meet again   作:海砂

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疑惑と疑問と嘘

 予想通りというか……成瀬拓はそれぞれの部屋に取り付けていたカメラと盗聴器を全て見つけ出して、丁寧に取り外した。これは間違いなく、私達に聞かれてはまずい内容の会話がなされていたとしか……だが、今更そんなわざわざ私に疑われるような真似をするか? まさか、プライベートだから、なんてことはないだろうし……いや、ありうるか、昨晩の高木蹴人と桂木裕美のことから見ても。

 三人に、捜査本部と言う名の私の部屋に来てもらった。心なしか成瀬拓は憔悴し、あとの二人はツヤッツヤのお肌をしている。どう見ても睡眠不足である、成瀬拓。

 

「ご足労ありがとうございます」

 

「いや、足労ってほどのもんじゃねぇし。それで竜崎、何の用だ? 数日間はほっといてくれるんじゃなかったのか?」

 

「はい、そのつもりでしたがいくつかお伺いしたいことがありまして」

 

 まずは、この三人の関係。確かに高校生の高木と桂木、その社会科教師であった成瀬、接点はある。だが、3年の夏頃を境にして、急速にこの三人の接触が増えた……何かがあったということか、この三人の間で。

 

「まず最初に、パームさんとシュートさんはクラスも違ったのに、どうやって知り合って、お付き合いを始めたのでしょう」

 

「私が甲子園出場したシュートに一目ぼれして、告白しました」

 

 言葉だけ聞けば筋は通る。

 

「しかし私が調べたところ、告白はシュートさんの方からだと伺っていますが」

 

「それ以前から、パームとは知り合いでした。告白はオレの方からです。甲子園に出場するっていう念願を果たせたら、告白しようと思って……一方的な片思いでした」

 

「ふむ、結局それは両思いで、現在こうしてお付き合いしているというわけですね。うらやましい限りです」

 

 成瀬拓は……やはり私が、夜神月ほどではないにせよ彼らを疑っていること、気付いているようですね。

 

「パーム、暴露するぞ。シュートの前にパームが片思いしていた相手が俺だ。だから、元々パームとはそれなりに仲が良かったし、それをきっかけにシュートとも仲良くなった。卒業してからはたまに電話したりメシ食いに行く程度で、そんなに付き合いはなかったが、この二人の実力は俺が保証する。二人ともそれなりに頭が切れるし、何よりキラと対峙するだけの根性と気概を持っている。……それともう一つ言っておく。俺たちは断じてキラじゃない。カメラや盗聴器、そういったものは今後一切ないようにしてもらいたい。疑われているのは自覚しているが、プライバシーの問題もある」

 

 自分から言い出した、か。確かに気付いていることを表に出せば、今後カメラなどは仕掛けにくくなる。もし仕掛けても、全て取り外されてしまうだろう。……夜神月に関しては、まだ触れない方が良いか。

 

「わかりました。もう疑ったりするような真似はしませんので、是非、ご協力よろしくお願いします。……ひとまず、聞きたかったのはそれだけです。ワタリ、朝日さん達にも入ってもらってください」

 

 日本捜査本部のメンバーが入ってきて、改めて紹介する。朝日、松井、相原、宇生村……模地さんはここにはいない。今後のことも考え、まだその存在は伏せていた方がいいだろう……。

 

「では始めましょう。まず南空ナオミの動向についてですが……ああ、彼女についてはまだ説明していませんでしたね」

 

 三人に南空ナオミとFBIのことを説明し、それから捜査状況……といっても、未だ南空ナオミの消息はつかめていないが……について、話し合う。

 

「竜崎!」

 

「どうした?」

 

 話をしている最中に、ワタリが部屋に入ってきた。よほどのことがなければ、あるいは私が呼ばなければ入ってこないように言ってある。何かが起こったのか。

 

「さくらTVを……大変なことに」

 

 ワタリがTVを付け、チャンネルをさくらTVに変える。そこでは、キラからのメッセージと題した番組が、放映されていた。


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