meet again 作:海砂
「おい、出てこいよ。行くぞ」
フィンクスに呼ばれ、俺達は彼らの元に向かった。
「何で!?」
ゴンが俺達の顔を見て驚愕する……馬鹿ゴン。うまくすればもうちょっとフォローしてやれたのに。
「何、知り合い?」
マチさんがこっち睨んでます怖いですボクシリマセーン!
「……ハンター試験の時の知り合い。先に断っておくけど、私達は旅団の仲間でもこの二人の仲間でも何でもないから」
ゴンとキルアがムッとしてますよー怖いよー。そりゃダチに何でもないって言われりゃ腹立つだろうけどさ、この状況考えてくれよ。……キルアは理解したのかすぐに表情を消して、ゴンは……あちゃーかなりムカムカきてるぞこりゃ。
「旅団メンバーの一部もコイツらも俺達の知人。つまりはそういうことだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ヘッ、団員のオンナが混じってるくせによく言うぜ」
フィンクスの言葉を聞いて、ゴンとキルア、ノブナガとマチが一斉にパームを見た。……あ、パームがどこか遠くを見つめている。おーいパーム帰ってこーい。
「とりあえずオレらは車で移動するが、お前らはどーするんだ?」
「徒歩で追いかけます。……あんまスピード出さないでくださいね?」
ちょっパーム! 俺は同乗する気マンマンだったのに何てことを!! ……あ、乗れねーか、人数的に。それに下手に乗ったらパクに記憶盗まれる可能性もあるしな。ま、高速走るようなスピードじゃなけりゃ徒歩でも十分追いつけるだろ。
「へいへい、んじゃ行くか」
俺達がさっきまでいた所から少し離れた、また別の廃墟群。ここが蜘蛛の仮宿なんだろう。
車より先に、俺達がアジトに着く。場所はパームがシャルに聞いた。どうやらゴン達に質問するためか場所を欺くためか、車の方は迂回してアジトに向かっているようだ。
「おじゃましまーす」
のんきな声で、パームが扉を開く。……団長はいない。ヒソカ、シズク、ボノレノフ、コルトピ、フランクリン、フェイタン、シャルナーク。車に乗ってたのがノブナガ、マチ、フィンクス、パクノダだから、団長と死んだウボォーギン以外の全員とご対面したことになる。……いや、団長はいっぺん接触してるか。
「久しぶり、パーム♥」
「その子がヒソカのお気に入りか?」
主にパームが全員の視線を独り占めしている。全然うらやましくない。むしろ俺は空気になりたい。
「ま、ね♥ あとの二人もそれなりに気に入ってるよ♦」
「初めまして、皆さん。一応ヒソカの恋人の、パームと申します。こっちがウイングで、こっちがシュート。二人とも私のツレです」
馬鹿、紹介すんな! 俺は空気でいいんだってば! 空気嫁!
「とりあえず座りなよ。パームもうちのメンバー全員を把握してるわけじゃないんだろ?」
シャルの勧めで、適当な瓦礫の上に座る。……俺の所だけ底が抜けて崩れ落ちた。全員に大爆笑された。ヒドス。
ひとまずはシャルがこの場にいる全員をざっと紹介してくれて、俺達はそれぞれに挨拶する。フェイタンがちょっと怖いけど、それ以外は概ね好意的に俺達を迎え入れてくれたようだ。
「今の強さは中の下って所だけど、それぞれ面白い子達だよ♦ 皆も気に入ってくれるとうれしいんだけど♥」
ヒソカがそう評した俺たちを怪しむように、じろりとフェイタンが睨んでくる。
「そもそもヒソカ自体が信用ならないね」
「あ、彼女の私が言うのもなんですが、全力でそう思います。っていうかコイツは全面的に信用できません。しちゃダメです」
フェイタンの辛らつな言葉に何故かパームが思いっきり同意している。……お前さん、本当にいろんな意味で強くなったな……。俺には真似できないよ。
「酷いなぁ♣」
わざとらしくいじけるヒソカのアタマを、シズクがよしよししている。いいな、俺もされたい。いや待てよ、腕相撲のアレから言うと俺が頭撫でられたら首が複雑骨折するか……怖ッ!
「ハハ、面白い子供ね」
今のパームの返事がどうやらフェイタンのツボにハマったらしく、彼もパームを気に入ったようだ。……着実に旅団を手懐けてないかコイツ。マジで人類最強かもしれん。ミケの時といい今回といい。
「今、中の下ってヒソカは言ったが、一人絶望的に弱い奴が混じってないか?」
ふ、フランクリンさん、それはボクのことでしょうか……?
「ああ、この子ね、生まれつき念能力持ってて、どうもその制約が『オーラ総量が増えない』らしいんですよ。しかもその能力、どんだけすごいのかと思えば発動方法すらわからないらしいんです。何しろ生まれつきだから」
「そりゃまた不遇だな」
ええ、不遇なんです、ヘタレなんです、俺なんぞがこの場所にいること自体間違ってるんです……うああああん居心地悪いよう。
「団長が盗んだら発動方法わかるんじゃない?」
ちょっシズクおまっ何てことを! 盗まれたら俺ら元の世界に帰れない、つーか、下手したら元の世界に旅団が全員集合!!
「馬鹿、そんなことしたら本人に能力を返せないだろうが」
「あ、そっか」
……よし、フランクリンGJ! 危機回避!! つーかココ心臓に悪いよ早く出て行きたいよ……。
「代わりといっちゃなんですが、使えないですけど面白い能力持ってるんでお見せしますよ。どなたか俺に念能力見せてもらえませんか?」
俺の言葉に、コルトピが目の前にある瓦礫をコピーする。俺はそれを目に焼き付ける(そんなことしなくてもできるけど)……そして、俺も同じように
「このとおり……自分が見た能力をショボく改変して真似できるんですよ。
とか言いながら瓦礫をコンコンしたら粉砕されてしまった。うん、予想通り全員が呆れているね! シズクが面白がってデメちゃんを出してくれたので、俺も張り切ってデメちゃん具現化……見た目はデメちゃんの、吸引レベルは単なる掃除機が出てきた。大爆笑された。軽く鬱になった。
「おもしろーい! ねえねえ、どんな能力でもマネできるの?」
「ええ、大体は。ただ、どういう風にショボくなるかまでは俺が決めることはできないんですけど。ほとんどは見てのとおり、使えない能力ばっかりです」
「ていうか三人ともさぁ、いい加減敬語やめない? 団員じゃないけど、とりあえずオレたちは……少なくともここにいる奴らは三人のこと認めてるんだからさ。年とかは関係ないし」
シャルはそう言うし、ほかのメンバーも頷いたりしてるけど……俺ヘタレなので無理! 絶対無理!!
「じゃあ私もみんなのこと呼び捨てタメ語でしゃべるねー。よかったー堅苦しかったんだ、こういうの」
「オレもフツーにしゃべるね!」
……つまり敬語は俺だけという事になるわけですね。チクショー二人の裏切り者! ……いや、この場合は俺が裏切り者、って言うか一人置いてきぼりって奴ですか?
さらに鬱になった。