meet again   作:海砂

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想定外の侵入者

 予想以上に原作どおりに展開は進んだ。

 

 シュートが死にそうだったのでパームと入れ替え、夜神月の監禁も始まり、クロロはデスノートを持って戻ってきた(渡してくれない所がちょっと気にかかるけど触らせてはくれた)

 

 夜神父の監禁も始まり、息子の方は所有権を放棄して、リュークは現在クロロに憑いている。

 

 新たなキラも動き出し、夜神父一世一代の大芝居も無事成功し、竜崎の建設したビルへの引越しがさっき終わったところだ。

 

「あー、荷物とか運んだりしてないとはいえ、何か疲れたなー」

 

 俺、パーム、シュート、クロロ(リューク憑き)の四人にワンフロアをもらえたが、その上の階はシュートの為だけに設置された筋トレ施設とブルペンだ。……なんか納得いかないけど、それでも一部屋が俺の家より広いので文句は言えない。気に食わないけど。くそう、俺の薄給の何割占めてたと思ってんだ、あの家の家賃(格安)。……まあいい、俺は大人だ。小さなことに目くじらは立てるまい。

 

 ついでに俺の家からゲームとか小説も持ってきてもらった。クロロがマリみての続き読みたいって言うからな。スールというシステムが非常に興味深いらしい。元の世界に戻ったら旅団員にやらせてみようとか言い出した。やめてくれ姉妹ならともかく兄弟だとなんだか極道の世界みたいだ。ちっとも萌えやしない。いや、マチとシズクがスールだったりしたらそれはそれで萌える……か? いやそんなことはどうでもいい。

 

 そんなこんなで、原作どおり忠実に、俺たちは今竜崎ビル(仮称)の一室にいるわけなんだが。異常に部屋が狭く感じるのはリュークが一緒にいるせいか。あっそうそう、ちゃんと弥の監禁も解けたので、今ここには四人と一匹が揃っている。

 

「……疲れるようなこと何もしてないじゃん……」

 

 やかましい。若人のお前さんらと違って俺は年長者だからな。もっと労わって敬え。要するにトシなんですよ。

 

「それで、ここからどうするんだ。夜神と弥は記憶を失った。奴らの記憶を取り戻させないためにも、もう一冊のレムのノートをオレたちが先に確保しなければならないんだろう?」

 

 はい。そうなんですがぶっちゃけ何も考えてなかったとです……。

 

「とりあえず夜神の腕時計からデスノートの切れ端を奪っておかないとな。それ以外は……火口が死ぬ時にデスノートを持っているやつに所有権が移るんだから、夜神にその瞬間に持たせていなければいい。つかそもそも触らせるだけで夜神に持たせなければ火口が死ぬこともない。それくらいは多分できるだろう。つかそれ以外に俺にはいい方法が思いつかん」

 

「それでいいんじゃないかな。で、火口がキラでしたってことで終了にしてしまえば、キラ事件は解決だろ?」

 

 まぁ……あの竜崎のことだからなんかおかしいとか言い始めるだろうけど、再びキラが現れなければ、レムが竜崎達を殺すこともない。なんかしっくりこないけどランディングの位置としてはこれ以外考えられないだろう。だよね?

 

「うん、それしかないと思う。デスノートと死神をどうするかってのが問題だけど、……クロロ考えてるんでしょ?」

 

「まあな……」

 

 怖い。クロロが怖い。まさか俺の名前書いたりしませんよね? つかあれクロロってそもそも俺のフルネーム知ってるんだっけか? 知らないよな? よしそれなら向こうの世界にお持ち帰りしようが破いて捨てようが俺の知ったこっちゃない。俺が殺されなければいいのだ、うん。

 

『……お前ら、どこまで知ってるんだ?』

 

「多分、全部知ってると思うよ。これは夜神たちには絶対内緒だけどな」

 

『そりゃ、余計なことは言わないけど……その代わり、たまにはリンゴくれよ?』

 

「はいはい」

 

 これで一旦解散となり、シュートとパームはブルペンに、クロロは自分の部屋に戻っていった。クロロ、リュークに余計なこと吹き込んでないだろうな……もし前の世界のこととか話してたら『面白!』とか言って行っちゃいそうだぞリューク。それはやはりH×Hの一読者としては少々いただけない。でも俺の命が関係ないなら二の次だ。一番は俺の命、だからな!

 

 そんなことを考えていると、突然非常ベルみたいなのが鳴り出した。え? 火事? そんなん知らんよ?

