meet again   作:海砂

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試験

 俺たちは今、例の定食屋の前にいる。タイムベルトだと場所の移動までは出来ないので、ひとまずは三人でここに来たってわけだ。

 そして、パームにタイムベルトを出してもらう。そろそろ周囲の人たちの、奇異なもの(ファンファーレ)を見る目にも慣れてきた。

 

「じゃあ、最初は俺が行く。明日がシュート、明後日にパームが来い。日付・時刻はわかってるな?」

 

「うん」

 

「大丈夫」

 

 タイムベルトを使い、試験前へとジャンプする。ちょっと移動のときに気分悪くなるんだよな。船酔いみたいなもんか?

 

 俺の場合は時期は試験より一ヶ月ほど前に飛ぶ。先に行って試験の申し込みしておかないとな、ってことでネカフェで勝手に三人分の試験の申し込み用紙をプリントアウトして必要事項を記入する。(パームに日本語⇔ハンター文字変換表をあらかじめ作ってもらっておいた)

 親権者の印鑑? その辺で買って来ましたが何か? 世の中には大人しか知らないいろいろなカラクリがあるのだよチミ。一切身寄りのない(と思われる)クラピカや家出したキルアが参加できてるところから見ても、必要なのは認印! 印鑑証明なんて必要ないんだぜベイベー!

……いや、そんなん存在するかどうかすら知らんけど。テキトーに名前ゆったらその場で彫ってくれた。一本で三人分。俺らの親権者はサザエ・イソノさんですが何か問題でも? 基本的に登録自体はそれほど重要視されてないみたいだしな、ギタラクルなんて仮名があっさり通用したところから見て。

 そして陽気に愉快に試験を通過できるはずだ! 俺の生まれた頃からTVで活躍しているサザエさんならきっと! 多分! ……だといいな。

 

 適当に一ヶ月を過ごす。宿代分はちゃんと計算して持ってきたから問題ない。例の定食屋で先に焼肉定食を食ったりもした、うまかった。

 そして三人で落ち合う予定の時刻。定食屋やその周辺の雰囲気は、跳んでくる前とも、跳んできた後ともそれほど変わらない。

 ソレっぽい人たちを見送り、ゴン達が来たので慌てて隠れ、やがてシュートとパームが現れた。

 

「一日に何度でも出せたら便利なのにな、ソレ」

 

「仕方ないでしょ、制約なんだから」

 

 あーぜんっぜん変わってないなこいつら……って当たり前か、こいつらはあれから一日二日しか経ってないんだからな。

 

 とりあえず店に入る前に三人分、占いを済ませておこう。タイムベルト使って長時間移動したせいでわかった新事実。タイムベルトに影響される事なく占いはその当人が体感する七日間分の内容だってコトだ。ここ重要な、試験に出すぞ?

 過去に戻ったのに、前に占った予言が見事的中したんだよ。

『小さな子犬を侮るべからず。右に歩けば貴方は弱り、左に歩けば貴方は眠る』とか言われてて、跳んだ直後に正面から子犬連れのねーちゃんがやってきて、慌てて右に避けたら足に思いっきり噛み付かれた。左に避けてたらのど笛にでも食らいついてきたんだろうか。チワワみてーなチビ犬のクセに。謝る位ならしっかり躾けとけよな、飼い主も。

 まあ、おかげで焼肉定食オゴってもらえたからいいんだけどさ。

 

 話は戻って、三人分の占い。中でもう一~二度は占わないと、試験は一週間以上あるもんな、多分。

 

 まず俺。

 

  四角い花には近付くな、会話は最低限にしよう

  香りに誘われ蜜を吸えば、貴方は地獄を見ることになる

  最初に決めた事に必ずしも従う必要はない

  何事にも絶対はありえないのだから

 

 前半はなんか予想付くな。やーな感じの予想だけどな。花じゃねーだろ間違いなく雑草だろ。後半はワカンネ。

 

 次、シュート。

 

  塒を前に先走れ、迷いたくないのであれば

  けれど年長者の助言には従っておくといい

  彼の言葉通り、急ぐのならば別の道を行こう

  さもなくば思わぬ遠回りとなる

 

 聞いとけよお前さんしーっかり聞いとけよー年長者は敬うんだぞシュートー。

 

