meet again   作:海砂

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瞬速対決でござる!

 想像はしていたけど、私と宗次郎くんが滞在している間に原作のあの場面がやってきた。

 三島栄次と巻町操、そして緋村剣心と斎藤一。

 この四人が新月村を訪れたのだ。

 宗次郎くんと剣心の対決がここで行われたはずだから、必定巻き込まれることになる。

 その前に尖角にも会って話もしたけどありゃコッテコテの脳筋強化系だな。

 っていうかそもそも筋肉はともかくオーラが大したことなかった。

 速さで勝る剣心の敵じゃない。

 

「お主が……志々雄真実でござるか」

 

「"君"ぐらいつけろよ。無礼な先輩だな」

 

「気にするな、無礼はお互い様でござる」

 

 宗次郎くんが剣心と斎藤、二人を迎えに行った。連れてきたのは三人だった。

 

「シュート!?」

 

 まさかシュートがこの二人のそばに居たとは。向こうも驚いていたようだった。

 ……ウイングはどこにいるんだろう? まあそれは今考えても始まらない。

 

「なんだ、知り合いか?」

 

「あの右端の青年だけは、知人です。()()()()()()()を持っています」

 

「なるほどな……」

 

「……なぜ、この村を狙った?」

 

 その後は原作通りの展開になった。志々雄が温泉だと答えて剣心がイラっとする。

 尖角と戦い、あっさり剣心が勝つ。

 

 そして、志々雄が宗次郎くんに刀を投げ渡す。

 

「宗次郎、俺のかわりに()()()やれ」

 

「いいんですか?」

 

 新しいおもちゃをもらった子供のような笑顔。

 実際、宗次郎くんにとっては似たようなものなんだろう。

 

「ああ、「龍翔閃」とやらの礼に、お前の「天剣」を見せてやれ」

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 二人が合い向かう。私はこの隙に、斎藤の隣へと移動する。

 

「裕美さん?」

 

「こちらは私が押さえるから、遠慮なくお二人でどーぞっ」

 

 おそらくシュートに伝えても伝わらない。彼では原作も歴史も知らないだろう。

 

 剣心の剣気やだわぁ怖いわぁ。でもそんな中でも平気で動ける程度には鍛えてるのよね、私たち。

 宗次郎くんと剣心が向かい合っている隙に、私は斎藤の手を取って彼の体に隠れた位置で手のひらに字を書く。

 

『大』

 

『阪』

 

『港』

 

『黒』

 

『船』

 

 宗次郎くんに気付かれたかどうかは不明だけど、少なくとも何を書いたかまではわからないだろう。

 果たしてどこまで伝わるか。

 京都大火に関して彼らはすぐに推測できていた。

 私の情報を役立てるのはそのあとの『煉獄』

 

 フッとだけ笑って、斎藤は手を引っ込める。

 

「シュート、あんたはどうしてここにいるの?」

 

「オレは藤田先生についてここまで来た。先生に剣術も教わっている。パーム……桂木は?」

 

「私? 私は志々雄の女だから」

 

 全員(剣心と宗次郎くんを含む)が一斉に私の方を見る。

 

「裕美さん、嘘はいけませんよ」

 

「なによう、志々雄の配下の女って意味なら間違ってないじゃなーい」

 

 二人の記念すべき初対決にいらんチャチャを入れてしまった。

 彼らは何事も無かったかのように仕切り直している、さすがだ。

 

「……てことは、桂木は、オレらの敵だってこと?」

 

「少なくとも今はね。今すぐ戦うわけじゃないけど、ひとまずは目の前のこの斬り合いの結果次第かな」

 

 雑談を交わしながら、私たちの視線は目の前の二人に釘付けになっている。

 神速の剣心と縮地の宗次郎くん……ここではまだ縮地は使わないけど。

 勝負は一瞬で決まる。まばたき厳禁。

 

 そして、一瞬で終わった。

 凝をしていた私とシュート、それに斎藤には見えていただろう。操ちゃんにはまだ無理かな。

 

「勝負あり――かな?」

 

 折れた剣心の刀を見ながら宗次郎くんがつぶやく。

 

「ああ」

 

 それにしっかり返事をする斎藤はきっと地獄耳に違いない。

 

「お互い戦闘不能で引き分けってトコだな」

 

 宗次郎くんの刀は傍目にもわかるほどボロボロに欠けていた。

 

「よっしゃ! さすが緋村!」

 

「へえ、こりゃ凄いや。これじゃ修復はもう無理だ。……ま、いいや、どーせ志々雄さんのだし」

 

 そして宗次郎くんが刀を鞘に納めてこちらを向いた。

 

「行きましょうか、裕美さん。余り遅れると志々雄さんに追いつけなくなってしまいます」

 

「リョーカイ」

 

 私は斎藤たちのそばを離れ宗次郎くんの元へ向かう。

 

「今日はこれで失敬しますけど、出来たらまた闘ってください。その時までに、新しい刀、用意しておいて下さいね」

 

 宗次郎くんとともに階段を降り、地下道を通って外へ出る。

 

「裕美さん、ちょっと急ぎますけど、付いてこれます?」

 

「馬みたいにアホなスピードじゃなければそれなりに。ってゆーか宗次郎くんは私の最速スピードとっくに知ってるでしょーが。あれで追いつける程度でよろしくねっ」

 

 彼はくすりと笑って、私を置き去りにするスピードで50mほど先まで移動した。

 

「リョーカイ、です」

 

 全ッ然、リョーカイしてないじゃないのコラー!!

 私はオーラを足に割り振って全力ダッシュで彼の後を追いかける。

 結局志々雄の下にたどり着くまで、私が彼に追いつくことはなかった、コン畜生。

 それでも手加減されてるっていう事実にまた腹が立つ!


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