Fateで斬る   作:二修羅和尚

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九話

「待てやゴラァッ!!」

 

視線の先、逃げる七人の人影を目指して俺は屋根の上を駆ける。

人数的にはこちらが不利ではあるものの、身体スペック、並びに手持ちの武器を加味すれば十分引けを取らない実力はあるはず……と思いたい。

 

いやぁ、実際ナイトレイドの皆さんと相対するのはこれが初めてなんですよはい。

 

『ちょ、アカメちゃん! 追ってきてるよ!?』

 

ナイトレイドの一員と思しき男の声が前方から微かに響いてくる。

 

……聞いたことあるような声なんだが……気のせいか?

 

まぁ、そんなことを気にしている暇は無い。エンカウントしてから追いかけ始めるまでの間で、少しばかり距離が離されてしまっている。

 

このまま後ろから追いかけていても、帝都出るまでの間で追いつけそうには無い。

多分、相手の方から邪魔も入るだろうしね

 

「っ! と、危ねぇなおい」

 

考えてるそばから狙撃された。

 

相手も振り向きざまに放った一発だったからか、狙いは甘かったが、それても避けなければ確実に当たっていた一発。

……となると、あれも帝具かな? 情報一つゲットである

 

「っ!? のぉわっ!?」

 

とか考えていたらまた狙撃。しかも、今回は一発ではなく連射だ。マシンガンかっつーの

 

「仕方ねぇ、『結界展開!』」

 

ガチンッ、と俺は手甲の拳同士をぶつけ合う。

すると、手甲の内側に取り付けられていた宝石の内、二つが砕け散る。

 

 

これは、俺が自力で作り出した言わば礼装である。

 

名前とかは無いが、指先から肘下あたりまでを覆う手甲の金属部分には、魔術的加工を施しており、普通の金属以上の強度を誇る。しかも、軽量化も兼ねているのでかなり使いやすい。

そした、この手甲一番の特徴であり、俺がかなり時間をかけて作ったのがこの内側部分だ。

 

左右それぞれ五つずつ、俺が魔力を込めた宝石を取り付けられるように加工されているのだ。俺の魔術属性は水と風であるため、基本風の魔力を込めた宝石を取り付けている。

そして、使おうと思えば宝石魔術としての使用が可能。宝石は消費するが、その代わりに俺は一時的に風の力を得ることができるのだ。

 

例を挙げるならば、殴りつける瞬間に局所的に暴風を吹かすことでインパクトの威力を底上げしたり、振るうことで風の刃を飛ばしたり、空中での移動に使ったり、一時的な風の結界を展開したりなど。他にも、使い方は色々とある。

 

手甲自体が魔術使用の際の補助、媒体となっているので普段の魔術よりも効果は高くなっていたりする。

 

『なっ!? 真正面から防いだ!?』

 

『あの野郎、本当デタラメだなぁ!?』

 

前方に結界を展開した俺は銃弾の雨の中をそのまま突っ切っていく。

……いや、これ、銃弾じゃない。ビームや。

いつの間にこの世界はビームライフル作っとんねん。さすが帝具。

 

ビームの雨を抜けきった俺はそのまま一気に上空へ跳躍。そのまま片腕を後方に突き出した。

 

「突貫する!!」

 

腕の宝石が砕ける音。同時に、俺の腕から暴風が放たれ、それを推進力として一気に空を駆ける。

 

目標は、最後尾、鎧の男!!

 

「!? アカメ!! こいつを頼む!」

 

「うおっ!?」

 

鎧の男が担いでいた少年を物のように放り投げると、どこから取り出したのか、先端部が異常にぶっとい槍を手に俺と対峙した。

 

「オラァっ!!」

 

「洒落せぇ!!」

 

横長に振るわれる大槍。俺はそれを真っ向から手甲で殴りつけた。

飛び散る火花が一瞬だけ男の白銀の鎧を照らす。

 

風の力による突撃で、多少力は上がっていたはずなのだが、流石にパワーという点で劣っていたかのか、俺の方が飛ばされる結果になる。

 

空中で身を捻り、着地大勢。

足が屋根の上を滑っていき、やがてピタリと止まった。

 

「……インクルシオ。元軍人、ブラート……で、間違いないな?」

 

「おうよ! そっちは、警備隊の副隊長でいいんだな?」

 

ブラート

確か、百人斬りのブラートとかいう話を聞いたような気もする。

 

どういう経緯でナイトレイドへ入ったかは知らないが、どういう理由であれ、俺とこの人は敵同士。俺はお仕事なので捕まえなければならない。

 

すでに他のメンバーとはかなり離されてしまった。もう追いつけないのは明白。

なら、今は目の前の相手だけに集中する。

 

「警備隊として、捕縛させてもらうぞ!」

 

「そんなつもりはさらさらねぇけどな!!」

 

お互いが突貫。瞬く間に彼我の距離を喰らい尽くし、ゼロ距離に。

ブラートは槍を、俺は拳を振るいいくつもの火花を散らしていく。

 

金属同士の衝突音が響きあう中、俺はここぞとばかりに魔術を発動させる。

 

風拳(ただの正拳突き)!!」

 

「うおっ!?」

 

宝石三つを消費して放たれた拳は、それまでの一撃の速さを凌駕し、かなりの威力ののった一撃がブラートの胸板に突き刺さる。

 

インパクトの瞬間、その部分に突風が生まれ、ブラートを吹き飛ばすとそのまま下へと落ちていった

 

確かな手応え。

鉄壁の守りを持つ帝具だとは聞いているが、あれを受けて無傷とはいかないだろう。

俺は意気揚々とブラートが落ちた先へと降りていく。

 

降りて行ったんだが……

 

「……あれ?」

 

そこには、誰一人として残っていなかった。

 

……嘘やん……

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ブラート、無事か!?」

 

「なんとかなぁ。奥の手使って逃げてきたぜ」

 

セイが逃がしたと落ち込んでいるその頃、帝都から北に10キロ行った先のナイトレイドのアジトでは、殿を務めたブラートが帰還。

フゥッ、と息を吐いて鎧を解除したブラートに、アカメが労いの言葉をかけた。

 

「それで? 相手はどうだった?」

 

「かなりの実力者だな。なんで隊長じゃねぇのか不思議なくらいだぜ」

 

まだ殴られたところが痛ぇしな、と肩をすくめるブラート。

 

「ていうか、ラバ! アタシあんなのいるなんて聞いてないわよ!?」

 

「ちょ、ま、首じめないで……!!」

 

さっさと吐けと言わんばかりにラバックの首を絞めるマイン。そんなマインをシェーレが鎮めると、荒く深呼吸をしたラバックが語る。

 

「あいつのことはあんまり考えないほうがいい。存在自体が摩訶不思議なやつなんだからさ」

 

「? どういうことですか?」

 

「気にしたら負け」

 

うんうんと一人で納得するラバックに、今度はマインとレオーネの二人ぶんの拳が叩き込まれた。

 

「……まぁ、今気にしても仕方ない。とりあえず、任務は完了した。みんなも今日は体を休めてくれ」

 

「アカメ〜。こいつどうする?」

 

そう言ってレオーネがつまみ上げたのは、ここに来るまでに気絶してしまったタツミ少年。

 

そんな少年を見て、アカメは少し考えたそぶりを見せると、空き部屋のベッドに寝かせておいてくれと返したのだった。

 

 

 




……なんか、いろいろとごめんなさい…

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