meet again 作:海砂
注)コレは作品主要キャラが街に放逐されてクリスマスを楽しんだ場合のifストーリーです。本編とは何ら関係がありません。
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今日はクリスマスイブだ。
街中はネオンで煌びやかに飾られて、チキン屋とケーキ屋は大繁盛。
そんな街を尻目に、俺はミスドに行って、一人分のケーキ(ドーナツとかパイもだけど)を買って帰った。あ、あとモスチキン。
「はいはいめりーくりすます……」
一人暮らしには割と骨身にしみる時期だ。色々と切ない。けどあまり気にしないことにしている。世のリア充どもよせいぜい束の間の幸福を味わうがいいさ!
いやぶっちゃけ、クリスマスが無いってのはマジありがたい。彼女がいた頃はやっぱしプレゼントとかディナーとかそれなりに金使ってたし。
その分全部正月に回して、リッチに温泉旅行に行こうと思ったら両親もついてくる事になった。しかも全額俺持ち。これは何ですか新手の拷問ですか……。
まあ、たまには親孝行もいいだろう。一人暮らしし始めてからめったに実家にも帰らなくなっていたしな。
というわけで、俺のクリスマスはこれにて終了、さてネトゲでもすっかな。
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『もしもし、裕美? メリークリスマス』
突然のシュートからの電話。今の時期は来季の年棒交渉に入ってるので、クリスマスのことなんかすっかり忘れてると思ってた。
『メリクリ。来季の給料はどんな感じですか?』
『へへ、まかせてよ。何てったって新人王だぜ?』
『暴投王も同時に襲名したくせに』
『うっ、まあそこはそれ……』
シュートも私も相変わらず。誕生日もクリスマスもないし、それが当然だと思ってた。
『ところで今、暇?』
『そりゃ電話できるくらいだから、暇だけど』
友達はみんな彼氏とデートか、独り身同士のパーティーに行ってしまった。中途半端な私はどちらにも混じれなかったのだ。だから、一人。
『とりあえず、部屋の窓の外見てよ』
……へ?
窓の外をのぞくと、庭の向こう、塀の外側に見覚えのあるベンツの四駆が停まっていた。
『暇ならおいでよ』
私は慌てて電話を切り服装を整えて、外に走る。車の運転席にはシュートが、居た。
「なんで……?」
「会いたかったから。それじゃダメ?」
後部座席にはプレゼントらしき大きな包み。……いや、こんなのアリ?
「いたいいたいいたい!」
信じられない私は、思わずシュートの頬をつねっていた。夢じゃない。
「……気に入らなかった? 来ない方がよかった?」
だから、どうしてそんな捨てられた子犬みたいな目で私を見るのよう。
「……そんなわけないじゃん!」
とりあえず、私は助手席に乗った。これからどうしようか? ドライブでもする?
もう夜だけどね……。ああ、夜景の綺麗なとこにでも行こうか?
少女マンガのような展開に私は全力で喜んでいた。本当に、ありがとう、シュート。
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「キリストの誕生を祝うのが、この国では恋人達の祭りになっているのか。面白いな」
どうにも手持ち無沙汰なので、ウイングの家に遊びに来てやった。今日はクリスマスイブだというので、街中のあちこちでケーキやチキンを売っていたのをたっぷりと持ち込んで。
「俺はお前さんとクリスマスを過ごすなんて思ってもみなかったぞ……」
「まあいいだろう。ほら、シャンパンもある。折角だから粛々と聖誕祭を楽しむことにしよう」
なんだかんだ言いながら、ウイングもそれなりに楽しそうだ。オレはオレで、これもありだと思っている。もう少し人数が居れば寂しくないのだが……シュートとパームも呼んでみるか?
静止するウイングを振り切って電話をかける。
『もしもし? ウイング?』
「オレだ。暇ならウイングの家に来い。今ならローストチキンとシャンパンにケーキがお前達を待っているぞ」
『行く行く!!』
シュートがこちらに来ていることは既に知っていたからな。そして多分パームと一緒にいるのだということも。電話を切ると、ウイングが複雑な表情でオレを見ていた。
「俺は今頃シュートが殴られてるんじゃないかと思うと不憫でならないよ……」
何を言っている。パーティーは人数が多いほど楽しいだろう。それに、これだけの量を、オレとお前だけでは食いきれないだろう?
「ところでお前さん。まさかこのご馳走、盗ってきたんじゃないだろうな」
「…………」
オレの本業は盗賊だが、それが何か問題でも? 念のため言っておくが、人を殺したり傷付けたりはしていないぞ。この国の法律に則って、こっそり正々堂々と奪い取ってきた。勿論見付かるようなへまはやらかさない。
ウイングが大きなため息をついた。
まだまだ続くよ!