ダンジョンでウホッするのは間違っているだろうか。   作:アルとメリー

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えーと、お久しぶりです。
現在出張中のため著しく執筆速度が落ちてます。
携帯で書き溜めていたものをアップしますが改稿する可能性が大です。
推考してないもので。
それでもよければどうぞ。

原作ぇ。


超弩級!特化ソーサレスの恐怖!

 其処はオラリオの上空。

 一人の女性が空中で制止していた。

 黒く艶やかな髪を靡かせ、鋭利な瞳が特徴の美女。

 其はまさに嵐の前の静けさ。

 静かな怒りが辺りを焼き付くすかのように充満する。

 其は逆らうことの許されない神の怒りの如く。

 この日、オラリオから一つのファミリアが消える。

 逆鱗に触れた罪人に下される天罰のように。

 見上げた空は荒れ狂う嵐の様相。

 直前の快晴が嘘のようである。

 

 さあ、此処に神の審判が下される。

 

 降り注ぐ氷柱の雨。

 流れ落ちる燃え盛る隕石。

 荒れ狂う雲と地面を繋ぐ光の柱。

 

 天変地異は始まったばかりである。

 

 

  ■  ■  ■

 

 

 時は遡る。

 

 其処はロキファミリアのホームのリビング。

 ロキとホーリィはお互いに向き合い真剣な顔をしていた。

 

 ことの発端はリリルカ・アーデという少女が襲われ、暴行され、強奪されたことから始まる。

 其を取り敢えず丸く納めたホーリィはリリルカ・アーデの所持品を新調し、その後居酒屋へと至る。

 そこでお酒を交えつつ話をしていたのだが、酔いも回ったのかリリルカ・アーデは自分の置かれた状況を語る。

 其は自信の過去にまで及んだ。

 全てを語り終え、泣き疲れて眠るリリルカ・アーデを抱き上げたホーリィは一旦ロキファミリアのホームへと帰った。

 その時の顔を見たロキに連れられて今に至る。

 

「なんや、ホーリィ顔が怖いで?どないしたん?」

 

 心配そうに聞くロキに対して無言のホーリィ。

 

「それに、なんや可愛い小人族拾うてきとるし。」

「その件について話がある。」

「お、やっと喋ったやん。ってわかっとるで?真面目な話なんやろ?」

「ロキ。リリ、その小人族だが、このファミリアに入れてやってくれないか?」

「へぇ~。ホーリィの頼みやから聞いてあげたいんは山々なんやけどそれは無理やな。」

「………。」

「なんも知らんホーリィに説明し足るわ。まずな、ファミリアの移籍自体は可能や。可能やけど条件があるんや。ある特定の時を除き、ファミリアの主神同士の同意が要る。まあ、うちが圧力かければできへんこともない。でもな、無理矢理の引き抜きはオラリオではタブーとされとる。もししたら、オラリオで総スカン食らうんは覚悟せなあかん。そんでな、一番ダメな理由はな、うちがそいつに魅力を感じへん。自分のファミリアを危険にさらしてまで引き入れる魅力をな。」

「そうか。―――――――だが、俺がやることは変わらん。」

 

 沈黙が部屋を支配する。

 其を是と受け取ったのかホーリィは立ち上がりロキに背を向ける。

 

「なに、ファミリアには迷惑をかけんよ。」

 

 そう言って立ち去るホーリィの背中にロキの呟きがやけにはっきりと届いた。

 

「これは独り言や。ある特定の条件、もしそのファミリアの主神が死んだなら、主神の消えた可哀想な小人族をうちが引き取ることがあるかもしれへんなー?それと、うちの可愛い子供に迷惑かけたら、いくらホーリィでも許さへんからな。」

 

 ピクリと立ち止まるホーリィ。

 そのまま振り返ることなくついに扉をくぐって出ていった。

 

 其は将に枷をはずされた猛獣のように。

 

 ホーリィが立ち去った方向を見やるロキに部屋の片隅で様子を窺っていた双子が小走りに近づく。

 

