meet again   作:海砂

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原因

 シュートを連れて、私達はいったん家に帰った。

 聞いた感じ、ゴン達はほぼ原作どおりに動いているようだ。

 シュートには、二人のことは心配しなくていい、お金が集まらなくても彼らはG・Iをプレイすることができる、そう言うと、彼も安堵したようだった。

 

 シュートには悪いけど、旅団のことは伝えない。私達が旅団に関わらない方がいいと、ウイングの占いに書いてあったからだ。……ぶっちゃけすでに私が接触しちゃってるんだけどさ。まぁ、地下競売に関わらなければ大丈夫だろうと思う、多分。

 

「あと一つ、気になることがあるんだけど」

 

「ん?」

 

 シュートが、また余計なことを聞いてくる。

 

「クラピカの仇……幻影旅団ってのがこの街に来るんだろ? そいつらが、クラピカがどうなるか。二人は知ってるの?」

 

……話すべきか、話さざるべきか。私達の元に戻って来た時、シュートの心はまた一段階成長した。そう信じたいけど、コイツのことだから自分から旅団に首を突っ込みかねない。

 

「シュート、お前さん、俺が何を言っても言うとおりにすると、今度こそ約束してくれるか? もちろん、ゴンやキルア、クラピカ、レオリオの最終的な安全は絶対条件での話だ」

 

 シュートは深く頷く。その目はハンター試験の時の、嫌々ながら従っていたシュートの目とは明らかに違っていた。

 

「まずクラピカ。アイツはノストラードファミリーというヤクザの組に所属している。目的は彼女の娘……人体収集家のネオン・ノストラードが狙っている緋の眼。そして、その子の念能力が、俺の占いだ。もっと規模はデカいがな」

 

 ウイングは紙にペンを走らせる。話しながら、さっき、シュートが書いたプロフィールの上に、予言を重ねて書いている。

 

「そして、オークションの存在はお前さんも知っているだろう? その地下競売のお宝が、幻影旅団の目的だ」

 

 シュートは真剣に相槌を打っていた。私は口を挟まないことにして、二人をじっと見守る。

 

「一度目、今日の夜行われる地下競売に旅団が襲撃をかける。だが、宝は盗めないまま撤退し、旅団を追うマフィアの追っ手の中にクラピカも含まれてる」

 

「襲撃した旅団は全員?」

 

「いや……パーム、何人だったっけ?」

 

 こっちに振るな! せっかくカッコつけて傍観決め込んでたのに!

 

「……フェイタン・フランクリン・シズク……それからウボォーギンにシャルナーク・マチ・ノブナガ。全部で7人。残りはアジトで待機してる。……ああ、ついでだから言っとくけど、旅団の4番が……贋物なんだけど、ヒソカで、クラピカと情報交換しあってる。ヒソカは旅団の団長とサシで戦いたいみたいだから。そいで私は、ヒソカとシャルとメル友」

 

 さらっと言ったおかげで、大事なところはスルーしてくれた……と思ったら、食いつかれた。主にウイングに。

 

「ちょっおまっ、いまっ、ヒソカはともかく何でシャルとメル友なんだよ!?」

 

「えーと、成り行き?」

 

 誰かさんが引きこもっていたせいでこっちは死ぬ目にあってたんですけど。あーなんか殴りたい。ウイングが引きこもらずに占ってくれてればあんな痛い目にあわずに済んだのにー。

 

「大丈夫だよ。ヒソカの名前出したらとりあえず身内認定されたから」

 

「ごめんウイング、それも重要なことなのかもしれないけど、とりあえず続きを聞いてもいいかな」

 

 シュート、ナイス話題逸らし! てゆーか元に戻すだけなんだけど。テンパっていたウイングもその言葉で正気に返る。

 

