meet again 作:海砂
曇り空の隙間から差し込む太陽の光が目に痛い。さらに非常に頭が痛いそしてキモチワルイ。これはあれですね久しぶりの二日酔いというヤツですね間違いない。
「あ~……」
アクビをしながら周囲を見渡す。最初に目覚めたのは俺のようだ。他は皆死んでる。俺も半分以上死んでるけど、主に脳。
「……昨日……」
はっちゃけすぎたか? 半分くらい覚えてないがノブナガに殺されかけた様な気がする。とりあえずチョンマゲをみつあみにしておこう。爆睡してるからばれないだろ。
記憶を失っている間に余計なこと口走ってないかだけが心配だが……素面のパームが突っ込んで止めてくれていると信じよう。そういや後頭部も痛いぞ? 触ってみたらコブになっていた。パームめ。
「目が覚めたか?」
突然に声をかけられてビックリして振り返る。団長が、普通に座って俺を見つめていた。いつの間に。
「オハヨウゴザイマス キノウハ オタノシミデシタネ」
「ああ……お前とはサシで話してみたいと思っていたよ、DEATH NOTEの原作者」
ナゼ ソレヲ シッテルデスカ? オンドゥルルラギッタンディスカー!?
「先に言っときますけど、俺ノート具現化したり出来ませんよ? あんな能力、どんだけ制約があったって作れるもんじゃないですから」
「ああ、それは昨日聞いた……。やっぱり昨晩のことは覚えてなかったんだな。素面のお前と話してみたかったんだ」
シラフノボクニ ナンノヨウデスカ? ……うおおおお今すぐ全力で逃げ出してぇぇぇぇ!
「死神の存在、死者の行き着く所……今のオレには興味のあることばかりだ。あの話はお前の持論か? 死者は無に還るという」
「まぁ、天国とか地獄は所詮人間が想像した物にすぎませんから。どういう結末が待っているのかは、死んだことの無い俺にはわかりません。ただ、神という存在が勝手に創造した『正義』というルールに従って死後に信賞必罰があるのだとしたら、俺には納得いかない……それは事実です」
とりあえずデスノの話に沿って、ついでに俺の持論を展開しておいた。別に今、危機じゃないよね? 俺のラブリーゴーストライターちゃん信じるよ?
「……ふ、やはり面白い。独特の考え方を持っているようだな。持っている能力……お前の隠された能力、不要ならばオレが盗んでやるがどうする? そうすれば少なくとも、オーラが増えないというお前の制約は外れるだろう」
「いや、お断りします。俺自身、その能力に興味がありますし、俺が生まれ持っていたものだとしたら、それに何か意味があるのかもしれない……無いかもしれないですけどね。それを見つけ出すのも俺に与えられた天命だと思って生きていきますよ」
盗まれてたまるかってんだよ! 前の世界に旅団行っちゃっても俺知らね。つーか冷静に考えたら逃避願望なんて持たないだろうこの人。……というか、俺が能力発動しないと盗めないんじゃなかったっけ? モノマネとカンチガイされてる? あれー?
「わかった。お前がそう考えるのならオレは何も言わない。唯一つ……」
ナ、ナンディスカ? これ以上俺の少ない容量に負荷かけんでください、そろそろオーバーヒートでフリーズします。
「DEATH NOTE……もう、続きは書かないのか?」
……えーと、もしかして団長さんもデスノのファンですか? ……恐るべしDEATH NOTEの威力。蜘蛛を虜にするのは俺らじゃなくてデスノートだったのか。
「続き、という意味でなら書くつもりは無いですが……」
と前置きした上で、映画の『L change the world』のストーリーをかいつまんで話す。団長は興味深そうに頷いて、俺のつたない話に聞き入ってくれた。
「……なるほど、Lという一見無情に思える存在の人間性を……側面を描くというわけか。しかも死が決定した後、たった数日間の短くて長いストーリー……お前には物語を紡ぐ才能があるんだろうな。うらやましいよ。オレはいつも読む側の立場だったからな」
……一応クロロに礼はいうけれど、その賛辞が俺に向けられたものでないことは重々承知している。俺だって読む側の人間だ。クロロの気持ちが、今だけはよく分かる。
「面白いね。団長、この才能だけでもこの子供、生かしておく価値がある思うよ」
いつの間にかフェイタンが傍にたたずんでいた。気付かなかった。……俺ってば、本当にヘタレなのね。
「ああ、オレもそう思う。ウイング、何か危険が迫るようなことがあればオレ達に連絡を取れ。無条件で助けに行こう」
「……ありがとうございます。まぁ、自分の力量は自覚しているんで、そんな危険なところに足を突っ込む気はないですけどね」
「ふふ、パームと同じようなことを言うんだな。オレ達に関わっている時点で危険だとは思わないのか? A級首の集団を目の前にして」
だって危険な橋渡らないとダメだってオレのラブリー天使が言ってるんですよー! とは言えないので。
「俺もそれなりに人を見る目はあるつもりです。あなた達は、人を殺すことに何のためらいも持たないけれど、目的も理由もメリットもなしに虐殺を楽しむ人たちじゃない……まあ、タイマンのケンカとかは別ですけど、俺達みたいなヘボにケンカ売るほど皆さん弱くないですし。俺も、自分に関わりのない人間の死に関してそれほど感傷的になる方ではないので、気持ちは良くわかります。ただ、あとの二人は……多分、常識的な範囲で、人の死を忌む傾向がありますから……もし万が一奴らと旅団が敵対するようなことになれば、俺はあらゆる手段を持って二人を守ります。それこそどんな手を使ってでも、ね」
やべっ、言い過ぎたか? 二人が黙っちゃったぞ。
「……本当に、その独自の考えと冷静な観察眼……うちに欲しいくらいだ、なあフェイタン」
「戦闘では役に立たないけど戦略家としてなら十分意味あるね。情報分析力もかなりのものよ」
いーやーだー! そんな能力ないですないです俺は小市民なんだってば、ほっといてようわああああああん!
「悲しいけど、これ戦争なのよね。明らかに弱い私達がメンバーに加わるメリット、少なくとも私達の方にはまだ感じられません……今は、まだ。特に、鎖野郎のことがよく分かっていない現状では」
俺は今日ほどパームが神様に見えた日はないよ!! うわぁん一人で怖かったヨー!
「……そうだな。最低限の力を身につけたら……その時はまた、誘うかもしれん」
「私も、その時はまた考えますよ。でも、そこまで私たちのことを買って下さってありがとうございます。それは、素直に嬉しいです」
「いつか、仲間になれるといいね」
シャルとマチが起き出してきた。多分、そろそろ全員が目覚める頃だろう。
「オレ達は今日の競売の宝を奪ったら本拠地に帰る予定だが……別にお前たちはメンバーではないし、変なモノさえ連れてこなければ好きにここに出入りしてくれて構わない。いくらなんでもそのくらいの力はあるだろう? もしホームに来たいのなら歓迎しよう」
行かないもん! ……あ、でもこれで、いつここを抜け出しても別に追われたり咎められたりはしないってことか、よし! ……問題は、緋の眼をどうやって盗みだすか……まぁいいや、パームとシュートが何とかしてくれるだろ。俺もうシラネ。あとでミルキに連絡とって、それで俺の役目はオシマイ! 強制終了!
「ボクがいるんだから、そんなにすぐにいなくなったりはしないよね♥」
……コイツの存在を忘れてた……。まあいい。コイツもパームが何とかしてくれるだろう……って俺が考える前にすでにハリセンで殴っていた。
自然に、パームとアイコンタクトをとる。
流石だよな俺ら。