meet again 作:海砂
オレはもう間違えない。
オレを一番必要としてくれて、なおかつオレにとって最も重要で大切なのはこの二人だ。
「これから、どうするんだ?」
二人に尋ねる。間違いなく結果は知っているんだろう。あとは、話で聞いたように……ゴンやキルアと一緒に、旅団に捕まる。クラピカの話だと幻影旅団は相当な極悪人集団みたいだけど……パームがメル友になってるくらいだから、案外そうでない奴もいるのかも。
ヒソカは……あれはいろんな意味で例外。ニセモノ旅団メンバーって言ってたしな。
「とりあえず、茶ーしばきにいくか」
「賛成~♪」
意気込んでたオレは一気に脱力した。……父さん、母さん、オレ本当にこの人たちについてっていいんでしょうか……。
そして今、オレ達はオープンカフェのそばにあるビルのレストランにいる。うまくいけばゴン達に余計な金を使わせずにすむ、ということで納得した。二人が言うんなら間違いないだろう。カフェの場所はパームが前もって調べておいてくれたらしい。ここに旅団が……来る。
「シュート、気ぃ抜け。そんなにバリバリ警戒してたら明らかにおかしいぞ」
言われて深呼吸する。よし、今はピンチだけど、あとひとつストライクをとれば県大会優勝だと思おう……。やべっ、逆効果になった!!
「シュート、スマイル。別に危険でもなんでもないから。ひとまず落ち着いて。ところでここの金玉みるく絶品~★」
パームが食べているのは、かき氷の金時ミルクかけ、白玉入り。そういう略し方はどうかと思う。ウイングも呆れてる。
けど何かそれで少し肩の力が抜けた。……もしかしてわざと? だとしたらパーム、オレを操る天才かもしんない。
「シュート、そろそろあいつらに電話かメールしろ。できればレオリオがいいな。男女二人連れの旅団発見、って。メールの方がいいか」
まだそんな人影は見えないけど、きっと既に紛れ込んでるか、それかもうすぐここに来るんだろう。オレ達の現在地とウイングのメッセージをレオリオにメールで送る。返事はすぐに来た。
『そのままそこにいて、相手が移動したら連絡くれ。今すぐそっちに向かう』
これで1500万ジェニーも浮くらしいんだから、お金が必要なゴン達にとっても悪いことではないと思う。
しばらくすると三人がやってきた。オレ達は窓際の広いテーブル席に移動する。
「できるだけ視線は向けるなよ、ここからだったらチラっと見るくらいなら大丈夫だと思うが……。手前から三番目のテーブル、一番外側。黒髪ロングのヒゲ野郎とピンクの髪のジャージ女。間違いないな?」
ウイングの言葉に、三人はちらりとその方向を見て、頷いた。
「少なくとも、俺だったらあいつらには手を出さない。それはパームとシュートも同じ見解だ。それにお前さんら三人が加わったところで勝てる相手とも思えない、それだけの実力者だ、二人ともな」
キルアは青い顔をしている。あの二人の実力を見て取ったんだろう。レオリオは難しい顔をして考え込み、ゴンは……あー、オレが言うのもなんだけど、あんま何も考えてないな。つーかワクワクしてるような気さえする。……最初の天空闘技場の頃のオレって、ウイング達から見たらこんな感じだったんだろうなー、きっと。
「……あいつらなぜ、こんなとこにいると思う?」
「蜘蛛だから、でしょ」
キルアとパームの会話についていけない意味がわからない。レオリオとゴンも似たような感じだ。ウイングは……わかってるっぽいかな?
「つまり、奴らは巣を張って見つかるのを待ってる。マフィアとかオレ達みたいな獲物がかかるのをさ、待ってるんだよ」
なるほど……つまり、自らを囮にしてるってことか? でも、あの強さなら納得できる……って、実際に戦ったわけじゃないけど、今のオレはそのくらいならわかる。ヒソカと戦って良かった唯一の点かな。あれを基準に強さを測ることができるようになった。
「!?」
雰囲気が変わった! こんなに離れていても殺気がビリビリと伝わってくる、気付かれたのか!?
「落ち着け、気付かれちゃいない。けどこのままだと時間の問題だろうな。そろそろ奴らも動くだろう、どうする? お前さん達の意見を聞きたい」
ビビる自分を懸命に押さえて、ゴン達を見る。
「……何とかするさ。しなきゃなんねーんだろ?」
「うん、黙って帰るわけにはいかないもんね」
二人の会話を聞いて、キルアが軽くため息をつく。
「……オーケイ。オレ達は奴らを尾行する。ウイング達はどうする?」
「付き合うさ、これでも尾行は得意だ。四次試験の時に三人でお前さんを尾行してたの、気付いてたか?」
「……!!」
キルアの表情が強張る。……気付いてなかったんだな。まあ、気付かれてちゃ尾行の意味ないんだけど。
「三人は文句なしだな。あと、尾行はオレとゴンがやる。レオリオはゼパイルと連絡を取って競売を担当してくれ。ただ、こっから先は絶対に姿を見られちゃいけないから……」
「絶を使う、ね。ちなみにキルアを尾行してた時も使ってたのよ、絶」
「それでか。普通の尾行だったらオレが気付かないはずないもんな」
そういえば、キルアはタモリ三兄弟……だっけ? あいつの尾行にはあっさり気付いてたよな。……改めてゾルディック家、恐るべし。
「悪いがゴン、キルア、俺達はお前さんらとは別行動で奴らを尾行する。……失礼な言い方かもしれないが、お前さんらの尾行の腕を信用しきれないし、万が一ということもある」
「ああ、オレの尾行がやばいなんてことはまずないけど、別れて行動するってのはアリかもな。もし奴らを捕まえられたらオレらに引き渡してくれるんだろ?」
「もちろんだ。……まぁ、そんなことできないとは思うがな……。よし、今から別行動だ。じゃあ、また」
「また後でな、ゴン、キルア」
「おいおい、オレはスルーかよ」
レオリオにアタマはたかれた。笑いあって……そしてこれから、戦場に向かう。ウイングはオレとパームを連れて先にレストランを出た。
「二重尾行をする。全員が絶を使ってゴンとキルアを尾行する。あ、前と同じで俺だけが円を使う。俺とシュートがキルア、パームがゴンを担当しろ。何かあったらケータイメールで随時連絡を取るから、ちゃんとバイブにしておけ。……多分、俺は先に旅団に捕まることになると思うが、その時はゴン達か、自分から旅団……パクノダかフィンクスを探して、状況を見てどちらかと接触しろ。いいな?」
オレもパームも頷く。そして人ごみにまぎれ、彼らが出てくるのを待った。