「あ、ああ……後で話聞かせろよパーム! ……えーと、追いかけた先でクラピカがウボォーギンって強化系の奴を拉致するのに成功するんだが、結局そいつには逃げられる。ついでに今夜の件で旅団の7人には明日、莫大な懸賞金がかけられて、ソレを一発狙ってゴン達も旅団を狙う。いったん旅団に攫われるけど、まぁそっちに危険はなくて、うまく逃げられるからほっといて大丈夫だ。んで明日の夜、クラピカがガチンコ勝負でウボォーギンを殺る。クラピカとゴン達が合流するのはその後だ。俺たちが合流するのも、クラピカが一緒になった後の方がいいだろうな」

 

 できれば旅団関係のゴタゴタが全部終わった後に接触したい……ウイングは多分そう考えてるんだろう。

 

あ、ウイングの自動書記が終わった。

 

  仲間とともに盗まれよう、二人より五人の方がいい

  ただし貴方が怒ってはならない、勝機は必ず彼らの元にも下りるから

  緋の人のことは一度忘れよう、連れが蜘蛛を虜にする

  静まり返るその時が、仲間の眼を持ち逃げる時

 

……え、これもしかして、ゴン達と一緒に攫われろってこと? 五人だから私らも? ……ああ、マジカンベンorz

 

「予定変更だ、シュート。明後日の朝、ゴン達と合流する。連絡先は知ってるんだろ?」

 

「うん。この予言はどういう意味?」

 

 シュートは気味が悪いほど素直に従う。いや、これでいいのだ……成長したんだ。シュートの内面が。

 

「さっきも言ったが、ゴンとキルアが旅団を尾行して捕まる。多分、それに乗じて俺たちも一緒に捕まれって言うことだろう、一行目が。」

 

「怒っちゃいけないっていうのは?」

 

「ゴンが拷問にあいかける。ただ、大して傷付けられることはないので放っておいて大丈夫だ。……お前さんが、キルアの時みたいに暴走しなければ、な」

 

 シュートが複雑な顔をして、頷いた。傷付けられないということで納得したんだろう。いや、今の彼なら少々は平気かもしれない。ハンゾーの拷問の時も一応自分を抑えられてたし、ね。

 

「緋の人……ってのは、多分クラピカのことだよね。連れが蜘蛛を虜にする……?」

 

「知ってるかもしれんが、蜘蛛ってのは旅団の俗称だ。連れは……うーん、微妙だがゴンかパームだろう」

 

 は!? 何でそこで私の名前が出てくるの!?

 

「いやだって、ヒソカの恋人でシャルのメル友なんだろ? 一番可能性高いだろうが」

 

 言わないで。シャルはともかくヒソカのことはこれ以上言わないで。そうしないと、今度は私が単独で逃げ出すよ……。

 

「仲間の眼ってのは……緋の眼?」

 

「多分な。旅団が盗んできたお宝の中に緋の眼があるから、それを持って逃げろって事だろう」

 

 そんなうまくいくのかな、あの旅団相手に。……っていうか、ウイングの占いに『蜘蛛に気をつけろ』って出てなかったっけ?

 

「逆に考えろ。気をつけてさえいれば大丈夫だってことだ。俺たちの目的が緋の眼にあると旅団に気付かせなければ問題ない……といいな、うん」

 

 返事がビミョーだ!! 相変わらずウイングはヘタレのままなんだなぁ、隠された能力ってのが分かっても。

 

「そうだ! ウイング、隠された能力っての、結局なんだったの? ……話したくないならいいけど」

 

 少し考え込んでから、でもウイングはちゃんと私達に説明してくれた。

 

「能力名は『現実逃避』(パラレルトリップ)。……この名前で大体、想像がつくだろう? 俺の念能力が、お前さんらを巻き込んで、この世界に来たってわけだ。年齢がズレたのも、記憶がなくなってるのも、その影響っつーか制約。もちろん、俺のオーラの量が増えないってのもな」

 

……そっか、ウイングのせいでこの世界に来ちゃったのか。とりあえず、ハリセンで一発ぶん殴っておいた。

 

