meet again 作:海砂
「シュート、旅団も二重尾行をしている。ターゲット以外に二人。ウイングは円を使うから即捕まるだろうけど、私達は発見されないように気をつけて。もし見つかったら素直に降参して捕まって。あと、くれぐれも私たち三人の念能力のことは絶対ばらさないようにね。死活問題だから」
シュートは頷いて、私たちは二手に別れた。私は一人でゴンを追う。できる限り周囲に気を配りながら。ウイングとシュートも別々にキルアを尾行している。それでいい。
私はケータイを取り出してメールを打つ。相手はシャルとヒソカ。念のための、保険だ。
『今からそっちに会いに行きます。ただ、面白そうなんで一緒になって尾行ごっこしてるんで、フィンクスとパクノダにその旨伝えておいてくれますか? 事情は把握してます。こっちは三人。私らの顔画像添付します』
しばらくして、シャルからOKのメールが届いた。これでウイングが捕まっても拷問にあったりはしないだろう。できればパクにも触れて欲しくない。多分大丈夫だとは思うけど。パクが旅団メンバーの記憶を読むことはなかったはずだから。……ヒソカはスルーしやがったあの野郎。仮にも彼女の危機だぞこの野郎。会ったら目一杯ハリセンでぶん殴っちゃる。
ゴンとキルアがウイングの存在に気付いたみたいだ。今回は彼らを円の対象内においてるからだろうけど、あの二人でもわかるということは間違いなく旅団なら発信源まで容易に把握できるだろう。ウイングが捕まるのは時間の問題か。
再び携帯が震える。
『ウイングがノッポのジャージ男に拉致られた。尾行は続行中』……早すぎだろオイ。
じわじわと人気のない所へ誘われていく。私はパクノダを発見した。接触するか? ゴンと合流するか?
……二択ギャンブル!
「パクノダさん」
声をかけられたパクノダは驚いて私の方を見る。それでも気配は完全に消している……さすがだ。
「ああ……ヒソカのお人形さんね。何の用?」
「私たちもご一緒してよろしいですか? 何をしてるかは把握してますし、お邪魔はしません」
お互いに気配を消したままゴンを追い、会話を続ける。
「ええ、問題ないわ。あなたのことはシャルナークから聞いているし、それだけの絶ができるならバレる心配もない。……フィンクスが捕まえたのは、あなたのお友達で間違いないわね?」
「はい。もう一人、金髪を追っている子がいるので、そっちも一緒に適当に捕獲してもらえると助かります」
ノブナガとマチは廃ビル群の中へと入っていった。……そろそろ、ゴン達が捕まる時か。
「OK、フィンクスに伝えておくわ」
パクはケータイでメールを送信する。フィンクス宛にだろう。やがて私のケータイが鳴る。
『オレも捕まった。無抵抗だったんで二人とも無事だ シュート』
よし。後は傍観するだけ……。
「私はあの子達を捕まえるのを手伝わなきゃいけないから、悪いけどフィンクスのところに行ってお友達と合流してもらえるかしら。……邪魔するなら、手加減はしないけど」
「とんでもないです。フィンクスさんの居場所を教えてもらえますか?」
無言でパクノダは、向かいの廃ビルを指差す。……凝を使ってようやく、大まかな彼らの位置を特定できた。屋上に三人がいる。
「じゃあ、私はあちらへ向かいます。後でアジトまで案内してくださいね」
そういって、私はパクノダから離れてフィンクス達の方へ向かう。もちろん、ゴンとキルア、ノブナガ達には気付かれないよう迂回して。
「ヒュウ♪ アンタがヒソカの溺愛彼女か。大変だな、あんな変態に気に入られるってのも」
第一声がそれですか、カンベンしてくださいフィンクスさん返事に困ります。
「俺たちは邪魔にならないようこの場所で待機しています。二人を捕まえたら合流してもいいですか?」
「ああ、どうせその場で殺っちまうかアジトに連れて行くことになるだろうから、その後一緒についてくればいいさ。……ちっとでも邪魔する気なら、覚悟しとけよ」
どうしてみんな同じこと言うかな。そんなに邪魔しそうに見えるんだろーか私ら。そんな怖ろしい真似できないってばさ。
「じゃ、後でな」
フィンクスは電話をかけながらキルアの方へと去っていった。……捕獲するために。
「はぁ~……」
ウイングが長く重いため息を吐いた。……仕方ないだろう、一番長く旅団メンバーと接触していたんだから。命の保障すらない状態で。
「お疲れ。でもとりあえずこれで流れには乗れた感じかな」
「そうだな。ところでパーム、ナイスフォローだったぞ。ギリギリでフィンクスに殺られるところだった」
多分シャルへのメールのことを言ってるんだろう。顔写真撮っといてよかった。単なる記念撮影のつもりだったんだけど、こんなところで役立つとは。
邪魔にならないように、私達は引き続き絶のまま待機している。ノブナガ達やゴン達にもその存在がバレないように。
「私もパクに探られることはなかったし、現状としてはかなりいいポジションだと思うよ。まぁ、問題はこれからだって説もあるけど」
「ヤメロせめて今くらい無事を満喫させてくれ」
「ねえ、二人は放っておいて大丈夫なの?」
シュートはゴンとキルアのことを言っているんだろう。やはり何だかんだいって心配なのに違いない。
「キルアが少し怪我するけど、大きな問題はなく捕まるよ。あの子達も力量差がわからないほどバカじゃないし」
怪我、という言葉のところで軽く眉をひそめたけど、とりあえずは納得したようだ。
三人でその場に座る。じかにコンクリに座ると冷たくて気持ち悪いが贅沢はいえない。それよりも埃まみれになってしまいそうだ。旅団のアジトにシャワー……あるわけないか。
ノブナガのケータイが鳴って、この場全体の雰囲気が変わる。私達は、引き続き目立たないようにするだけだ。無事に、ゴンとキルアが捕まるまで。
私のケータイに再びメールが届いた。誰からだ?
『変な顔♥』
いっぺん殺すかあのピエロ。