「ろき~!?なになに!?何が起きたの?これから何が起っちゃうの?」

「………ロキ、行かせちゃって良かったの?聞いてたけど、多分これからどこかのファミリアに殴り込みに行く感じだったでしょ?あの人、この間加入したってことはレベル1ってことよね?死んじゃうよ?」

 

 双子の意見はもっともな話である。

 一般的なレベル1に当てはめるとそうなのではあるが。

 

「ティオネ、ティオナ。すぐ動けるよう準備しておいてくれへん??もしなんかあった場合、手を借りることになるかもしれへんわ。」

 

 頷いた二人はすぐに自分の部屋へと走っていく。

 

 だが、双子は勘違いしていた。

 ロキの懸念していることは双子と全く逆のことである。

 

(何処のファミリアか知らんがご愁傷様や。ギルドから何を言われてもええように準備だけはしておかんとな。)

 

 ロキの心配はやりすぎであった。

 冒険者を数人再起不能にする程度なのか、ファミリアの団員を粛正する程度なのか、一つのファミリアを壊滅させるのか。

 その時の主神は拘束するのか追放するのかはたまた送還に追い込むのか。

 

 存外、神は下界で死ぬときはその無念を呪いとして残すことが多い。

 しかも想いの籠った呪いを。

 

 ロキはホーリィが負けるとか死ぬとかは全く心配していない。

 問題は方法であり、結果ギルドのブラックリスト入りを心配していた。

 

 その為、もしもを想定して動こうとしていた。 

 

  ■  ■  ■

 

 

 DIABLO2の最初に選べる職業のひとつにソーサレスがある。

 炎、氷、雷の魔法を駆使して敵を倒す魔法使いである。

 しかし、3つの属性はあれどそれを満遍なく取得すると器用貧乏になり火力が足りず後半で行き詰ってくる。

 その為考えられたのは一点特化の属性極振りソーサレスである。

 一つの属性のみを極めたまさに火力の権化。

 但し、その属性の耐性を持ったモンスターには無力であるという致命的な弱点が存在するが。

 そう、廃人であるホーリィももちろんその特化ソーサレスを無数に作っている。

 

 

・ファイアーソーサレス。

 ファイアーボールとメテオに命を懸ける有り得ない火力を誇るソーサ(アンダリエルというボスを3秒で倒せる)。

・ファイアーウォール特化ソーサレス。

 地面に炎の壁を発生させ、継続ダメージを与えるソーサ。

・ハイドラソーサ。

 地面から三つ首の炎の矢を吐き出すドラゴンを召喚するソーサ。

・ライトニングソサ。

 有り得ないほどの表記ダメージを叩き出す瞬間最大火力を有するライトニングを主力においたソーサ(装備によってはノヴァをメインで使う)。

・鰤ソサ(ブリザードソーサレス)。

 ブリザードという氷柱を一定範囲内に継続的に降らせるソーサ(マスタリーで敵のレジストを下げるため有り得ない殲滅力を誇る)。

 

 

 ラスボスを10秒以内で瞬殺するほどの火力を秘めている特化ソーサレス。

 DIABLO2というゲームでは当然ではあるが途中でキャラクターは変えることはできない。

 ではここではどうだろう。

 タイムラグはあれど変えることが出来るのである。

 

 

 ここに夢の競演が始まった。

 

 

 

 

 

 ロキファミリアをでたホーリィは一瞬で姿を変える。

 姿を変えたホーリィはテレポートを繰り返すとオラリオの上空へと至った。

 目標の位置はリリから聞いている。

 オラリオの街の中ごろに存在する大きな建物。

 それをホーリィは確認した。

 

 現在ホーリィは空中に浮いている。

 その姿は紛れもないソーサレスの姿。

 鋭利な瞳に靡く黒髪。

 上空で風にあおられて浮かぶ姿はいっそ神々しい。

 

 そしてその姿はソーサレスのスキルであるテレキネシスによって自身を空中へと縫い付ける。

 その姿が微妙に変わる。それと同時に重力の楔に従い地上へと動き始める。

 

 そのとき、世界が変わった。

 

