meet again 作:海砂
パンツ姿の相沢さんが捜査本部に入ってきた。ここのセキュリティは異常なほど厳しいからな。まぁ、だからカナちゃんの事もすぐに発見できたわけだが……。基本俺はここにヒキコモリなのであまり問題はない。相沢さん以外はみんなここに寝泊りしてるみたいだしな。
「指紋に網膜照合、慣れないと入るだけでも大変ですね」
多分日本で一番セキュリティに厳しい建物なんじゃないか、ここ。ちなみに俺様、郵便受付のお仕事なんかもやっている。そんな頻繁に来るわけじゃないけど主に俺様の注文した新刊とか新作ゲームとかが運ばれてくるので、竜崎直々に受け取り係として任命されたのだ。そん時なんか視線が痛かったけど気にしないことにした。
クロロは順調にマリみてにはまりつつある。ちなみに祥子さまがスキらしい。意外だ。クロロ的には令さんとか志摩子さまあたりが順当だと思ったのだが……人の萌えポイントはよくわからない。俺様? 聖さまラブですがなにか? 彼女にならセクハラされてもいいですが問題でも? ああ、祐巳たんになりたいと何度思ったことか。
話がそれた。そんな訳で郵便物の仕分けなんかもしている俺ですが、あるとき竜崎宛に一通の大きな封書が届いたとです。普通竜崎宛のものは全部ワタリを通すので不思議に思ったとですが、とりあえず爆弾とかじゃなさそうなので竜崎のところに持ってったとです。
竜崎は無表情で封を開けたとです。中身は弥海砂セカンド写真集『あまねく★まねく』やったとです……。竜崎、案外マジでミサミサファンなのかもしれんとです。夜神と三角関係になったら面白いと思うとです。
あれ、また話がそれてる。つまりセキュリティ厳しいとですよ、ここ。その結果相沢さんはスーツのズボンまで脱いで入って来たとです……入ってくる前にはきましょうよズボン。野郎のパンツ姿なんか見ても萌えんとです。
ところで竜崎は今、夜神とミサミサのオジャマムシしとるとです。マッツーがカメラを作動させて、二人と一人の映像をこちらに回してくれたとです。
竜崎、やる気がなくなっとるそうです。ん? これはあの原作にも出て来た殴り合いの場面じゃないか?
想像通り、夜神と竜崎の大喧嘩が始まった。ミサちゃんは部屋の隅で縮こまってる。心なしか、クロロとカナがわくわくしているような気がするとです。
「一回は一回、か……」
一発殴ってみる気だろうか、この人。俺は絶対関わりたくないので聞こえない振りをした。
「ウイング、どっちが勝つか賭けへん?」
ギャンブルは宝くじしかしない俺はこの言葉にも聞こえない振りをした。このおねーちゃん、ホントに元お嬢様なのかね。甚だ疑問が残る。
そしてマッツーの天然ボケにてこの場は収束した。マッツーの才能は侮れない。何せ物語の要所は全て彼に抑えられているといっても過言ではないからな。まぁ、カナの介入でどうなっちまうのかのか知らんけど。
「おめでとう、マッツー」
とりあえず何故か親近感のわく彼に、俺一人だけ祝いの言葉を述べておいた。よかったねマッツー。頑張れよマッツー。お前さんはこの世界の要石なんだぜ。
数ヶ月の間、何事もなく(時々夜神と竜崎が殴り合いをしたり、パームとカナが七ならべで金賭けて夜神父に怒られたりはしていたが)キラの世界が続いていた。逆に言えば、捜査は何も進展しなかったともいえる。竜崎の俺たちやカナに対する疑惑も、夜神への疑惑が一旦解けたことで共に薄れて行ったようだ。というか明らかにやる気ないよあの人。
2004年10月のとある日。ようやく原作に沿った話の進展があった。夜神がヨツバに気付いたのだ。そこでやっと竜崎もやる気の片鱗を見せ始める。警察庁に行っている夜神父を除いた全員で会議が始まった。
「これを見る限り、キラは心臓麻痺以外でも人を殺せると考えて間違いないのか?」
「はい、少なくとも現在のキラはその通りです」
出された資料には、ヨツバに悪い影響を持つ(ヨツバを含む)会社の幹部など13名の死亡状況と各人の詳細情報が書かれている。事故死、病死、心臓麻痺……死因は様々だし、これの人数を見る限りではヨツバの誰かが意図的に殺しているとしか考えられない。予定通りに事は進行している。
相沢さんはヨツバの会社構成を調べ、夜神はメインコンピュータへの侵入、マッツーはオロオロすることになった。……俺も何かしてないとマッツーと同格に見られてしまうな。けどまだ8人の名前を出すのは早いだろう。うーん、ヨツバ幹部でも洗ってみるか……。
「アタシの叔父さんがヨツバのそこそこ偉い人なんやけど、そっちからなんか探ってみる?」
!! ええいイレギュラーがまた余計な事を。なんじゃいそりゃ。頼むからキラ会議の関係者でないことを祈るしかないな……。
「誰ですか?」
「葉鳥新義ちゅうて、ヨツバ本社の宣伝戦略部の部長しよる。アタシのオトンの妹の旦那さんやから直接血は繋がってへんけど」
はいキター!! 関係者ビンゴー。 あれ、葉鳥って確か……?
「おいパーム、葉鳥って確か途中で殺される人だったよな?」
「うん。……まさか親戚とは……」
竜崎は少しだけ考えて、でもすぐに断った。
「先で色々お聞きするかもしれませんが、現状ではたった一人にお話を聞いたところで何かわかるとは思えません。今まで叔父さんから聞いた話の中で、キラに関わるようなものがあった場合のみ教えてください」
「わかった」
カナも素直に頷く。……竜崎は、出来る限りこの子をこの捜査本部……自分の目の届くところにおいておきたいようだ。外出する時も誰か捜査員を一緒に同行させている。完全に疑いは晴れてないということか。ん? そういや俺らが外出する時は別に見張りとかは無いな。少しは信用されたってことか?
「ひとまず夜神さんが帰ってくるまでは各人がやれる事をやっておきましょう」
そして解散となった。うん、カナの言うことは聞かなかったことにして最初に考えたとおりヨツバ幹部の素性を洗ってみよう……。シュートは筋トレしに逃げた。パームは月に付いてPCのことを色々学んでいるようで、今も一緒に画面に向かっている。クロロはニラニラしている。畜生俺がオロオロしてることがばれてるな。見なかったことにしよう精神的にその方が楽だ。
うーん、カナの介入がじわじわと歴史を変えていってる様な気がするな……いや、それを言うなら俺らが、か? まさかキラが火口じゃないなんて事は無いとは思うが、一応あらゆるパターンを想定しておいた方が良さそうだな。あとで四人集めて話をしておこう。