meet again 作:海砂
「俺の横に侍らすにゃあちっと色気が足りねぇな」
初対面でいきなりダメ出しを食らってしまった。
私は宗次郎くんに連れられて、新月村という村を訪れていた。
温泉に浸かって汚れを落とし、着物に着替え、そして志々雄真実との初対面。
動きやすいように頼み込んで女性用の着物ではなく男性用の袴にしてもらった。
「別にそのために連れてきたわけじゃないですからね、そういわれても困りますよ。で、どうです?」
「……初めまして、志々雄真実さん。私は桂木裕美と言います」
裕美、と名乗った所で隣にいた由美さんの表情がピクリと動いた。
「キャラ被りはちょっと困るわねぇ」
「そこのところは大丈夫です。なにせ私に色気はないようですからコン畜生」
私の嫌味を物ともせず、華麗に無視して志々雄は話を続ける。
「俺に見せたいものがあるそうだな。それは何だ?」
宗次郎くんには前もって見せておいた。だからこそ私はこうしてここに居る。
私は何も言わず、この場で全力の『練』を見せた。
全開のオーラが志々雄の元へも届く。
「ほう……!」
宗次郎くんを見た時から気づいていた、この世界にも念能力がある。
そして私自身も使うことができる。
ドラえもんの道具はともかくとして、基礎の四大行だけでもある程度の一般人ならどうにかできるだろう。
原作に出てきた操ちゃんのように逆追い剥ぎをするという手もあったかもしれない。
けれどその前に私は宗次郎くんに助けられてしまった。
……恩は返す、私の流儀だ。
「少しなら、お役に立てるかと」
「びっくりしましたよ、ただの女の子だとばかり思ったのに。一度手合わせしてみたかったですね、もし彼女が刀を使えたなら」
私は刀を使えない。真剣はもちろん剣道の素養もない。
けれど一流の剣客が持つそれと同程度の
「得物は何だ?」
「特に何も。学んだことがないだけで刀を振り回せと言われればやりますし、ステゴロでと言われればそれでも」
くっくっくっと愉快そうに笑う志々雄。随分と機嫌がいいようだ。
「宗次郎、そっちの裕美はお前に任せる。しばらくここで休んだらともに東の『十本刀』を集めて来い。桂木裕美、お前は宗次郎の直下に付いて何事も宗次郎の命のままに行動しろ。なに、そう大変なことじゃねぇはずだ。宗次郎の気性はすでに知っているだろう?」
「はい……わかりました」
私は、この道を選んだ。ただしけして志々雄の配下になるわけじゃない。
彼の求める弱肉強食の世界は私にとって好ましくはない。
内側から彼らを突き崩す……出来るかどうかはわからないけど、やってみようと思う。
もちろん、宗次郎くんに恩を返してからになるけど。
「あらためて、よろしくおねがいしますね」
「こちらこそ」
宗次郎くんと笑顔を交わす。
……いずれは裏切ることになるかもしれないけど、それでも彼は私の恩人だ。
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「先生、三島栄一郎からの連絡が途絶えました」
「……構わん、どうせ寄る道だ。このまま新月村へと向かう」
「わかりました、緋村の方はどうしますか?」
「放っておけ、あいつの足ならそろそろ京都に着いていてもおかしくはない。俺達が京に入ってから行方を捜す程度でいいだろう」
「はい」