 世界が赤く塗り替わる。

 

 建物の敷地を囲むように吹き上がる炎の壁。

 それはまるでゲヘナの火。

 地獄に吹き上がる焔のように全てを取り囲む。

 

 その次に起きたのは雨。

 

 ただし、それは単なる雨粒ではない。

 一つ一つが1メートル以上の大きさの氷柱の雨。

 其れが炎の壁の中へと降り注ぎ始めた。

 

 其れはまだ地獄の始まり。

 

 次に降り注ぐは燃え盛る隕石。

 一つではない。

 数えるのも馬鹿らしい数の隕石。

 

 そして生まれる炎で出来た3つ首の竜。

 それは絶え間なく人影に炎の矢を吐き出す。

 合間を縫って降り注ぐ雷鳴。

 

 

 一体どれだけの怒りを買えばこうなるのか。

 

 

 一つでも建物一つ程度更地にできるだろう。

 其れが一斉にかのファミリアのホームを襲った。

 

 ある人は炎に焼かれあっという間に炭化し、ある人は氷柱に押しつぶされる。

 隕石の落ちた後は爆発し、その跡地は燃え盛る。

 

 其れは神すらも例外ではない。

 時間をおかず、天に向かって光が立ち昇る。

 それは地上で神が死んだ証。

 

 それを見たホーリィはようやく過剰なまでの攻撃をやめた。

 

 時間差の程度はあれ、全て灰塵と化した。

 後に残ったのはただの更地。

 短時間に発生した地獄の跡が残る土地のみが残された―――――――――。

 

 

 

  ■  ■  ■

 

 

 ロキファミリアのホーム。

 そこはリビングであった。

 ロキファミリアの主要なメンバーである双子のアマゾネスが完全武装でそこに仁王立ちをしていた。

 その中心には主神たるロキ。

 腕を組んで目を閉じている。一体何を考えているのかその閉じられた瞳からはわからない。

 そしてその主神ロキの目の前、ソファーの上に一人の少女。

 ソファーに座り、手を膝の上に置いたその少女は物理的に震えている。

 

(どどどどういう状況でしょうかこれは!?何故リリはロキファミリアの面々に囲まれているんですか!?なんでですか!?意味が分かりません!これは夢なのでしょうか?大変現実味のある夢なのですが、夢なら早く冷めてください。)

 

 半ば以上に現実逃避した少女―――――リリルカ・アーデは死んだ魚のような目になっていた。

 そんな中、目の前の3人は話し始める。

 

「ねぇねぇロキ?聞いてもいい?」

「なんや?」

「何でさっき止めなかったの?今も私たちを向かわせること無く待機させてる。普通じゃ考えられない。」

「………。」

「もしファミリア間の抗争に発展するんだったら大問題になる。なのに動かない。団員を集めさえしないっていうのはちょっと納得できないかな。」

「あ、それは私も思ったんだよね。あの人ってレベル1でしょ?私たちに言ってもらえば行くのをやめさせるのは簡単なのになーとはおもってたー。」

 

 アマゾネスの双子は揃ってレベル5。恩恵を受けたばかりの新人を取り押さえるのなど造作も無い。

 しかも、言葉の端々から他のファミリアにカチコミに行くというのである。もしそれが行われればロキファミリアとしても動かざる終えない。そういったことを事前に防止するためにも一旦取り押さえて頭を冷やさせる必要があったのではないかとティオネは言っているのである。

 

「んなもん言われんでもわかっとるわ。でもな、それは不可能や。言っちゃ悪いが、二人じゃホーリィに指一本触れへんで?」

「………本気で言ってるの?」

「本気も本気、マジや。………ええ事教えたるわ。ホーリィの入団試験の時、ベートを焚き付けて決闘まがいの事をさせたんやけど、瞬コロやったわ。恩恵も何ももたん一般人がレベル5のベートを一撫でや。しかもやった後にやっちまった感丸出しやで?それが二人に増えたかて大して変わらん。問題はそこやない。どうやってホーリィのことを他のファミリアから隠すか、や。」