 そして、ラストにパーム。

 

  掟は破るためにある

  必要であれば、二度なら神にも許される

  けれど三度はいただけない

  神の鉄槌が下るから

 

……二回はパームに念能力使わせる事になるかな……多分。んで少なくとも片方は、あそこで使うんだろう間違いなく。俺の占いの後半部分はこいつか。

 

 無事に準備(占い)を終え、二人を伴い店へと入る。勿論、注文はアレしかない。

 

「焼肉定しょ……」

 

 言い終える前に、パームに殴られた。

 

「おいちゃん、ステーキ定食を弱火でじっくり、三人前お願いしまーす!」

 

 あれー? 絶対焼肉定食だと思ったんだが俺の記憶違いだったのか、俺たちは別室に案内される。案内してくれたのはおばちゃんだった。あれ、原作ではきゃわゆいオネーチャンだった気がするのだが……。

 

 部屋では網焼きのステーキが弱火でじっくりことこと焼かれている。俺が記憶違いしてた原因はコイツか!

 

 ガコリと音がして、エレベーターが降下する。

 

 その間、長いようで短い時間、俺たちは左に茶碗、右手に箸を構えて肉バトルを繰り広げていた。結果はシュートの圧勝。くそ、さすがに運動神経バツグンだなコイツ。俺二切れしか食えんかった。ビールが欲しい。

 

 それと、確認をしておいた。絶対に念能力は使用しない。基本的には垂れ流しのノーマルモードで進み、どうしても命に関わるような場合のみ、纏・凝・周・円のみ許可する。能力は死んでも使わない……占いに出たピンポイントの二箇所を除いて。ヒソカやイルミがいるから出来れば念全般を使わずに勝利したい。多分……大丈夫かな? 一応鍛えたし、現時点でのゴンやレオリオ・クラピカよりは強いはずだ。

 

 ゴトン、エレベーターが大きく揺れて、無事に到着する。扉が開いた。……空気が変わる。

 本試験会場。……えーと、ヒソカとギタラクルはどこだ? 逃げるぞ。

 

「よう、お前さんらもルーキーだな。今年は随分新人の多い年だ。ま、オレに何でも聞いてくれよ」

 

 オッサンが気軽に声を掛けてきた。はいはい新人潰しで四角い鼻のトンパさんコンニチワ。

 

「俺たちで何人目か、それとヒソカと、あとギタラクル……カタカタいってる目のイったヤツの居場所を知りたいんだが。あいつらには極力近付きたくない」

 

 はい、トンパが俺を見る目ちょっと変わりました。あいつらを知ってるからか?

 

「は、はは……もしかしてルーキーじゃなかったか? 一応オレは全部の受験者を把握してるつもりだったんだけどなぁ。お前らで408人目、カタカタ野郎はあれ。で、ヒソカはあそこだ」

 

 いえいえルーキーですよと適当に返事をしながら、彼の指差した先に佇む変人と変態を発見……よし、この二人とは極力距離をとるぞ。番号札を受け取りながら、警戒は怠らない。番号は、俺が406番、シュートが407番、パームが408番だ。さあポッケにしまおう三次試験があるからな、いや四次だったっけ?

 

「確かにアイツは相当ヤバいからな。前回の試験でも試験官を半殺しにして不合格になりやがった。今もひでえ有様だぜ。もう片方はもう何かやばすぎて近付けなかったんだが、お前知ってるのか?」

 

 ヒソカの真上、天井に人の腕が張り付いている。バンジーガムで飛ばしたんだろう。……なるほど、ゴン達よりも後に来たというわけか。あっ、キルアがここにくるかもしれん、トンパは華麗にスルー……

 

「ところで、コイツはお近づきの」ジリリリリリリリリリリ!

