Fateで斬る   作:二修羅和尚

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尺稼ぎと思われても仕方ない。久しぶりの投稿です。お待たせしました。

現在二修羅は「小説家になろう」のサイトで小説を投稿を中心に活動しておりますので、興味がありましたらそちらのほうも読んでください。

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過去編4

「帝都警備隊、隊長のオーガだ。お前が入隊希望者か?」

 

 

 俺の前に現れたのは、見上げるような大男だった。

 左目に傷があり、片目しか開いていないが、それも相まって顔面が怖い。体格も筋肉質で一般人がそのこぶしの一撃でもくらえばひとたまりもないだろう。

 

「はいっ! セイといいます!」

 

 

 そんな男に対して、俺は気持ちのいい挨拶を心掛けた。気分は希望に満ちた新人の少年である。扱いやすそうだと思われるならそれでいい。とりあえず、入隊が決まるまではこれで行くつもりだ。

 

 

 警備隊隊長、オーガ。そんな地位に就く男ではあるが、帝都中では黒い噂が絶えない男である。一応、分体を使っての身辺調査をしているが、今のところ動きはないため断定はしにくい。まぁ、調査自体は最近始めたばかりなのだ。噂が本当ならすぐにでもボロを出すだろう。

 

 ただ、ボロを出してもすぐには殺しはしない。むろん、その間に被害にあう人々には俺の方から裏で手を入れるつもりではある。では何故そんな回りくどいことをするのか。

 

 それは俺が相応の地位に就くまでの間、こいつに隊長を続けさせるためである。

 

 というのも、こいつの噂が本当であるならば、俺には公的にこいつを罰する権利を得ることになる。まぁ、そうするためにも俺がそれなりに高い位置にいなければならないのだが、下手に手を出してこいつをやめさせてしまえば、代わりとしてオネスト大臣が新しい者を派遣してくるかもしれない。もしそいつがオーガよりも面倒な相手なら厄介極まりない。

 

 扱いやすいこの男を、俺が出世するまで頭に据えておいたほうがいいのだ。

 

「おう、ずいぶんと元気じゃねぇか。そんなに警備隊に入りたかったのか?」

 

「それはもう。俺は、何か人のためになることをしたいと思っていますので」

 

 

 俺の返答に、ほぅ、と興味深そうに声を漏らしたオーガ。

 

「言っとくが、軍じゃねぇーからと言って、警備隊もそれなりの実力がねぇとやっていけないぞ。そこはわかっているな?」

 

「もちろんです! それに、こう見えても俺、強いですから!」

 

 

 瞬間、抜刀した剣が俺の首めがけて飛んでくる。

 ものすごい速さだし、流石警備隊とはいえ隊長を張っているといえる実力ではあるが、これなら俺の方が強いだろう。何なら、スピアの突きの方がもっと速い。

 まぁ、新人相手で手加減もしているのだろう。実際、首に届く前に止めるつもりではあるようだ。

 

「フッ!!」

 

 回避は比較的簡単に行える。

 首だけを動かし、最小限の動きで剣をかわすと、俺はそのままオーガの顔面に向けて拳を突き出した。もちろん、ここで殴れば激情して入隊できない、なんてことも考えられるのでやらない。

 

「……どうですか?」

 

「ヘッ、合格だよ。着いて来い」

 

 

 納剣したオーガがこっちだといって警備隊の本部の奥へ向かって歩いていく。俺は何も言わずにその後ろをついていった。

 

 出てきたのは道場のような場所だった。

 てか道場だった。

 

 なんでこう、所々で日本を感じさせるものがあるんですかね、この世界は。

 

 ほへー、と道場を見回していると、道場の隅っこ。そこからはっ!! というやけに気合の入った声が響いてきた。

 みれば、そこにいたのは一人の女の子。たぶんスピアと同じくらいの年齢だと思われる。

 

 

「気になるのか?」

 

いつの間に着替えたのか、白の胴着に身を包んだオーガがいた。どうやら、俺が惚けている(道場に)間に着替えてきたらしい。

 

「ほれ」

「あ、どうも」

 

渡されたのは女の子やオーガと同じ白い胴着だった。

 

「これは?」

「まずはそれな着替えろ。さっきのを見たところ、身体能力は高そうだが、技術がなってねぇ。徒手空拳くらいなら教えてやる」

 

さっさと着替えろ、と指示されたのは更衣室。オーガの言葉に、はぁ、としか返せなかった俺は、頭に疑問符を浮かべたまま更衣室へ向かった。

 

 

「……一応、仮想敵なんだけどなぁ」

 

そんなことを呟きながら胴着に着替えていく。

確かに、チョウリ様のところではスピアとの槍の稽古が基本だった。そのため、俺の徒手空拳の技術は低いのかもしれない。

 

 

が、あれだ。なんか俺よりも弱い奴、まして敵になるであろう男に教えてもらうのは釈然としない。

 

「……まぁいいだろう」

 

 

それならそれで、利用するとしよう。技術を盗めるだけ盗む。どうせしばらくは殺さないのだ。

 

帯を絞めて道場へ。

そこで待っていたのはご存知オーガと、先程まで一人で鍛練に励んでいた女の子だった。

 

「お、来たか」

「隊長! この子は?」

「今日から警備隊に入ることになったセイ、って男だ。お前の後輩になる。それとセイ。こいつはセリュー。今、俺が教えてる奴でな。お前の先輩になる」

「はぁ、どうも」

 

茶髪のかわいらしい女の子だ。何故か、そのすぐそばに犬を連れて……

……あれ、この犬、二足歩行してない?

 

「この子はコロ! よろしくね!」

「ワフゥ」

「お、おう」

 

 

「あいさつはすんだか? なら、始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りの型を教えてもらい、基本的な動作を教えてもらった。

敵ではあるが、なるほど、と思わされる部分も多い。それなりに身になる時間であったことは確かだ。暫くは、利用しがいがあるだろう。

 

 

さて、オーガは予定があると言って早々に道場から出ていったのだが、セリューと紹介された女の子は未だに鍛練を続けている。

俺はともかく、疲れないのだろうか。

 

 

「ところで、セリューは何で警備隊に入ったんだ?」

 

気になって質問してみると、今まで正拳突きを繰り返していた動作がピタリと止まった。

 

 

そして一言

 

「正義のため、だよ」

 

ただ一言。それだけを言ってまた同じ動作を繰り返し始める。

だが、その一言にはとてつもない憎悪の意志が感じ取れた。

 

「正義、ねぇ……」

「セイ君もそうなんでしょ? 悪を皆殺しにして、正義のために戦うんだよね?」

「悪ってのは?」

「? そんなの、悪は悪だよ!! 悪いやつらがいるからダメなんだよ! それに、それがパパの残してくれた意思なんだもの。だから、悪は全員抹殺! だよ!」

 

声の調子に反して、物騒なことを宣う少女である。

 

言葉からして、賊に親でも殺されたのだろう。聞けば、彼女の父は警備隊で、任務中に殉職したそうな。

 

 

ただひとつ言わしてもらうなら、この少女の判断で悪とされれば、すぐにでも殺すのだろう。

それは、下手な判断をすれば、罪のない人を殺すことにもなる。

 

例えるなら、疑わしきは悪。裁判する前に怪しい奴を皆殺し。

 

それはいくらなんでもあんまりだろう。だから言う必要がある。

 

 

「バカじゃねぇの?」

 

「コロ、殺って」

 

 

 

 

 

ガチトーンだったのはいい思い出である




「花を咲かせる魔法使いはとりあえず楽をしたい」

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