meet again 作:海砂
「……というわけで、ほぼ原作どおりに話は進んだわ」
……俺の神の子発言は撤回されたわけですかそうですか。しかしデスノートで殺せない、っつーコメントはグッジョブだ。まぁ確実ってわけじゃないが、あいつの性格上、実際に殺せるかどうか試すのは、殺してもいい状況にならないとやらないだろうしな。その状況に持っていかないようにするのが、俺らに出来るとりあえずのこと、だ。
「最後のビデオが届くのが今日の夕方。とりあえずそれまではダラダラしとくか」
「オレの見ている限り、ウイングはいつでもダラダラしているようだが」
余計なこと言うな馬鹿! あーあ、ほら、二人が白い目で俺を見てるじゃねーか。仕方ないだろ、実際すること無いんだから。
「ただ、一個だけ問題が出てきたんだけど」
ん? 問題っつっても大したことないだろ。言ってみ。
「夜神月は、LをTVに強行出演させるつもりだ」
飲みかけていたカフェオレ吹いた。ちょっとそれ大問題じゃねーか!!
「ということは、今日届くビデオには……」
「今日中にLをTVで生出演させろ、と録画してあるはずだ」
えっ何でそんなことに? お前さんら余計なこと言ったのか?
「特に原作に沿わないようなことは……私たちのことを除いては言ってないわ。でも、夜神月本人が言い出して、キラが望んでいることとしてLを表に引きずり出せ、と」
何でそうなるんだよ! あっでも、Lのことだから誰か代理を立てるんだな、そうに違いない。そりゃそうだ、また死刑囚とか連れてきて座らせれば問題は無いよな、うん。
一瞬あせったが何も問題は無いと思い直し、落ち着いたところでLからの呼び出しがかかった。
「第二のキラは、あくまでも私にTV出演しろと要請しています」
うんうん、そうだろうね。で、身代わり立てるんでしょ?
「その通りです。ですが、私ではないとすぐにばれるような者を代理に立てるわけにはいきません」
うんうん、じゃあLっぽい探偵っぽい死刑囚を連れてくるんだね、きっと。
「そこで、代理にはウイングさんになってもらうことにします」
……うんうん、ウイングさんがね……へ?
「ウイングさんでしたら、私並の推理力を見せて、第二のキラにLであると信じ込ませることができると思います」
ちょっと待ってちょっと待って。その場合、俺が名前書かれて心臓麻痺になっちゃうんじゃないの?
「そうなりますね」
そうなりますねじゃねーよ! 何でそこで俺なんだよ! もっと他に適任者がいるだろーが!!
「クロロさんから伺いました。キラの力で殺せない者が世界に四人存在すると。その内の一人はウイングさん、あなたですね」
ちっげーよ! 何じゃそのデタラメな情報は! つーかクロロ、お前さん、いつの間に何吹き込んじゃってくれてるんだよ!
「お前が女の尻がどうこうと涎をたらしながら寝言言っている隙に、少しな」
「これからはその四人……ウイングさん、パームさん、シュートさん、クロロさんには大いに活躍してもらうことになると思います。そして手始めに、Lとして最も相応しい……というのはかなり言いすぎですが、四人の中ではウイングさんが適役であると判断しました」
嫌だー!! 死なないって限らないじゃねーかよ! 俺逃げる絶対逃げる絶対出ない!!
「クロロさんは意地が悪いので、知っていることを全て話してはくれませんでした。ウイングさんは話してくれますか?」
話していいのか!? いや駄目だ。大幅に原作が狂う。……あれ、でもここで夜神月と弥海砂の名前と、それにデスノートの存在をばらしちゃえば即タイーホで俺助かる? ……言っちゃおうかな。そう思った瞬間にシュートに殴られました痛いです。
「ミサちゃんを売るような真似したら、今度は本気で殴るよ」
プロスポーツ選手に本気で殴られたらそれだけで俺死ねますよ。つーか何だよ! お前さん、それじゃ俺が死んでもいいっつーのか!!
「L、俺が死なない確証はない。それでも俺に出演させるのか?」
悩め悩むがいい! 宇生田さんが死んだ時お前さんは大いに苦しんだはずだ、さあその慈悲の心を俺に対しても発揮するのだ!!
「はい」
即答かよ!! クロロがフ……とか笑いながらこちらを眺めている。面白がってるなコイツ人の命だと思って!
「クロロさんの言葉によると、あなた方四人は殺せないわけではなく、少なくとも第二のキラには殺せない、ということでした。もちろん名前は出しません。つまりウイングさんが殺される可能性は低い。もし殺されたのなら、それは確実にウイングさんのことを知っている人物……私は、その時点で夜神月を黒と断定します」
ちょっと待ってよ何で俺だけ命かけなきゃいかんとですか?
「この捜査本部に来た以上、命の覚悟は誰もがしている。ウイング、お前もそうではないのか?」
そうじゃないよ死ぬ覚悟なんて出来てないし、まだクリアしてないエロゲあるしさぁ……ちょっと俺捜査本部抜けて……オウチカエルー!
「ウイングさんが捜査本部を抜ける場合、ご自宅にある大切な品は全て処分させて頂きます。もちろん、こちらに持ち込まれたものも」
えーとコレ脅しですか? 俺に山本五十六とかマリア・タチバナとか保科智子とかを諦めろってわけですか!? 最近のゲームならともかく昔のヤツは今じゃ手に入りにくいとですよグッズとか!! 俺の命より大事な……いやこの場合本当に命がかかってるわけですが……ギャルゲや関連商品の数々を勝手に捨てると、お前さんはおっしゃるとですね!!
「私には価値のないものばかりですから」
かーっ! コレだから最近の若者は!! 古きよきあの時代よもう一度! 同級生とかときメモでときめいた青春時代を送ったことのないお前さんらにあの希少価値がわかってたまるものか!!
「で、出演して頂けるのでしょうか?」
……『いのちだいじに』が、俺のポリシーだったわけなんですが。何故にどうしてこんなことになったの教えてママン……。
はいはいわかりました。その代わり俺のコレクションの数々に絶対手は出さないで下さいね? お願いしますよ? ついでに金かけてしっかり保管しといてくださいね?
「それはお約束します。それに、今後はウイングさん一人だけにこんな危険なことはさせないと言う事も、あわせてお約束いたします」
嘘付くなよ! 絶対だぞ!? 嘘付いたら本気でハリセンボン飲ませるからな!!
こうして涙目の俺は、TV局に連れられてゆくとでした。悲しそうな瞳で見てやるぅッ!!
「クロロさん、第二のキラにウイングさんを殺せないというのは確実なんでしょうね?」
「ああ。不確実だったらこんな真似はしてないさ」
命大事にしないクロロによって、俺は売られてゆくとでした……。
次回、天国は本当にあった! 天使のおねいさんとラブラブララバイ編、お楽しみに!(嘘です嘘ですソンナノヤダヤダシニタクナイー!!)