meet again   作:海砂

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留守

 意外にも、旅団の奴らは気さくな感じの人ばかりだった。……見た目はアレな人も多いけど。

 こんな人たちが……クラピカの仲間を壊滅させたり、そんな残虐なことを平気でやってのけるんだろうか。でもきっと、そうなんだろう。ウイングやパームの、ここに来る前の警戒の仕方から見ても。

 パームもウイングも、なんだかんだでこの中に溶け込んでいる。それが作戦なんだろうけど、この状態をゴンやキルアが見たらどう思うだろうか……ましてや、クラピカが見たら。想像するだけでゾッとする。

 そんなことを考えていると、車で来た連中が到着したようだ。

 

 オレ達は三人固まって、無言で入り口の方を見る。心なしか他の旅団員も少し警戒しているようだ。

 ギィ……扉が開いて、パクノダに続いて他のメンバーやゴンとキルアも入ってくる。オレ達はただ、彼らを見つめる。何も言わない余計なことはしない。今回オレは自分にそう課した。けして二人の邪魔にならないように……何があっても。

 

「あっ」

 

 ゴンがヒソカを見て声を出す。……ゴン、学習しようよ……ウイングの時も同じことやってたよな。

 

「あのときの女!」

 

 キルアがフォローに入る。あのときってのは多分、オレと別れた後のことだろう。オレにはわからないけど、シズクに見覚えがあるみたいだ。フェイタンとフランクリンが思い出したように話を進める。……シズクはすっかり忘れてるみたいだけど。

 流れでノブナガとゴンの腕相撲が始まった。一方的にノブナガが勝って、ゴンの腕から血が出ている。……大丈夫、無事に終わると二人は言っていた。落ち着けオレ。

 

 鎖野郎? という奴が旅団にケンカ吹っかけてるってコトと、そいつにウボォーギンって奴がやられたらしいこと。……多分、ウイングに聞いた話と総合すると、その鎖野郎ってのはクラピカのことだろう。そんな話をしながら、腕相撲を続けていた。

 

「ほんの少しだけでいいからお前らが殺した人達に……なんで分けてやれなかったんだ!!!」

 

 ゴンがノブナガに勝った。その瞬間、フェイタンがゴンの背後に立ち拘束し、動こうしたキルアをヒソカがとめる。……オレ達は何もせず、ただその状態を傍観していた。オレは心中必死で、自分に大丈夫だと言い聞かせながら。無意識に、左手が右手を押さえていた。

 

 ノブナガとフェイタンがコイントスで優先順位を決めて……ノブナガの言うとおり、ゴンは解放される。旅団にマジギレ禁止なんていうルールがあることを初めて知った。まぁ、こんだけの力を持つ団員同士がマジギレして本気でケンカしたら地球吹っ飛ぶかもしれないしな。……あれ、ココも地球って呼んでいいのかな? あとでパームにでも聞いてみよう。

 

 その後、どうやらゴンを気に入ったノブナガが二人を監禁する為別の場所に移り、シャルたち他の団員は狩りに出かけるらしい。

 

「俺もリストもらってもいいですか? 手伝いとまではいかないけど、見かけたら連絡するくらいのことはしますよ」

 

 そう言って、ウイングもノストラード組のリストを手にした。一緒に捜しに行くつもりなのかな?

 

「私はここに……アジトに残っててもいい? なんだったら連絡の中継役してもいいし」

 

 パームの意見に団員達も承諾し、ここにいない団長とノブナガ以外の全員がパームと番号・アドレスを交換する。……何この人、着々と裏旅団長の地位を築いてるような気がするのはオレだけか?

 

 そうして、他の旅団員達もアジトを出て行って、残ったのはオレ達三人だけになった。パームに指示されて、凝で念及び盗聴器、カメラの類がないかどうか探しておく。まさに『念』のため。

 

「OK、無さそうだ。まぁ、アジトにそんなもの仕掛ける意味もねーけどな」

 

 ウイングがまず中央にドカっと座り、パームとオレも続く。

 

「ひとまずここまでの作戦は問題無しだね」

 

「っていうかパームの馴染みっぷりに俺は驚いたがな。お前さん、下手したらヒソカが消えたりパクが死んだ後、旅団に誘われるんじゃねーのか?」

 

 オレもそう思う。……その場合、パームもクラピカの敵にあたるのかなぁ。

 

「それは団長が決めることだし、入りたくないってのを入れるような人たちでもないと思うし、私の実力じゃまず入るのは無理。って言うかヒソカのことはこれ以上言わないで」

 

 無意識だろうけど、パームがハリセンを具現化している。殴られたくないのでお口にチャックだ。ホチキスでもいい。いや痛そうだ、やっぱりチャック。

 

「さてこれから……どうする? 緋の眼を盗むにしても、今はまだその時じゃない。無いしな、モノが」

 

「オレの占いでは『静まり返る時』って出てたよね。そんな時が、今以降でも訪れるの?」

 

 ウイングが腕を組んでうなっている。

 