 

 ベルが鳴った。試験開始の合図だろう、どこからともなくサトツさんが現れる。良かった、新聞勧誘すら断れないヘタレな俺だと、強引に勧められたらわかってても下剤ジュース飲むところだった。リアル世界では新聞三つとってますが何か問題でも? その分洗剤やらゴミ袋やら、スポーツ観戦チケットやら強奪しまくったけどな。とってんのは朝刊だけだし。

 

 そういやキルアの五本一気フラグは俺らが来たことで消滅したんだろうか? 今後に影響なければいいけど、多分影響ないだろこのくらいなら。ないよなあ。……ないといいなあ。

 

「ただ今をもって、受付け時間を終了いたします」

 

 うーん、やはり見事なあのダリ髭、何かワックスとかで固めてるんだろーか。他の部分の髭は剃ってんのかな。

 

 多分、俺は受験者の中で一番気楽でアホなことを考えていた。

 

 以下中略。

 

「ただ私について来ていただきます」

 

 はい、マラソン開始。まぁ、俺ら三人はここは余裕だろう。伊達にククルーマウンテンで鍛えてたわけじゃない。

 

「……パーム?」

 

 スケボーから降りて走っているキルアに声をかけられた。しまった、もう見つかっちまったか。

 

「あ、ウイング! 何? キルアとも知り合いなの?」

 

 ゴン達三人にも見つかった。予想外だがまぁいいだろう。ヒソカに見つかるのに比べたら可愛いものだ。

 

「久しぶりだな、ゴン。キルア様とは……それほど時間は経っていないでしょうか、お別れしてから」

 

「ああ。あの時は……ごめんパーム」

 

 走りながら、気楽に会話を続ける。

 

「気にしてないって。それよりゴン、後ろの二人は誰? 紹介してよ」

 

「あ、金髪の方がクラピカでメガネの方はレオリオ。どっちもオレの仲間だよ!」

 

 クラピカが軽く会釈する。

 

「初めましてウイング、話はゴンに聞いている。大層な予言者だというじゃないか。是非私の未来予想図も聞かせていただきたいものだな」

 

……えーと、本人も忘れてた設定をほじくり返さないでいただけますか? しゃーない、占うわけにもいかないし、そのうちテキトーなこと言っとくか。ノストラード組に入れば目的の一部を達成できるとか何とか。それかあれか9月のヨークシンオークションに蜘蛛が現れるとか。……逆に旅団じゃないかとか思われたらヤダな、そっちはやめとこう。

 

「初めまして、オレはシュート。野球好きでゴンやキルアの友達!」

 

 各々の自己紹介が終わったあたりで、さらにスピードが増した。

 俺らやゴン・キルアは平気そうだけどあとの二人は少し苦しそうだ、特にレオリオ。俺も会話はやめにして、走るのに集中する。念のために、だ。あまり不必要に体力は消耗したくない。ゴン達も他の受験者も、徐々にばらけだした。

 

 やがて階段へ到着する。スピードがさらに増す。レオリオは既に上半身マッパだ。アイツ、本当に限界近くなったらフリチンになるんだろうか。

 

「おい、階段上がりきる前に、前の方、出来れば先頭に出るぞ」

 

 シュートの占いを根拠にして俺は二人にそう促し、俺たちは揃ってスピードを上げる。試験官が2段とばしなら俺らは4~5段とばしで行ってやる。その程度の余力は充分にある。俺にあるくらいだからパームやシュートも余裕だろう。

 ほどなくして、俺らは先頭に踊り出る。ゴンやキルアと一緒に。

 

「やっぱアンタらすごいな。後方集団からここまで追いついて息も切らしてねーのかよ」

 

「余裕ですよ、キルア様。これでもゾルディック家にお仕えした身、そうそうヘバってなどいられません」

 

……すっかりクセになっちまったな、キルアへの敬語。予言に出てないからもう召使いぶる必要もないんだが……あああキルアがウザそーな目で俺を見てるううう。

 顔で笑って、心で泣いて。家出たんだからいい加減に敬語やめろというキルアの命令の元、階段を抜けきる頃までには、何とかゴンとかと同じように呼び、話すことが出来るようになった。俺超頑張った。こんな可愛いニャンコにこれ以上嫌われたくない。

 

 そして、詐欺師の塒へと到着する。まだまだ体力的には余裕だがここでは騙される可能性が多分にあるからな、サトツさんにピッタリくっついていく事にしようそうしよう。ヒソカに関わりたくないので試験官ごっこはパス。原作どおり、レオリオが殴られる程度で済むだろ、多分。

 

 やはり未だ俺はヘタレ。ライセンス取り終わる頃までには俺の隠された念能力ってのを知ることができたらいいなぁ。


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