meet again 作:海砂
私は目覚めると、山の中に一人座り込んでいた。
ココハドコ、ワタシハダレ? ……なんてね。
私は桂木裕美。たぶんハタチ。たぶん大学生。
でもココハドコ? これは本当だ。見当がつかない何もない山の中。
ただ木々が生い茂っているだけだ。
道路は舗装されていないけど、私のいた世界だって山道は舗装されていないところも多い。
つまり自分がどんな世界にいるのかがさっぱりわからない。
ハンター世界なのか、デスノ世界なのか、現実なのか、それともさらに別の世界なのか。
いつまでも座り込んでいても仕方ない。私は立ち上がった。
「よう、ねーちゃん。殺されたくなかったら有り金全部置いていきな」
物騒なセリフが聞こえました。逃げられるかなー、無理かなー。
あきらめて振り返るかなー、でもお金なんて一銭も持ってないしなー。
そんなことを考えながら振り返ると、血の雨が降った。
目の前にいた山賊(?)が一刀両断されて、その血が私に降り注いだのだ。
「……え」
そして胸元から下だけになった元ヒトの向こう側にいたのは、その場に不似合いな一人の笑顔の青年。
「あ、ごめんなさい。汚すつもりはなかったんですけど、助けたのとおあいこってことで許してくださいね」
……OK把握した。ここはるろうに剣心の世界。そして目の前にいる青年は瀬田宗次郎。
ということはあれか、ここは明治かその前後。
「あの、すみません、今日は何年の何月何日ですか?」
「え? えーと、明治十一年の五月十六日ですね」
青年は笑顔を崩すことなくそう答える。五月十六日……ということは、大久保利通の暗殺は済んで、志々雄真実の元へと向かっている最中ってところか。
「あの、お願いがあるんですけど、私実は迷子でして、どこか近くに温泉にでも入れるような場所はないでしょうか。この格好で宿場町に入るわけにもいきませんし……」
頭から服から足まで全身血まみれ。通報されるわこんなん。
「……じゃあ、僕と一緒に行きましょうか。僕の目的地には温泉も湧いてますし、僕と一緒ならその格好でもとりあえず大丈夫だと思いますよ。替えの着物も手に入ると思います……って、ずいぶん変わった服ですね、洋装ですか? それ」
「まあ、そんなところです。ご迷惑じゃなければ、よろしくお願いします」
「いえいえ、半分は僕のせいみたいなもんですし。じゃあ行きましょうか、僕は瀬田宗次郎って言います。あなたの名前は?」
……名乗るしか、ないよなあ。
「桂木裕美です」
「へぇ、僕の知り合いにも由美さんって人がいますよ、奇遇だなあ。そう遠くはないので短い間になりますが、よろしくお願いしますね」
……わざとそういう流れに仕向けたのは私だけど、時期的に原作の新月村の辺りになるのだろう。
つまり私はこれから、志々雄真実の元へ向かうことになる。
これは一つの賭け。
女一人で明治の世を何の後ろ盾もなく生き抜くか、あるいは原作の物語に沿うか。
「言い忘れてましたが、助けてくださってありがとうございます」
「ただの気まぐれなんで、お礼なんていらないですよ」
『歴史』は正直ほとんど覚えてないけど、『原作』ならある程度覚えている。
さて、賽の目はどう出るかな?
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