meet again 作:海砂
ぽっぺけぺっぺっぱっぱっぱー。
今日ほどこんなアホな制約を作るんじゃなかったと思ったことはないよ。
「今の音、どこから聞こえた?」
「わからん、多分外じゃないか? お前たちはここにいろ。何かあったらすぐに知らせてくれ」
ボノレノフとフランクリンがいぶかしんで周囲を探索に行く。
私は具現化したとうめいマントを、彼らの目が届かない間に緋の眼にかぶせた。そして、ウイングが緋の眼をコピーする。これで一時間程度は二人をだませる。……その間、ヒソカは面白そうに私達を眺めていた。
「ヒソカ」
ピエロを呼ぶ。忌々しいが私たちの無事脱出にはコイツの助力が不可欠だ。
「なんだい♦」
「協力して欲しい。私達はこれを持ってここから抜け出す。その礼に、私の知っている団長とクラピカの動向を教える。団長と戦うためにも知っていて損はない情報よ」
ニィっと気持ち悪く笑う。ああ、出来るだけコイツとは関わりたくないのに……けど、占いに背くわけにはいかない。
「……例の、念能力じゃない予知能力ってヤツだね? 実際の能力はそれ……物体を見えなくする布か何かの具現化、かな?」
ウイングが私の気持ちを汲み取ってくれたのか、代わりに交渉に入ってくれた。これ以上話を続けたら変態がうつる。
「悪いけど早速本題に入らせてもらう。気付いてると思うが、お前さんの占いの結果も目的も俺達は知っている。そして、もうすぐ……クラピカが団長を捕獲するのに成功する。旅団全員がここに戻り、その監視を人質となったゴンとキルアがする。けど、お前さんが団長と戦うにはすでにその時点で抜け出していることがベストだ。だが、バレれば団長は殺される。イルミに助力を求めてくれ。うまく抜け出すのを手伝ってくれるだろう、彼の能力からしても。抜け出した後はリンゴーン空港に向かうといい。そこに団長達が居る」
少し考えて、ヒソカは本当に面白そうに、不気味に、楽しそうに、笑った。
「予知……キミのモノマネだね? どうやったかは知らないけど、キミも占いか、それに類する能力をモノマネ出来る……そうだろ?」
「半分正解、半分不正解だ。これ以上は言えない。俺の知人、イルミの弟がヨークシンにいるから、ボノレノフ達の意識を逸らすのに手伝ってもらう。お前さんと一緒に、俺たちも脱出するつもりだ。タイミングはノブナガ達からフランクリンかボノレノフに連絡が入った後、皆がアジトに戻る前。俺の計算が正しければ、連絡はあと5分以内には入るだろう……どうだ、手伝ってもらえるか?」
「勿論勿論♥ それだけの情報をもらえればボクとしても動きやすい♦」
これでヒソカとの共同戦線を張ることは出来た。すぐに、フランクリンたちが戻ってくる。
「何か見つかった?」
「いや、何も。……何だったんだろうな、あの間抜けな音は」
……自分でそう思っていても、他人にマヌケ言われるとなんだか腹が立つ。……いやいくらなんでも、だからってハリセン出して二人を殴ったりしないよ? いくら私でもさ、そこまで馬鹿じゃない。
私が緋の眼を抱え、ウイングはミルキにメールを送る。ヒソカはイルミにメールを送っている様子だ。シュートは……問題ない、そう言うように頷いた。
フランクリンのケータイが鳴る。……きた! 千載一遇のチャンス!
「頭のいいヤロウだ」
「手ごわいな」
……私達は、その会話を何事もないように聞き流す。イルミとミルキが到着するまで。
「私達はメンバーではないから、ここに残る必要は無いですよね?」
用心のために聞いておこう。あとで探されても困るしね。
「ああ、問題ないだろう。だが、人質が来てからだと出て行くのは難しいかもしれないぞ」
「そうですね……じゃあ、その前に」
私の言葉を遮る様に、外から激しい破壊音が響いた。
「!?」
続いて反対方向から、カタンと何かの倒れるような音。
「……誰かいるな」
「別れて調べましょう、手伝います。私たちは小さな音のほうへ向かいます。申し訳ないですが、轟音の方を旅団の人にお任せしていいですか?」
「ああ。……ヒソカ、念の為にお前はそいつらと一緒に行け」
「了解♦」
そうして私達はうまく二手に別れる。音のした方に向かうと、そこにはイルミが立っていた。
「や、久しぶり」
「お久しぶりです……といいたいところですが時間がありません、さっさと入れ替わってください」
イルミはヒソカに針を刺して、その姿を変える……末弟の、カルトに。そして自分はヒソカの姿へと変貌する。相変わらず惚れ惚れするほどの能力だな。
「じゃあ、私達は行きます。協力ありがとうございます」
「いいよ、代金はヒソカからもらっておくから。じゃ」
まず私たちが抜け出して、最後にヒソカが抜ける。ヒソカの姿は見られても問題がない。私達は外に出てその場に隠れて絶でやり過ごし、ヒソカだけが飛び出して逃げる……窓から、フランクリンとボノレノフが覗いていた。原作どおりなら、追いはしないはず……!
やがて、二人は窓から離れた。元の部屋に戻ったんだろう。私たちも動き出そう。気配を消したまま……アジトから、離れる。
幸いなことに、雨が気配をより消してくれたのだろう。自宅に到着するまで、絶を使いながら周囲の警戒は怠らず……そして無事に着くことができた。
「はぁ~……」
全員で思いっきりため息をつく。ひとまず、命がけの緋の眼奪取作戦は成功といえるだろう。とうめいマントはすでに消え、私の手の中では緋の眼が赤く鈍い輝きを放っている。
「ところでさ……コレ、どうすんの?」
「知らん」
「とりあえず寝たい」
緋の眼を放り出して、私は自室へと戻った。昨日今日と、本当に疲れた……。
ウイングじゃないけど、今はとりあえず無事だったという嬉しい事実を噛みしめてぐっすり眠りたい。
なんだか随分久しぶりの様な気がするベッドの感触に、私はあっという間に眠りについてしまった。よほど疲れていたのだろう……主に、精神的に。