meet again   作:海砂

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捜査本部の完成

 クロロ=ルシルフル……念の為にワタリに調べさせたところ、やはり地球上に存在した形跡はないようだった。自分で消したか元々無いのかまでは定かではない。

 ああ、これ以上捜査本部に部外者を入れないよう、三人にはきつく言っておかなければ……。

 それにしてもあの手刀、的確に頚椎を狙ってきた。黒髪ではあったけれどおそらく日本人ではないだろう。……軍人か傭兵か殺し屋か、向けられた殺気からしても、おそらくはそんな経歴の持ち主に違いない。平和ボケした日本ではまず見ないタイプの人間だ。

 しかしキラに関しては的確な推理をその場でやってのけた。……放っておくわけにもいかないだろう。このまま、捜査本部でともに監視すべきか。

 だが、彼がキラあるいはその関係者であった場合……この行動に何の得がある? 思想がキラに近い人間など山のようにいる。その中で私に接触し、なおかつ自分を怪しませる……キラであればそんなことは絶対にしないだろう。限りなく白に近いグレー。私の中で、彼はそう位置づけられた。

 

「局長、お疲れ様です」

 

 考え事をしている間に、夜神さんが警察庁から戻ってきた。さくらTVで放映されたキラの要求に対する返答……間違いなく、私を差し出すことになるでしょうけど。

 

「もしもし、ウイングさんですか? 三人を連れてこちらにいらしてください。キラについて会議を始めます」

 

 すぐに四人が姿を現す。これでこの捜査本部の人間は全てこの部屋に集まった。

 

 クロロを皆に紹介する。警察出身の三人は不審がっていたが、当のクロロ本人は平然としていた。色眼鏡で見られることに慣れているようだ。

 

「思っていた通りだ、竜崎……各国首脳が勝手に話し合い、L……本物のLをテレビに出演させろと言ってきた……」

 

……警察ではなく私がキラを挑発し捕まえると言っているのだから。夜神さんは納得がいかないようだが、これは当然の選択だ。

 

「まあ、まだ三日あります。私だって死にたくありません。……それに……キラに殺されるよりキラに便乗した者に殺されるのはより不愉快です」

 

 警察側に動揺が走る。クロロを含む四人は当然のような顔をしている。全員がそう思っているのか、それとも彼が先ほど立てた推理を信じているのか……いずれにせよ、動揺は見られない。

 

「クロロさん、先ほどの推理を皆さんにも紹介してもらえませんか? 私の考えも同じです」

 

 彼の推理に少しだけフォローを入れるが、根幹となる考えはほぼ同じ……第二の、キラ。

 

「竜崎……第二のキラという可能性は一体どのくらい……?」

 

「今回は70%以上です」

 

 頷くウイングとパーム、聞き入るシュート、さも当然といわんばかりのクロロ、そして動揺する警察出身の面々……能力的には、この四人の方が少し勝る……だろうか。

 

 説明を終えたあと、夜神さんに息子、夜神月の捜査協力を要請する。ただし、今回のキラが偽物である可能性を彼には伏せたままで……。夜神月ならば確実に捜査本部にやってくる。そして何も知らせずにビデオを見せて、第二のキラという推理をするかどうか……したところで現状維持、しなければ夜神月がキラの可能性が高まる。どちらに転んでもこちらには有利に動く。予想外の人物が現れたとはいえ、まだ現時点で最も疑わしいのは夜神月なのだから。

 

 夜神さんが電話をかけ、松田さんをロビーに向かわせる。やがて夜神月が姿を現した。ウイングのことは既に知っているだろうから今更紹介する必要も無いが、あとの三人は……。

 

「桂木さん!?」

 

……やはり桂木……パームと夜神月は既に接触していた。両方合わせてキラという可能性も……まだ完全には捨てられない。だが、それならば夜神月のこの反応は不可解だ。知らないフリをするか、あるいは普通に知人を装えばいい。つまり夜神月にとって、パームはここにいるはずのない人物……どちらが、キラだ? あるいは……。

 

「……久しぶり、夜神くん。私もこの捜査本部の一員なの。悪いけど、今後は私のことはパームと呼んで欲しい。偽名が必要な理由、夜神くんならわかってくれると思うけど」

 

「あ、ああ……」

 

「ありがとう、夜神くん」

 

「いや、キラを捕まえたい気持ちは皆一緒だよ」

 

 各人とその偽名を紹介する。夜神月は朝日月……だが正直、第二のキラ相手に偽名が何処まで通用するか……それは、まだわからない。

 夜神月に、キラに関する捜査資料を見せる。そして第二のキラのビデオ。夜神月、見ている今は何も言ってこない。見終わってから、どういった反応を示してくるか。

 

「どうですか月くん、何かわかりましたか?」

 

「わざとらしいな、竜崎……」

 

 クロロが呟く。……ええ、そりゃそうでしょう、わざとですから。これ以上余計なことを言いそうだったら出て行ってもらおうと考えていたけれど、彼はそれきり口をつぐんでしまった。

 

「キラの能力を持った人間は一人じゃないかもしれない」

 

 同じ、推理。夜神さんが心なしか嬉しそうな顔をしている。だが、夜神月の疑いが完全に晴れたわけではない。むしろ、推理が『適切すぎる』気がするのは、私の穿ち過ぎだろうか……。

 

「わかっていて僕を試したのか!?」

 

 その通りです……が、間違ってもそう言う訳にはいかない。

 

「試したのではありません」

 

 これで三人。私とクロロと夜神月。三人が同じ推理をした。ほぼ間違いなく、第二のキラは存在する!!

 

 第二のキラに対して……キラはひとまずおいておいて、何か対処を考えなければならない。まずはキラのフリをして第二のキラを止めること。キラのフリ……月くんにお願いすれば面白い結果が出そうな気がする……決まりだ。

 

 そして、今夜の7時台の各局の番組で、夜神月に作らせた偽キラの原稿を放映した。これに第二のキラがかかってくれればよいのだが……ひとまずは、反応を待つしかない。何らかの、反応を。


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