 

 ロキの言葉にどこか納得のいかないティオネ。

 しかしそれをいうタイミングは失われた。

 

「今帰った。」

「はっや!?」

 

 何食わぬ顔で帰ってきたホーリィに全ての視線が集まる。

 ホーリィが出て行ってまだ10分程度しか経っていない。

 ざわめく双子を他所にホーリィはロキの隣に立つ。

 

「万事恙無く終わった。これで良いんだろう?」

 

 ホーリィの言葉にピクリと反応するロキ。

 その閉じられた瞼が大きく開く。

 

「ホーリィ、結局なにがあったん?説明せぇ。」

 

 それはもっともな意見。

 未だ何が起きたのか詳しくは知らされていないのである。

 

 

―――――――――――筋肉説明中。

 

 

「それじゃあなんか?結局そのリリとかいうちっこいの一人の為にファミリア一つ完膚なきまでに壊滅させてきたっつうことか?」

「まあ、概ね。」

「かぁ~~~!うちの見通しが甘かったっつうことか。もうすんだことはええ。ギルドから何や言われるかも知れんけど、知らぬ存ぜぬで通すしかないわ。はぁ~。」

 

 ため息一つ。

 ホーリィは簡単に言うが事は非常に大きい。

 中堅どころのファミリアをものの10数分で壊滅させるのも常識はずれであるし、それを全く悟らせないというのもまた常識はずれである。ロキファミリアとしては恐ろしいワイルドカードを持つと同時に爆弾を内に抱えているようなものである。ホーリィの行動に一層の制限をかけなければと思うのは当然の帰結であった。

 

「いろいろ言いたいことはあんねんけど、一つ聞かせぇ。結局なんでそこまでしようと思ったんや。言っちゃ悪いけど、そういう不幸な奴はこの町には沢山おるで。なにがホーリィの琴線に触れたんや?」

 

 ロキとしてはこれからのホーリィの行動予測のために聞いておかねばならない事柄なのだろう。

 しかし、その返答はロキにとって聞き捨てならない内容だった。

 

「俺の大切なもの(ドロップアイテム)を奪う盗人等、やられても(PKされても:プレイヤーキル)当然だろ?」

 

「………そ、そんなにこの小人族が大事なんか?」

「まあな。(約束を)叶えてやると約束したしな。」

「(お前の面倒を一生見てやる的な事を)叶えてやるって、うちのことはもうええの!?」

「は?いやいや何の話だ?とりあえずリリの加入の件を」

「何の話ってうちとホーリィの話やないか!うちのこと散々弄んでおきながらもう次の女やて!?うちをなめるんもたいがいにしさらせ!」

「待て待て、落ち着けって。とりあえずほら、アメちゃんやろう。」

「おおきに。ってなんでやねん!?100万歩譲って愛人作るんならうちの許可とるんがスジやろ!」

「は?愛人って何の話だよってちょいまて!」

 

 ホーリィを押し倒すロキ。

 

「もう怒った!こうなったら既成事実作ったる。覚悟せぇ!」

 

 そう言ってショートパンツを脱ごうとする。

 

「まてまてまて!周り!周り見ろって!」

「――――――――え?」

 

 言われてやっと周りを見たロキは固まる。

 そこには顔を手で隠しながらもニヤニヤしながら興味心身に見つめるアマゾネスの双子。

 そして顔を赤くして何やらブツブツと愛人………と呟くリリ。

 

「あ、私らのことは気にせずにどうぞどうぞ?」

「わたし愛人2号に立候補しても良いかな?ちょっとだけで良いから、さきっちょだけ?あ、でも子供は10人はほしいなー。」

 

「ぎにゃああああああ!!」

 

 ロキの悲鳴が木霊した。

 

 

  ■  ■  ■

 

 

 痴話喧嘩?の行われたのは今は昔。

 すまし顔のロキはリリへの改宗を済ませていた。

 

