meet again   作:海砂

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狩猟

 昨日は実に充実した夜だった。コルトピとフィンクスは、まだ故郷にいた幼い頃に、野球で(人数が少ないことが多く、主に三角ベースだったらしいが)よく遊んでいたらしい。特にコルトピは球技としての野球に興味があるらしく、この世界にあるいくつかの国のプロ野球機構のことについて教えてくれた。基本的なルールは前の世界と変わらないみたいだ。

 そういえばこの世界に来てから、こんなに野球のことを話したのは初めてだ。キルアも自分でプレイしたことがあったわけじゃないし、ゴンにいたっては問題外。

 この世界には変化球があまり無いらしいので、オレは持ち前の知識で握り方を教え、実際に投げて見せた。コルトピは手が小さいから無理だったけど、フィンクスは割りとすぐに覚えて、オレよりもスピードのあるフォークをあっさりと投げていた。……お、オレの方が落差はあるもん! 負けてないもん!! 落差ありすぎで捕れるキャッチャーいなかったんだけどな、チームに。

 

「おはよう、シュート。よく眠れた?」

 

 パームが声をかけてくる。……ウイングが向こうで一人ガクブルしているのは何故だろう。まあ、いつものことなのでほうっておこう。

 

「うん、気分いい。こんなに気分よく目が覚めたのって、久しぶりだ」

 

 外は曇り空だがオレの心は青天のヘキヘキ。……あれ、意味違うっけ? 本日は晴天なりー!

 

「そりゃ良かった。今後について団長達と話するから一緒においで。……くれぐれも余計なことは言わないようにね」

 

 後半は小さな声でこっそりと。確か、団長が本家の占いを披露するんだったよな。……了解!

 

『逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ……』とかつぶやいているウイングを二人で引きずって、オレたちも旅団の輪の中に入る。ちょうど、ノブナガを占い終えたところらしい。

 さらにシズクを占っている。どうやら、旅団の半分が死ぬらしい……、そして、その一人がシズク。

 団長は、予言を回避する為に本拠地に戻ろうと、ノブナガを説得している。オレ達は、ただ黙ってそのやり取りを聞いていた。

 

……外から雨音がする。どうやら降り出したらしい。

 

「これから残りのメンバーも占う」

 

 フェイタン・フィンクス・コルトピは生年月日が分からないので占えない。団長はその後オレ達にも話を持ちかけてきたが、三人ともに生年月日を知らない、で通した。そもそも、この世界に来る前の生年月日だから……オレやパームはギリギリセーフに見えるとしても、ウイングは明らかにアウトだ。年齢詐称もはなはだしい。そこからウイングの能力がばれる恐れもある。……二人はきっとそんなところまで事前に考えてるんだろうな、やっぱり。

 

 ヒソカの占いをパクが見て、全員に回す。……内容は、ヒソカの裏切りを示唆するものだった。

 

 ノブナガがキレてヒソカに斬りかかろうとするのを、……多分、団長が止めた。

 

「少し黙れ」

 

 そして、ヒソカに質問をする。そのほとんどは『言えない』というだけの回答だったけど……それで、団長は何か考えこんでいるようだ。

 

「団長、少しいいですか?」

 

 沈黙が場を支配する中、パームが言葉を発した。

 

「何だ?」

 

「ヒソカの予言に気になる点があります。……物々交換とあるにもかかわらず、赤目の客は秘密を攫って行った……この文章だけで読むと交換が成立していません。これは何らかの暗示じゃないでしょうか」

 

「……」

 

 パームの言葉を受け、団長は予言の解読内容を示し始める。その間、パームがヒソカの方を見てニヤリと笑った。……やっぱこの二人怖い。ある意味お似合いかもしれない。

 

 鎖野郎……クラピカについてと、今後どうするかについて。ヒソカの予言の中にあった懐郷病……ホームシックという言葉が旅団の行く先を決定付けた。

 

「残ろう」

 

 来週の行動を共にする班分けをする。メンバーでないオレ達はもちろん、それからは除外されている。

 

「オレ達はここに残っていてもいいですか?」

 

 この方向で、間違いない……はず。少し不安になってウイングとパームを見た。頷いている。良かった、間違ってないみたいだ。

 

「ああ、構わない……ただ、ここに残る三人と行動はともにして、出て行く時は誰かに伝えてから出て行ってくれ。念のため、な」

 

 マチが眉をひそめてオレを見ている。……何かしくじったか? いや、ミスはしてない……はず!

 

「団長、気になることが二つあるんだけど」

 

 ひとつは、ゴンとキルアのこと。クラピカとの接点があるかもしれない、と。もう一つは……このアジトについて、嫌な予感がする、と。良かった、オレに対して向けられた疑念ではなかったようだ。

 その言葉を受けて、コルトピがアジトのダミーを増やす。かなり密集したビル群になった。……すげー能力だな。ウイングのモノマネとは大違いだ。しかも円の役割まで果たすなんて。

 

 そして、鎖野郎……クラピカを狩りに行くようだ。コルトピが、本物の緋の眼を触ればニセモノの場所が分かるらしいので、お宝の山の中から探すのを一緒に手伝い、ウイングがそれを見つけ出してコルトピに渡す。

 

「ホテル・ベーチタクル……!」

 

 クラピカは大丈夫なんだろうか。……いや、ウイングとパームは全員無事だと言っていた。大丈夫だ、オレは二人を信じる!

 

 ボノレノフ、フランクリン、ヒソカ以外の全員が出て行った。多分、今が緋の眼を盗んで逃げ出すチャンスなんだろう。けれど、オレにできることは正直、何もない。二人を信じて、いつでも脱出できるよう体力を蓄えておくだけだ。……もし、こいつらが追ってきても、逃げられるだけの体力を。


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