばっかりこんな役目が回ってくるとでしょうか……。そりゃキラに殺されるのに比べればマシだけどさ……。ヒドスヒドス俺涙目。恨むぜ神。恨むぜ中の人。