「これでええんやろ?でもな、ホーリィ。今度は事前にきちんとうちに説明してぇな。うちで庇いきれへん事もあるんや。逆にこういうことはうちの方がよう知っとる。」

「わかったわかった。」

「わかっとらん!全くわかっとらんわ!今回の事、下手をすればオラリオ中のファミリアが敵に回ってもおかしゅうない。今頃大騒ぎになっとるはずや。」

「ほー、そら大変やなぁ。」

「今回という今回はゆるさへん!暫くは監視をつけることにするで。そうやな、リヴェリアらへんに話しておくわ。」

 

 ちょっとばかりお怒りなロキと話をする傍ら、双子のアマゾネスの片割れ、ティオナは疑問に感じていた事を口にする。

 

 

「――――――で、ホーリィはどれぐらい強いの?」

 

 

「ロキがそこまで特別扱いするにはそれなりの理由があるんだろうけど、ぽっと出の新人にそれをするんだったら私たちを納得させるべきだと思う。」  

 

 ティオナの言葉に同調するティオネ。

 スッとさり気無く、阿吽の呼吸でホーリィの両脇に移動した双子はその腕を取る。

 

「「ロキ、ちょっと借りるから。」」

 

「あ、はい。」

 

 引きずられて連れ去られるホーリィを尻目に今度はリリに向き直るロキ。

 

「ほな、うちのファミリアの説明すっで。」

「は、はい!」

 

 

  ■  ■  ■

 

 

 ここオラリオにはアマゾネスという種族がいる。

 褐色の肌をした女性のみで構成される種族。

 女系種族であるが故に子を授かるには他種族の男と交わるしかない。

 その為、彼女たちは非常に露出の高い服装を好み、時として男を誘惑する。

 

 しかし、アマゾネスという種族の男の選び方は非常にシンプルであった。

 強い子孫を残す為には強い男の子を孕めば良い。

 その為、非常に男に対して理想が高い。

 それは冒険者でありレベル5まで到達した双子も同様であった。

 むしろその傾向はより顕著となっている。 

 

(ティオナ、ここまでお膳立てしたんだから、うまくやりなさいよ?)

(ありがとっ!でも見た目はドストライクだけど弱かったらイヤだな~。)

(大丈夫かもよ?ロキがアレだけ太鼓判を押すんだもの、それに弱かったら育てれば良いし。)

(それ知ってる!光源氏計画って言うんだよね!?前にどこかの神様が言ってたの聞いたことがあるよ。)

(そういうことよ。ま、とりあえずもんでやりますか。)

(おっけ~!)

 

 流石双子である。

 目線だけで会話をしていた。

 

 そうこうしているうちにホームの前の広場に到着する。

 

「あ~、お嬢さん方。この体勢は非常に嬉しいんだがそろそろ離してくれないか?」

 

 現在の体勢は正しく両手に花。男としては嬉しい体勢である。

 理由が殴り合いをしようというのでなければ。

 

「そろそろいっか。それじゃあ始めます。ホーリィさんだっけ、構えてね?」

 

 そう言いながら二人は離れていく。

 そうして10メートルほど離れると獲物を抜き放った。

 

「私たち二人相手に生きてたらロキが言った事を信じてあげる。――――それじゃあ、いくよっ!」

「いや、意味わからんし」

 

 言葉を続けようとしたホーリィはその言葉を最後まで言うことはできなかった。

 一瞬の加速で接近したティオネの双剣がホーリィの首のすぐそばを凪いで行く。

 それはホーリィが体を半身ずらさなければ首を切り落としていただろう。

 

「危なくね?まあ落ち着けって。」

 

 言いながらもホーリィは半歩左にずれる。

 そこをティオナの振り下ろした大剣が通り過ぎる。

 地面を抉るそれは全くの手加減や寸止めを感じない。

 

「そのだな、俺は手加減って言うものが苦手なんだよ。」

 

 喋っている間も二人の剣戟は止まらない。

 一撃目を留められたティオネが体を回転させた左の横凪ぎとティオナの切り上げ。

 挟み込むような剣閃に回避する隙間など無く完璧なコンビネーションである。

 

 しかしそれは飛び上がったホーリィによって避けられる。

 

