meet again   作:海砂

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トゥルーエンド

 ウイングに呼ばれていったらクロロが出刃包丁を持っていた。

 うん、それだけ。じゃ、私は逃げ……

 

「待てやゴルァ」

 

 ウイングに捕まった。地獄に道連れにする気かテメェ!

 

 

「パームだけ逃げてもどうしようもないと思うよ。ウイングの言うとおりにしておこうよ」

 

 この惰弱な男どもめが! 私はもう現代日本以外の世界に行くのは嫌なんじゃー!!

 

 と、ひそひそとウイングが耳打ちをしてきた。

 

「……『現実逃避』(パラレルトリップ)」

 

 なるほど一旦向こうに行って、改めてトリップしようというのね。でもさ、それでこのデスノの世界に来たわけでしょうもしかしたらもっと危険な世界に跳んじゃうかもしれないでしょ絶対やだよ私、北斗の拳の世界とか。

 

 

 

「で、どちらにするか決まったか? 向こうに行ってから死ぬか、死んでから向こうに行くか」

 

 ちょっと待った団長、私らが死ぬのは絶対条件なわけですか?

 

「間違えた。ちょっと最近殺し足りなくてな」

 

 だからって私達を生贄にしないでください……だめだこいつ、このまま放っておいたら竜崎あたりを生贄にしそうだ……。

 

「木の実、食べます。ください」

 

 三人がそれぞれ、木の実を受け取った。ドングリがちょっと大きくなったような実。これ、噛めるんだろうか。硬そうだなぁ。

 

「せーので食うぞ」

 

「オレはお前たちが飛んだのを見届けてから戻ることにする」

 

 覚悟決めなきゃいかんとですか。ていうかこの世界は……ま、もう大丈夫かな?

 

 それでは……せーの!!

 

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 戻った世界はいつもと変わらない青い空。オレの故郷、薄汚れた大地。

 

 

「お帰り。念願のものは手に入れた?」

 

 バトルオリンピアで遊んでいるといっていたが……どうやら能力者の力を用いて俺達の様子を窺っていたようだ。ヒソカは戻ったオレの、すぐ傍に居た。

 

「ああ……尤も、死神は憑いてきていないようだし、この世界でも通用するかどうかはわからんがな……」

 

 そう、向こうの世界で念が通用しなかったように、この世界でノートが通用しない可能性は十分にある。まぁ、その時はその時か。

 

「さて、誰で試してみるか……」

 

 オレはノートを開いた。

 

『らめぇぇぇぇぇ!』

 

 ノートを閉じた。何だ今のは。もう一度ノートを開く。

 

『祐巳さん……』

 

 これは……マリア様がみてるの同人誌……何故。

 

「ボクは見てたんだけどね、クロロの持っていたデスノートを偽物にすりかえるウイング達を……それを伝えるすべがなかったのが残念だったな♥」

 

 ウイング……最後の最後でやってくれたな。転んでもただでは起きないということか。まったく、アイツらしい……。

 

 

 

「あの三人はどうした?」

 

「三人? また別の世界に跳んじゃったみたいだよ? アイツに聞いてみればわかるんじゃないかな♦ また追いかけるの? それとも今度はちゃんと、この世界に連れてくることのできる能力者を探す?」

 

 さて、どうするか。こちらに戻らないとは……まぁ、奴らの出身がこの世界でないことを考えれば、それもありか。

 

「また覗いてみて、興味をそそられるような世界だったら跳んでみるさ。その前に、オレは念を取り戻さないといけないしな……」

 

 覗き見る能力、跳ぶ能力。この能力も、手に入れられれば面白くなるだろう。能力者本人が跳ぶ事ができないのが難点だが……まぁ、ヒソカにでも行かせればいい。

 

「じゃあ、ひとまずは放置って言うことで♦ 除念能力者のところへ案内するよ、だからボクとの約束も忘れないでね♥」

 

 わかっている。

 

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 僕はウイングから大切な物を預かった。信頼できる人間に渡してくれ、と。それは……すり替えたデスノート。本物のデスノートだ。

 

 彼らが帰った後、所有権は僕に移ったようで、四六時中死神が憑いて回る。これはどうにかしたい。だが誰でも良いというわけではない。誰に渡すか……竜崎を真っ先に思い出したが、一人の人間がノートを独占するのはあまりにも危険ではないか。それに、竜崎は使ってみたいというようなことも言っていた。できれば別の人物で、同じくらい信頼できる人物……。

 

「それで、ジェバンニさんは僕を?」

 

