meet again   作:海砂

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新人モヒカン女

 アタシの名前は桜木加奈子。皆はカナって呼んどる。

 

 関西に住んどったんやけど、高校生ん時に両親が事故で死んで、兄貴と一緒に関東の叔母さんとこ引き取られた。

 

 弥海砂てアイドルおるやん? あの子とちょっと境遇似とんのやけど、兄貴と二人で留守番してる時に強盗が家に来て、アタシ殺されそうになったん。したら兄貴がアタシ庇って相手のバタフライナイフ奪って、逆に刺し殺してしまってん……。これが、先々週の話や。

 

 で、兄貴は恐らく無罪になるやろうつーことで、センセーショナルに報道されよった。人殺しやけど妹の危機を救った正義の味方ーみたいな感じで。でもアタシは知っとる。兄貴が毎晩うなされてる事。自分のやったことが、たとえ正当防衛であっても許されることやないって、ずっと怯えてた。

 

 そして先週、兄貴は寝とる時に心臓麻痺で死んだ。マスコミはキラに裁かれた悲劇の英雄とか残された悲運の妹とかって、また余計なこと騒ぎ出した。アタシも昼夜問わず追いかけまわされよって、イラついたからボコにしたった記者も一人や二人やない。そんで今度は『兄妹そろって乱暴やから人殺す』みたいな感じで見事に手のひら返してバッシングされてん。まぁ、キラ捜査本部の人達はこんなワイドショーネタ、知らんやろな。キラに殺されたってトコ以外は。

 

「TVでみた印象と随分違いますね」

 

 叔母さんが娘欲しかったからって、メチャ可愛がってくれたからな。前はお嬢みたいな格好でおとなしく過ごしとった。親やないけど親不孝者やな、アタシ。ウチら兄妹引き取らんけりゃよかったって思っとるかもしれん。家出する時記者に追い回されんよう髪切ってコンタクトにして、ファッションも変えたんや。

 

「お嬢様からソフトモヒカンパンク少女ですか……これはまたすごい転身ですね」

 

 少女ゆうトシでもあらへん。もう二十歳超えてるからな。ええとこの短大通ってそこそこの企業に就職しとったけどこの騒ぎでドサクサにまぎれてクビにされたしな。もう怖いものあらへん。家にも兄貴のカタキとってくるつって手紙残してきた。むしろ厄介払いできてせいせいしとるんちゃうかな。

 

「それで、色々調べてこの捜査本部にたどり着いたんですか」

 

 最初は警視庁行ったけど、まるっきりとりおうてくれんでな。キラの調べやて取材受けた奴片っ端から調べて松井っつー兄さんにたどり着いたちゅーわけや。

 

「……ここにたどり着いただけでも、あなたの行動力と推理力には感嘆すべきところがあると思います」

 

 あんがと。でも褒められてもあんま嬉しくないわ。はよキラとっ捕まえんと、兄貴も成仏できんやろうし。

 

「その通りですね。それではカナさん、……名前は偽名でなくてよろしいですか?」

 

 ええやろ別に。週刊誌やら読む奴らはアタシの名前知ってるかもしらへんし、フルネームやなかったらキラも殺せんのやろ?

 

「はい。ではカナさんとお呼びさせていただきます。今から捜査本部のメンバーを紹介しますので」

 

 この、ずっとアタシと話しよったのが竜崎……L。んで手錠でくっついとんのが夜神月ちゅうてLとおんなじくらい頭いい人。アタシとおない年くらいかな? そしてそのお父さんの夜神総一郎さんとその愉快な仲間達。この人らは元刑事らしい。松井ちゅーのも夜神父の部下やったそうな。

 

 そして何や異色の四人組。アタシでも顔くらいは知っとる野球の高木選手……シュートさん。んでその彼女さんのパームさん、その先生? のウイングさんと国籍不明のクロロさん。何でこの人たち横文字名前なんやろーとは思ったけど、気にしないことにした。なんとなーくやけど、元刑事組と横文字組、二つに分かれてる雰囲気。別々に捜査しとるってわけでもないんやろうけど。

 

 それと、夜神月の彼女の弥海砂。うわっ雑誌とかで見るよりむっちゃ可愛いやん。何でこの人がここにおるのかは、後で二人のときに竜崎が説明してくれた。夜神月と弥海砂は前にキラやて疑われたことがあったんやと。せやから一緒におることで監視しとるんやて。でもアタシ的にはこの二人、全然怪しくないと思うんやけどなぁ。月は正統派イケメンやし、ミサミサはめっちゃ可愛いし、……って顔は関係ないんやけど、何つーか、雰囲気? みたいなんがとてもキラとは思えへん。何で疑われたんかまでは面倒やて説明してくれんかった。いけず。

 

 これで全部。なんか思ったより全然少ないけど、少数精鋭ちゅうことかな? アタシも力になれるようこれからバリバリ働いて、絶対にキラ捕まえたる。

 

 

「カナといったか?」

 

 クロロさんが近付いてきた。アタシこの人なんか苦手。捜査本部の中の誰かがキラやゆうたら絶対この人やと思う、怖い感じのする人や。

 

「そです。フツーにカナ呼んでくれてかまいまへんで、クロロさん」

 

「オレのこともクロロで構わない。キラはお前の兄の仇だといったな。もし目の前にキラがいたとしたら、どうする? その手で絞め殺すか?」

 

……何聞いてきとんのこの人。オレがキラやから絞め殺せって? まさかな。

 

「殺さんよ。それやらかしたらキラと同じになってまうやん。せやから、ふんじばって簀巻きにしてLに引き渡す。まあ、何発か殴ったりはするかも知れんけどな。クロロは何で捜査本部に入ったん?」

 

「面白そうだから……か。何より、竜崎の推理を目の前で見れる機会などそうそうないからな」

 

 確かに。Lは有名やけど、誰もその姿を見たことないってんで一部じゃ都市伝説にもなっとったくらいやからな。ぶっちゃけ今でもあの怪しい兄さんがLっちゅうのはまだ信じられひん。まあそのうち、推理してるとことか見たら信じるのかもしれんけど。

 

「これから……長くなるか短くなるかはわからないが、よろしく」

 

 クロロは笑顔で握手を求めてきた。あれ、この人笑うと結構可愛いな。怖い雰囲気まるでなくなった。

 

「よろしく、クロロ」

 

 手を握る。彼の手は死人かっちゅうくらい冷たかった。びっくりした。冷え性なんかな。

 

「あっ、俺らもよろしくな、カナちゃん」

 

 えーと、ウイングさんやったっけ? と、少し遅れてシュートさんとパームさんもアタシの傍によって来た。……このウイングさんちゅうんも気に食わん。なんやアタシのこと探ってくるような感じの目つきがやらしい。アタシが避けよったの気付いたんか、パームさんがアタシらの間に割り込んでくれた。

 

「女の子少なかったから嬉しいよ。よろしく、カナちゃん!」

 

「カナでええよ。アタシもパームて呼ぶし」

 

 後で知ったんやけど、パームシュートのバカップル、ウチより三個も下なんやて。それより下やっちゅう夜神月にも驚いたけどな。随分と若者の集う捜査本部なんやと、そんなところでも驚いた。まあ、そんなトコでなけりゃアタシ入れてくれんやったろうけど。

 

 これからこの人らと力合わせてキラ退治せなあかんねん。気合入れてくで、カナ!


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