「すごいすごい!今の避けられるとは思わなかった!」

「………ロキの言ってた事ってほんとかも。」

 

 当初の目的を忘れ戦意を高揚させる二人。

 しかし、彼女達の攻撃はそこで終わることとなる。

 何故なら。

 

 ホーリィが着地してしまったから。

 

「「えっ?」」

 

 一体いかなる不条理が働いたのか、仰け反る二人。

 しかもその体勢は両手を挙げた万歳ポーズ。

 ぶっちゃけ隙だらけである。

 

「あんまりおいたしてると、悪戯しちゃうぞ~?」

 

 ホーリィの手がわきわきと動く。

 そして奇妙な行動が開始された。

 

 うほうほと小刻みにジャンプしては二人に近づくホーリィ。

 何とか体勢を立て直そうとするがそれよりも再度崩される方が早い。

 

 それは何かの儀式なのだろうか。

 女性二人の周りをうほうほといいながら旋回する大男。

 何故か万歳したままの女性二人。

 シュールである。

 

「うほほっ!早く降参しないとひどいことしちゃうよ~?」

 

 そういいながらホーリィの右手が煌いた。

 

「えっ?きゃああああああ!」

 

 いつの間にか切り落とされた胸を守る薄い布がひらりと舞い落ちる。

 その間にもうほうほ言いながら旋回するホーリィ。

 そのため隠すことも出来ない。

 

「さぁーって、これで降参してくれるかな?」

 

 飛び回る事をやめたホーリィは双子の前に自然体で立ち尽くす。

 

 ようやく自由に動くようになった体で自身を抱きすくめるようにしゃがんだ二人の目に映るホーリィは何とも凶悪な顔に感じただろうか。

 

「「ひぁぁ…………。」」

 

 まるで攫われて来た村娘のようにお互いを抱きしめる双子。

 このまま魔の手にかからんとする双子に救いの手が差し伸べられる。

 

「そこまでやホーリィ。うちの子供に手を出してええんはうちだけやで?」

 

 扉にもたれる様にしたロキの言葉に安心したのか、その後ろに急いで移動する双子に溜息をつくとロキは更に言葉を紡いだ。

 

「ホーリィ、あんたが拾って来たんやからこれのこと、しっかりと面倒見るんやで。今日はもう遅いから話はまた明日や。」

 

 そう言って踵を返すロキ。

 つられて着いて行く双子。振り返る前にしたロキの流し目は果たして効果があったのかどうなのか。

 

 そこに残されたのは新に加入したリリとホーリィだけであった。

 

 

  ■  ■  ■

 

 

 ロキファミリアのリビング、そこでリリとホーリィは向かい合っていた。

 ただし、自然体のホーリィに対してリリは顔を俯かせたままであるが。

 

「というわけでようこそロキファミリアへ。これからよろしくなー。」

 

 軽い感じのホーリィにリリが顔を上げる。

 

「ホーリィ様、色々と質問してもよろしいでしょうか?」

「おー。」

「………何故リリは此処にいるのでしょうか?」

「そりゃ俺が連れてきたから」

「では何故リリはロキファミリアに加入しているんですか!」

「そりゃ俺がロキに頼んだから」

「だから何でそれが出来てるんですか!?ファミリアの移籍は主神同士の合意が必要じゃないですか!」

「そりゃ俺がなんつったっけ?そーまファミリア?を潰したから。」

「―――――――は?えっと、潰したってファミリアを?」

「そういってるけど。」

「っていうか、リリがこうして改宗できてるってことは………、もしかしてソーマ様も?」

「多分そうだと思うぜ?」

「………なんでですか?どうしてそんなことしたんですか?意味がわかりません。どうして?」

「うん?さっき飲んでる時に今のファミリアに居場所がないとか自由になりたいとか出来れば移籍したいとか色々言ってたじゃん?ちょうど俺も頭にきてたしちょうど良いやって思ってやったんだけど拙かった?」

 