 オロオロしていると竜崎の放送が入った。全館放送みたいなもんか? まさかまたカメラとかで監視してないだろうな……。

 

『侵入者です。今から確保に移りますので、皆さんはそのまま現在地から動かないようにしてください』

 

 それから数分、侵入者は無事確保され、俺たちはその確認に行った。でも誰も知ってる人がいない。単なる泥棒だとしたら相当運の悪い泥棒だよなぁ。

 弥のときと同じような拘束をしてるから顔は良くわからないが、若い女性のようだ。ウエディじゃないぞ。ニポンジンっぽい。

 

『何故このビルに侵入したんですか』

 

 竜崎が尋問している。キラに関係ないとわかれば不法侵入で警察に突き出すつもりなんだろう。関係あったらそれこそこのまま監禁するはずだしな。

 

『アタシを捜査本部に入れてください!!』

 

 想定外の返事が返ってきた。つか、ここが捜査本部だってバレてる? 何で?

 

『何のことですか? ここは企業のオフィスビルですよ』

 

『嘘! 知ってるんやから! キラの捜査本部なんやろ!? アタシ絶対にキラ捕まえたいんや! 頼むけ入れて!!』

 

 この子はどうやら嘘は言っていないようだ。竜崎も思案している。

 

『……何故そう思うのですか?』

 

『キラのこと調べてる人が頻繁にここ出入りしとんの、あと尾けて確認したんや! 松井っちゅー人おるやろ? その兄さんや!!』

 

……おお、捜査本部の空気が見事に凍りついたぞ。全員が『松田の馬鹿……』って感じでマッツーを見ている。俺も一応そんな感じで見ておこう。マッツーに恨みはないけど周囲には流されるのが俺のポリシーだ。

 

『どうしてあなたはキラの捜査本部に入りたいのですか?』

 

『兄貴の仇や。アタシの兄貴キラに殺されよってん。アタシ守るために正当防衛で人殺してんけど、それやのにキラに殺された。せやから、アタシ絶対にキラ許さへん。絶対にこの手で捕まえたるんや!』

 

 一旦、竜崎は彼女との回線を切った。

 

「……どうしましょうか。主に松田さんの意見を聞いてみたいです」

 

 竜崎……相変わらずのいじめっ子気質だな。

 

「えっと、僕は入れてあげてもいいと思います」

 

「オレも賛成だな。復讐という動機は非常に厄介だが、とてつもない力を持つこともある」

 

 クロロは賛成か……。俺正直どっちでもいい。他の元刑事の面々は反対っぽいな。……まてよ。この子が捜査本部に入ったらそれだけでものっそい原作とずれるんじゃね? そもそも原作にこんな描写なかったぞ。あ、そうか、大きな事件じゃないから描かれなかったんだな。つまりここは反対しておくべきか。

 

「俺は反対だ。彼女が秘密を守るという保証はないし、何よりキラ側のスパイだという可能性も考えられる」

 

「僕は……彼女の素性を調べた上でだが……言っている事がすべて本当ならば入れてもいいと思う。人手不足は深刻な問題だし、キラを捕まえるために力になってくれると思う」

 

 ちょっ夜神、余計な事を……! お前さんが賛成したら竜崎がそっちに傾いちゃうだろうが!!

 

「私も夜神くんと同意見です。彼女の身辺調査は既にワタリに頼んでいます。そもそも、松田さんに比べればどんな人でも役に立つでしょう」

 

「竜崎、ひどい……」

 

 やばい、やばいぞ。賛成の方向に話が流れていってる。断固阻止せねば! ……でもいいアイデア思い浮かびませんボスケテ。

 

「ひとまずはワタリの調査が終了次第、もう一度会議を開きます。それまでは自由に過ごしていてください。今夜には結果が出るでしょうから」

 

 そういって、とりあえず解散となった。……やっべー超やべー。何とかして彼女を排除する方向に持っていかないと!

 

「原作との乖離? それがどうした」

 

 クロロは俺の言うこと聞いてくれんとです……むしろ未来がわからないほうが面白いとか言いよるとです……。

 

「確かに未来が変わるのは困るけど、だからってどうしたらいいのかオレにはわかんないよ」

 

 シュートは役に立たんとです……お前さんは球投げ込んでいるといいよ。

 

「反対するだけの明確な意見が出ないよね……ワタリの調査で相違点が見付かりさえすればそこを突けるんだけど、元々竜崎は命がけでキラを追いかける人間であれば経歴能力問わずに受け入れる方向の人だし……」

 

 最後の頼みの綱のパームもいいアイデアが浮かばんらしいとです……。困った……実に困った……。

 

 

 うんうんうなっていた俺の努力もむなしく、桜木加奈子という彼女は無事捜査本部入りを果たしましたとさ、めでたしめでたし。……って全然めでたくねぇっ!!


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