「ええ。夜神くんなら竜崎と同じくらい信用できるし、このノートを悪用もしないと信じている。……ひとまずのキラ事件は終了したので、僕はアメリカに帰るつもりだ。竜崎と相談してくれても構わないし、君が責任を持って保管してくれるのならそれでも良い。無責任かもしれないが、頼めるか?」

 

「……はい、責任を持ってお預かりします」

 

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『結局お前の所に戻ってきちまったな』

 

 クク……運命さえも味方をする……つまりそれは、僕が神であるということの証だよ、リューク。

 

 ジェバンニは所有権を放棄し、このノートの所有権も僕の物となった。すべては元通り。所有権のことを竜崎に知られてしまったのは問題だったが、竜崎に僕を追い詰めるすべはない。あとはミサとレムを利用して、竜崎を殺させる……全て、計画通りだ!

 

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「と、言う訳だ……。カナ、君はキラに何を望む?」

 

 切れ端を与えて、話を聞いた。彼女とクロロの会話を聞いて、キラを捕らえる以外の何かの目的を彼女が持っているということは知っている。もしかしたらミサのように利用できるかもしれないと考えたからだ。

 

 彼女に渡したのは名前を書くスペースもないほど小さくちぎった欠片、対して僕はノートを開き、いつでも名前を書き込めるようにしてある。僕が殺される心配はない。

 

「……ウチを裁いて」

 

「何故?」

 

「ウチは、兄貴を殺した。苦しんでるのを見ていられないという理由で。……キラが裁くのにふさわしい罪人やろ? ホンマは竜崎に捕まりたかってんけど……まさか、叔父さんたちが捕まるとは思わんかったし、捕まりそうになったらアタシに所有権譲れってあれほど言っといたのに……」

 

 そんな余裕はなかったさ。それに君はこの捜査本部に居た。所有権の譲渡をできる状況が整っていない。……それくらいの想像もつかなかったのか?

 

「君を殺すことはしない」

 

「何でや!!」

 

 不必要だからだよ、桜木加奈子。

 

「キラは悔い改めようとしている罪人を裁くことはしない。それに、今渡した切れ端を返してもらえば、君の記憶は全て消える。もう苦しむこともなくなるだろう。それに……」

 

 葉鳥の息子。

 

「親族が誰もいない、両親を失ったあの子の面倒は誰が見る? 君と似た立場に立つであろうあの少年を導けるのは君だけじゃないのか?」

 

 カナはしばらく悩んでいた。何も言わず俯いて、ずいぶんと長い間考え込んでいた。

 

「……それが、ウチの罪滅ぼしになるんかなぁ……」

 

「少なくとも、あの子に罪はない」

 

「……わかった、ほなコレ、返すわ」

 

 桜木加奈子は僕に紙片を返却し、全ての記憶を……僕がキラだという記憶も失った。これで構わない。彼女から秘密がもれる心配はない。

 

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 そして、三人の行方は……。

 

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 っは!

 

 

 

「……え?」

 

 手を見た。足を見た。起きた。立ち上がった。鏡を見た。俺だ。

 

 ……って夢オチかよ!!

 

 部屋を見渡す、俺の部屋だ……が、何故だ? 買い換えたPCが捨てたはずのブラウン管に戻っている。どこいった俺の液晶デスクトップ!

 

 突然、電話が鳴った。出た。怒鳴られた。

 

『成瀬先生!! 今どこで何をしてるんですか!?』

 

 昔勤めていた高校の口うるさいイヤミな学年主任だ。ついにこいつ、ボケたか。

 

「僕はすでにそちらの学校を辞めているはずですが」

 

『何ボケたこといってるんですか!! とりあえず今日は有給扱いにしておきましたけど、月曜はちゃんと出てきてくださいよ!!』

 

 きられた。有給? は? え?

 

 PCをつけて日付を見た。七月? 2006年!?

 

 OK落ち着こう。PCが元に戻ってた。買ったはずのフィギュアが無い。あれだ一番最近買ったのはプーリップっていう人形の綾波レイバージョンだ。もちろんそれもない。検索してみたけど出てこない。発売すらされてない。

 

 電話が再びかかってきた。出ると、今度はパームからだった。

 

『拓ちゃん! 私ら元の世界に戻ってる!! つか私また高校生からやり直しになってる!!』

 

 どうやら部屋で目覚めたところ、家族に『高校行かんかゴルァ』と怒られたらしい。えーとつまり、俺らが一番最初に『跳ぶ』前に戻ったって事か?

 

「よし桂木、今日は土曜日だ、行くぞ」

 

『ってどこに?』

 

 決まってるだろ。

 

「シュートの甲子園出場を見に、な!」

 

 

true end.




一時間後に、また。

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