「これでチャラね。シュートも殴っといたら?」

 

「え? いやオレはいいよ」

 

 ウイングが半泣きだ。人類最強なので気にしない。シュートは混乱しているようだが人類最強なので無視。

 

 だって旅団のうち二人も私のツレみたいなもんなんだし、これはある意味確かに人類最強。えーと、こういうの、トラぬタヌキの皮算用って言うんだっけ? 違う、トラの威を借るキツネだ。それでも人類最強なので問題ない。

 

「……許してくれるのか?」

 

 半泣きになりながらもウイングがたずねてくる。だからチャラだってさっき言ったじゃん。

 

「オレも気にしないよ。むしろこの世界に来て良かったって思ってるくらいだし」

 

「そんなことより、それ解除する方法は? オーラの量増えるようになるんじゃないの? うまくすれば元の世界に戻れるんじゃない?」

 

 無情にも、ウイングは首を横に振った。半泣きのままで。あ、鼻水たれてる。

 

「わからない。ウイングさんが言ってたけど、多分発動している状態じゃないと除念はできないだろうし、発動している気配もない、つまり、跳んできた時にだけ発動してたってことだろう。それに、発動の仕方もわからない。名前からして、俺が現実逃避すればいいのかと思って引きこもってみたが駄目だった」

 

……ああ、それで引きこもってたのか。おかげで私はシャルと死闘を繰り広げる羽目になって……もう一発殴っておいた。半泣きが本泣き寸前だ。ハリセンにウイングの鼻水がついたので消しておく。

 

「わかった、ウイングの能力についてはとりあえず無かったことにしよう。解除できないんならあいかわらずオーラ量増えないんでしょ?」

 

 はい、ウイングがマジ泣きになりました。目とか鼻とか口とかからいろんな液体が流れ出している。ええい、寄るな汚い!

 

「で……二人と一緒に捕まるのは、最初の尾行と二度目の尾行、どっち? ……まぁ、最初の方を選ぶんだろうけど」

 

「当たり前だ! わざわざ危険な橋渡ってたまるか!」

 

 結論。

 

 今夜、九月一日のアングラオークションに旅団が殴りこむ。……スルー。

 

 明日、九月二日の朝……もしかしたら今夜のうちかも? 旅団の7人に懸賞金がかけられる。……スルー。

 

 明日の夜、クラピカがウボォーギンを殺す。……スルー。

 

 あさって、九月三日……多分、朝、三人がサザンピースにカタログを買いに来るから、そこで待ち合わせればいいかな。私達もカタログ買っておかなきゃだし。で、蜘蛛を追うのに協力すると言おう。そしたらマチとノブナガを見つけた時点で連絡をくれるだろうし。

 

 ゼパイルさんとかとのやり取りは……スルーでもいいし、一緒に行ってもいいかな。私達もまた少々稼げるかもしれないし。……別行動で市を見回った方がいいかもだけど。ああそうだ、ニセモノナイフのお金もチェックしておかなくちゃ。

 

 とりあえずはこんなところかな。ウイングとシュートにも話して、了承を得た。

 不確定要素が多すぎて、これ以上細かな作戦は立てられない。……なーんてまたクラピカを気取ってみたり。そういや私、クラピカ大好きだったはずなんだけど、現物見ても別に何も感じなかったなぁ。

 二次萌えと三次萌えは別物ってことか。

 

「ところでせっかくまた三人そろったんだし、記念に写真とろうよ!」

 

 二人が呆れ顔で私を見た。ヒドイ、私の仲間を愛する気持ちが二人には伝わらないのね。仕方がない、ハリセンを具現化しよう。

 

「はい集まってー、変顔してー、撮るよ!」

 

 ギョギョゲッ! はい、撮影完了。自分撮りだから顔がちょっと切れちゃった……ま、いいか!

 

 画面の中の二人はものすごーく嫌そうな顔してる。何がそんなに嫌なのか小一時間問い詰めたい。


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