「今夜帰ってきて、お宝もゲットしてウハウハパーティーだろ? ……チャンスがあるとしたらその後か。パーティーが終わった後か、でなければ明日の、団長達がクラピカ達と対峙しているとき……数人はアジトに残ったままだが、全員がいる時よりはチャンスはあるかもしれない」

 

「こればっかりはその時になってみないとわかんないね。……もし団長が戻ってきて私たちの分まで占いをしたがるようなことになっても、あくまで生年月日を知らない、で通そう。下手な占い結果が出ても厄介だし」

 

「そうだな……シュート、それでいいか?」

 

 もちろん。経過や結末を知らないオレは、無条件に二人に従うつもりだ。できるだけ出しゃばらずに、二人が持っていく方向へとオレも向かう。頷いたオレを見てから、ウイングは懐から紙とペンを取り出した。

 

「何か変化が現れてるかもしれない。ここでもう一度三人の占いをしておこう」

 

 最初はパーム。前の占いでは旅団に接触する時は偽の蜘蛛の名前……ヒソカの名前を出して信用させろと出たらしい。そしてそれはもう終わっている。今日から一週間、パームの占いはどう出るんだろうか。

 

  虜にした蜘蛛の子を散らすように、言葉巧みに誘導しよう

 

  残された道化師と同盟を組めば、容易くそれらは実行できる

 

  道化師に渡すのは、貴方の持つ知識のごく一部だけ

 

  紅の仲間と蜘蛛の頭の動向が最も喜ばれるだろう

 

「やっぱ蜘蛛を虜にしたのはゴンじゃなくてパームなのな」

 

 ウイングがはたかれた。どうしてこう、ウイングはパームに関していつも余計なことばかり言うんだろう。……M?

 

「お前さん、その速攻で手を出す癖何とかしろよ……。とりあえず、お前さんからクラピカと団長の動向、多分パクがホテルを出て行った後、フランクリンとボノレノフだけが一緒に残っている時に、自分が知っているその先の予言とでも言って、リンゴーン空港に二人がいることを告げればいいんだろう」

 

「ヒソカには未来を知っているってこと、試験の時に言ったしね」

 

 今度はオレを占う。

 

  貴方の力は絶対に使ってはならない、何故なら即座に奪われる

  逆十字の男が盗むのはそれだけではないだろう

  貴方の力が盗まれれば、仲間もともに盗まれる

  それらが終わるその時が、貴方達の終焉の時

 

「よしシュート、お前さんは絶対に念能力を使うな。四大行ならOKだが、必要以上には使うな。……とりあえずそこにだけ注意してくれ。お前さんが盗まれたら、俺たち全員がデッドエンドだ。逆十字の男ってのは、旅団の団長。他人の念能力を盗む能力を持っている」

 

「わかった」

 

 最後にウイングは自身を占う。……ウイングの能力が出てきてから、この占いはすっかり必須になってしまった感じだ。実際便利すぎる。

 

  次男を選ぶといいだろう、無償で貴方を助けてくれるから

  動くには道化の入れ替わりの瞬間を狙うといい

  長男は道化のために動き、次男は貴方達の為に動く

  それが最初で最後の好機となるだろう

 

「……ミルキ? まあ確かにヨークシンにはいるけど……ホントに無償で動いてくれるかなぁ。ゾルディックでしょ?」

 

「まかせろ。俺は何と言っても奴の神だからな」

 

 ウイングの言っている意味がわからない。ミルキってのは確か、キルアの兄貴の名前だったような気がする。キルアがグリードアイランドのことで連絡とってた相手。長男は……試験の時の、ギタラクルだよな。道化は多分、ヒソカ。

 

「ウイングって、ミルキの神様なの?」

 

「まぁ色々あって、それなりに仲が良いし、恩も売ってある。連絡先もわかるから、助けてもらうにはちょうど良いだろう。タイミングは俺が計るから、お前さんはいつでも脱出できるようにだけしていればいい。……ヒソカ以外の旅団員にはばれないようにな」

 

 オレは頷く。一緒にいない間に、ウイングはミルキと何らかの接触をしていたんだろうと思う。……もしこの時のためにそうしていたんだとしたら、ウイングはやっぱり……すごい人だ。

 

「よっしゃ、とりあえずの方向性が見えたな。旅団メンバーが戻ってくるまではぐだぐだしてようぜー」

 

 そういうと、ウイングはその辺に転がって寝始めた。……強いんだかヘタレなんだか、図太いのか繊細なのか。この人のことはいまだに良くわからない。

 

「シュートも休息とっておくといいよ。この先いつ取れるかわからないからね」

 

「うん、そうする」

 

 オレもその場に転がった。どこでも雑魚寝できるのはオレの長所だ。前の世界で合宿の時、部屋に入りきれないからって廊下に転がされた一年の時の屈辱、忘れてないぞコンチクショウ。

 

 すぐに睡魔がオレの元へと舞い降りる。今日は……色々と疲れたから……かな……。


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