(この人は何を言っているのでしょうか。ちょっと頭にきていたからファミリアを一つ潰した?リリの話はそのついで?そのついでで神すらも殺す?この人は何を言っているのでしょうか。)

 

 そこまで考えてリリはその異常性に気がついた。

 

 確かにホーリィと一緒にダンジョンに潜ったことからその強さは知っている。

 だがしかし、その力に見合った常識が全くついていない。 

「つかぬ事をお聞きしますが、何をしたか分かっているんですか?」

「ん?つってもどうせ直ぐに復活するだろ。安心しろって、またなんかあったらやり返してやるよ。」

 

 ここでホーリィとその他の人々の認識の違いが明らかとなる。どうやらホーリィは死んでも直ぐに復活できると思っている。

 この世界の何処にもそんなことを出来る冒険者など存在しないというのに。

 

「………その話はもういいです。それではお聞きしてもいいですか?その、リリは、リリはこれから如何すれば良いですか?今度はホーリィ様がリリを使いますか?」

 

 その言葉に込められた意味は重い。

 そんな言葉に対する返答はやはり何処まで言っても軽かった。

 

「いや、やりたい事をやれよ。別にそれ、俺に聞くないようじゃなくね?まあたまにダンジョンに連れて行くかもしれないが。」

 

「え………?リリのこと専属の荷物持ちにするつもりなんじゃないんですか?ずっとただ働きさせたり、恩を傘にきてあんなことやこんなこととか。」

「いや、どこの鬼畜野郎だよそれ。」

「ホーリィ様は前科があるので。」

「大体、ロキにはなんていわれたんだ?どうせ俺の言った事と大して変わらないんだろ?」

「はい。ロキ様は好きにしろと。」

 

(ただその、でしゃばるなとは釘を刺されましたけど。)

 

「それじゃあほんとのほんとに何も無いんですか?ただ単についででリリを助けてくれたのですか?」

「そうだぞー。まあ今日は疲れただろ、このまま寝ておけ。」

「あ、はい。」

 

 と、返事をするも座ったままホーリィを見上げて動かない。

 それもそのはず、ファミリアに加わったばかりのリリに部屋など割り振られておらず何処で寝ればよいかもわからない。

 その為、ただホーリィを見上げているのである。

 

「あ~、そういやそうか。寝る場所も無いんだったな。」

 

 その事実にやっと気がついたのか一瞬だけ考えるそぶりを見せるホーリィ。

 次の瞬間にはリリを抱き上げると移動し始めた。

 

 

  ■  ■  ■

 

 

「わっぷ!投げないでも良いじゃないですか!」

 

 そこは今朝与えられたばかりのホーリィの寝室。

 必要最低限のベッドとクローゼットのみが置かれた部屋。

 そのベッドに抱き上げていたリリを放り捨てたのだ。

 

「うーむ。」

 

 そのベッドの上で座るリリの前で腕を組むホーリィ。

 その頭の中はやはりどうでもいいことばかりであった。

 

(相変わらず睡眠欲が無い。ベッドも一つしかないし、このままダンジョンにでも行こうかな。)

 

 そんな直る見込みの無い病気に犯された思考をして考えているホーリィを見上げていたリリから勘違いした言葉が繰り出される。

 

「事此処までいたってしまえば流石の私も観念しました。先ほどはああ言っていましたがやはりホーリィ様も男の人です。その、リリはもう立派な大人ではありますが見ての通り小人族なので小さな体をしているわけで。」

「なにいってるのかさっぱりわからんのだが。」

「こういったことも初めてなので出来れば優しくして下さい。」

「………。」

「お願いします。」

 

 

 果たしてどうだろうか、この状況は。

 ベッドの上で女の子座りをしてもじもじと上目遣いで見上げる少女。

 緊張しているのか力なく垂れた両腕はそれを感じさせないほどに布団を掴む。

 そういった趣味の無い人間であってもこの状況に陥れば頂きますといってもおかしくは無い。

 

 

 ■  ■  ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヒットリカバリー大事。

ところで、原作一巻分丸々きえてしまった。
どうしよう。(汗
やはり改稿すると思われます。

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