meet again 作:海砂
安慈さん、蝙也さん、夷腕坊さんを連れて京都に戻り、四乃森蒼紫と接触して共にアジトへと戻る。
原作の流れに何も変更点はない。
そして盗み見る志々雄の一の秘剣「焔霊」、あれはおそらくオーラを炎に変化させた変化系の技。
刀にこびりついた人の脂と斬った相手の脂を燃やしているのだろうが、
つまりどこから火種を持ってくるのか? 答えは明白だ。
H×Hのキルアは産まれた時から電気を浴びていたからオーラを電気に変えられた。
同様に志々雄は己自身が燃やされたことによってオーラを炎に変えることができるようになったんだろう。
「そろって人の剣を盗み見てんじゃねェよ」
とか言いつつも、そう機嫌は悪くなさそうな志々雄。
東の十本刀にそれぞれ声をかけ、そして蒼紫と会話を始める。
彼を客人として迎え入れ、宗くんと私に案内を命じる。
宗くんは蒼紫に色々と声をかけていたが、彼はほとんどそれに応じることはなかった。
葵屋に、危機が迫る。ただしそれはまだ序章に過ぎない。
まずは梟爪衆。これは問題ない。葵屋の面々も素人ではない。
問題はやはり鎌足以下十本刀の面々。
大怪我を負う者もいる。
自分は葵屋に向かって彼らを助けるべきか、それともこの場所に残るべきか。
そもそも志々雄や宗くんは私をどうしようと考えているのだろうか。
戦力とはカウントしていないだろう。信じてもらうには日が浅いしまだ実力も見せていない。
具現化系の自分は強化系にはあまり向いていないのだが、何かしらの武器を使うことも考えねばなるまい。
さすがにドラえもんの道具を頻繁に使うのはマズい。
ひらりマントくらいならいけるかな?
名刀電光丸を具現化するべく現在頑張っている最中なのだが、未だ具現化できてはいない。
これが具現化できれば、いずれの地に行くにせよ、かなり役立つのだが……。
翌朝、拷問を受けた梟爪衆の一人が戻った。
その背中に刻まれた翁からの伝言。
『午の刻 阿の処にて待つ 一人で来たれし』
伝わる人間にだけ伝わる内容。御庭番衆阿の処。
翁さんは……死なないから、いいか。よくはないけど。
蒼紫も行かせよう。ここで止める方が変な挙動になる。
「葵屋襲撃失敗か……」
「申し訳ありません、全て私の見識の甘さ故……」
方治が志々雄に報告をしている。心なしか顔色が悪い。
「かくなる上はこの十本刀"百識"の方治自ら出張る所存……」
「その必要は無えよ。すでに四乃森蒼紫が呼び出されて向かったんだろ」
失敗の報を受けた割には、志々雄の機嫌は悪くない。
こうなることをあらかじめ予測していたのか。
宗くんは由美さんと将棋を指しており、私はそのそばに控えている。
「由美さん、角、角道」
ときどきこそっと由美さんに助太刀したりしながら、志々雄の一挙手一投足に目を光らせている。
そして彼らはおそらくそれにも気付いている。そして見ぬふりをしている。
「しかし」
「あの男に余計な横槍は無用だぜ、己の命が惜しいならな」
この言葉に、方治がびくりと震え上がる。
志々雄が『覚悟が足りない』と感じたのは多分この辺なんだろうな。
二人は地獄の存在を語り合い、志々雄の結論は『この
「方治、お前には洗礼が要るな……」
手袋を外し、方治に近寄る志々雄。悲鳴を上げる方治。
「うるせえよ」
その素手で、方治の額を掴む。
「十年前に負った全身火傷の時、俺の体の中の汗をかく組織はほぼ全滅しちまってな」
気のせいか、方治の冷や汗が蒸発する音すら聞こえるように感じる。
いくらなんでもそれほどの高温ではないと思うんだけど。
「以来、発汗による体温の調節が出来なくなり、俺の体は医者に言わせれば生きてるはずのない高熱を宿すようになった。言わば、地獄の業火の残り火だ」
志々雄はそれ以上特に何をすることもなくその手を方治から離す。
「残り火は腕だけじゃない。足、腹、胸、俺の全身をくまなく焼き続けている。当然、
己の脳を指さす。そして炎熱が声となって真実を志々雄に語りかけ始める。
『人の本性は修羅 そしてこの
「炎熱が脳で声を荒げる。『これでは駄目だ。修羅だけが生きる資格を有す強国、これこそ地獄にふさわしい』」
方治は再び震えだす。恐怖の震えではなく、歓喜の震え。
忠実な修羅がまた一人、志々雄のもとに集う。
「志々雄さん、私にもその腕で触れていただけますか?」
意識の埒外に居た私からの突然の提案。
「いいぜ、来いよ」
志々雄が私に向かって手袋のない手を差し出す。
興味本位が半分。もう半分は……。
彼が私の腕をつかむ。火傷するほどではないが、熱い風呂ほどの温度。
確かに人が持つには不釣り合いなほどの高熱。
「これは、想像以上の熱ですね。志々雄さんは、もし今この火傷を全て治せるとしたら、治しますか?」
絶対とは言えないが簡単な病気なら即座に治してしまう。
火傷は軽重で言うなら重いものだがドラえもんの道具ならあるいは治してしまえるかもしれない。
そして彼の炎の疼き自体を癒してしまえれば、あるいは修羅への道を閉ざすことができるかもしれない。
「いや、いらねえな。この痛みは俺にとって必要なものだった。今までの話を聞いてそうは思わなかったか? 桂木裕美」
「……はい、出過ぎたことを聞いて申し訳ありません」
「気にするな」
想像はついていた。志々雄は今ではむしろこの火傷に誇りを持っている。
火傷を負ったからこそ現在の己のアイデンティティが存在する。
このとんでもない修羅を無くすためには、燃やし尽くすしか方法はない。
それができるのは、やはり緋村剣心ただ一人を置いて他にはいないだろう。
「……桂木裕美」
志々雄は由美さんと呼び分けるために私のことは基本フルネームで呼ぶ。
「はい」
「お前は宗次郎と共に在れ。必要なもの、不必要なもの、全てを見極めて吸収しろ。物であれば俺が与えることもできる。だがそうでないモノも存在する。宗次郎、お前もだ。桂木裕美から吸収できるナニカを学び取れ」
「えー、僕になにか裕美さんから学ぶこととかありますか?」
不思議そうな宗くんも、そう言いながらも頷く。無論、私も。
私が宗くんから吸収できる何か。宗くんが私から学び取れる何か。
それが志々雄には見えているんだろうか。