meet again   作:海砂

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予言

 シュートが出て行った。

 扉を閉められたとき、もう戻ってこない気がした。

 

 止めようとはしたけど、シュートの言葉には……何も言い返せなかった。ゴンやキルアを、わかってて見殺しにしたのは事実だから。

 説明会のときにもう一度顔をあわせることになるけど、きっと何を言っても通じないだろう。

 ちらりとウイングを見る。

 

「このままキルアを追わせてもいいの?」

 

「しばらく好きにさせとけ」

 

「その間に危険が迫ったらどうするのよ! 占いはないし、ゴンたちと一緒に行動するって言ってんのよ!? 危険すぎるよ!!」

 

「わかってるじゃねーか、じゃあつべこべ言わず黙ってろ。いつか必ず戻ってくる……あいつらと、一緒にいるんならな」

 

 ウイングには、何か確信のようなものがあるらしい。……それにしても。

 

「そのしゃべり方、シルバの真似でしょ」

 

「あ、バレた?」

 

「それってさ、シュートは戻ってこないよフラグ立てたようなもんじゃないの? 少なくとも、私らが向こうにいた頃のH×Hの時点、つまり、キメラアント編までは」

 

「し、しまったぁあああああ! 確かに!!」

 

……相変わらず愉快なヒトだ。自分で言っておきながら、自分でorzしている。冗談だったのになぁ。

 

「ゴホン、とりあえずそれはさておきだがな。試してみたいことがある。お前さん、シュートの生年月日とか覚えてるか?」

 

「? そりゃ何度も見たし、覚えてるよ」

 

 ウイングは部屋に備え付けのメモ帳とペンを私に手渡した。

 

「それに書いてくれ。それとついでに、ゴンのヤツもだ」

 

 なんとなく、ピンときた。ウイングのモノマネに、制約は存在しない。……オーラの範囲内であれば。

 

 一枚目にシュートの名前、生年月日、血液型を書いて渡す。私がもう一枚を書く間に、ウイングはミニマム『天使の自動筆記』(ラブリーゴーストライター)を発動する。

 

  これまでの、己の足跡を辿るといい

  まずは貴方の力の始まりの場所

  仲間とともに、己を振り返るといいだろう

  貴方たちは、失った人を見つけ出せる

 

「……問題ないな。書いた人間が本人じゃなくても占えるし、内容も原作どおりだろう。『試合中に追わなければライセンスが手に入る』って言うのは占いどおりだし、今から追う分には問題なさそうだ。パーム、ついでにクロロの分も書いてくれ」

 

 ウイングは、今度はゴンを占い始める。私はクロロ……団長のプロフィールをメモ帳に書き込んだ。

 

  無茶は控えたほうがいい、犬が皆を眠らせる

  手段は他にもあるだろう、それを男が提示する

  役立つ力をまとったのちに、友と再会するといい

  それらは必ず、全員の力となるだろう

 

「これも問題ないな。ククルーマウンテンの予言だ。パーム、次、クロロ」

 

 三枚目、クロロ=ルシルフルの紙を渡す。……今度は先ほどまでと違い、ウイングの右手は全く動こうとしなかった。

 

「……ここが俺の活動限界か。会ったことのない人間は、たとえ顔を知っていても占うことができない」

 

 なるほど、本で読んで存在を知っていても、直接会わないと占えないわけか。それにしても便利だ、この占い。離れていてもシュートの動向を知ることができる。そういう意味では、シュートがゴンたち主人公組と行動しているのは確かにベストだ。ウイングの余裕も納得できた。

 

「毎週シュートを占って、危険が迫ったら助けに行こう。それでいいな、パーム?」

 

「うん。……で、私たちはこれからどうするの?」

 

 天空闘技場……には、まだ『私たち』がいるから行けない。ククルーマウンテンに行けばシュートに余計な刺激を与えることになるだろう。……他には……NGL? 私入れないや、奥歯に銀歯入ってるから。

 

「そういえばさ、クロロの『盗賊の極意』(スキルハンター)を真似したらどうなるの? 制約なくなるから盗み放題なんじゃない?」

 

「いやー、試してみたが本具現化するだけだった。……悪かったな、ヘタレで!」

 

 誰もそんなこと言ってないって。どうも最近、ウイングは自虐的だ。そうやってヘタレヘタレ言ってたら自己暗示でますますヘタレになっちゃうよ。

 

 それはいいとして、今後どうするかだ……。

 

「ヨークシン、行ってみるか」

 

「9・1の?」

 

「いや、普通にだ。事前に電車のルートやビルの位置を目と足で確認しておきたい。さすがのお前さんでも、そこまでは覚えてないだろ?」

 

 んー、大まかな地図と旅団がバラけてる時の位置くらいならわかるけど……電車まではさすがにわからないなぁ。

 

「よし、決まりだ。ついでに商業都市らしいとこを見たり、ライセンスで電脳ネットつないでネットオークションとかしまくろうぜ」

 

ん、とりあえず解決策もないし、それでいいかな。

 

 ほぼ原作どおりの流れで説明会が進み、シュートは私たちと目すら合わせてくれなかった。怪我しているゴンがこちらを心配そうに見ているが……シュートをたのんだよ、ゴン。

 

 そして説明会が終わる。

 

「さ、行こうか♥」

 

 説明会を終えた私たちに、声をかけてきた忌まわしい人物。即座に私はハリセンでぶん殴った。

 

「突然背後に現れないで、うっかり殺しちゃいますよ? つーか離れててもいいんじゃなかったですっけ」

 

「んー、とりあえずこれからヒマだし♣ 一緒に遊ばない?」

 

「遊びません。消えて下さい。とっととイルミんとこ行ってゴンを殺さないように注意でもしてきたらいいんじゃないですか? あの人絶対消すつもりだと思いますよ」

 

 ウイングが、おかーさんのような表情でオロオロと私を見ている。ヒソカ相手にこんな態度とって大丈夫なのアンタ? みたいな。そんな心配しなくても、今のヒソカは警戒するに値しないってばよ。

 

「冷たいなぁ♠ でもそこがキミのいいトコロ♥」

 

「いいからテメーは天空闘技場にでも行っとけ。一ヶ月位したら『青い果実達』がそっち行くから」

 

 ピクリとヒソカが反応を返す。そして、くっくっくっと不気味に笑った。

 

「了解♦ 次に会ったら、今度はゆっくり話をしてほしいな、キミのコト……♥」

 

「とっとと行け!」

 

 口を尖らせながらヒソカが去る。あー、スッキリした。アイツがいると肩が凝る。……ん? 私がここでこんなこと言っちゃったせいでヒソカとシュートが戦う羽目になったのか? まあいいや、無事だったんだし。投げキッスは見てないし。

 

「……お前さん、強くなったな……」

 

 とりあえず、ヒソカと同じものを見るような目で見ないでほしい。あいつが私をからかっているのはウイングだって承知の上だろうに。

 

「さすがヒソカのカノジひでぶ!?」

 

 ハリセンはまだ具現化したままですよウイングさん。次はこのハリセンを念でさらに強化しますからね?


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