「このっ!!」
「おっと! 危ない。当たればヤバイな。当たれば」
「こいつ……!!!」
次々とこちらに向かって放たれる光線を時には避け、時には結界や水銀礼装で防ぎを繰り返して数十回。
その際に相手を煽る言葉も忘れない。
そうだ、もっと冷静さを欠け。
銃口を向けられる前に射線を読み、回避行動にはいる。
俺のスキルである心眼(偽)と帝具であるスペクテッドの効果で、回避は簡単に行える。
浪漫砲台パンプキン
宮殿の資料室にあった本に、その性能が載っていた。
昔、まだ将軍であったときのナジェンダが所持していた帝具らしい。
使用者の精神エネルギーを消費し、エネルギー砲、所謂レーザーを放つ帝具。まぁあれだ。分かりやすく言えばビー○ライフルかな。
そして奥の手。
使用者がピンチになればなるほど火力が上がる。
どこの主人公補正だよたくっ
ビーム○イフルがいきなりゲロビ(ようはハイ○ガキャノンみたいな極太ビーム)とか笑えない。
それに、一人のところで俺が来たってだけで俺の水銀礼装をぶち抜きそうなくらいには火力がある。
まぁ、分体を出してる分いつもよりも魔力を水銀にまわせないってのもあるが。
「ふはは。当たらなければどうということはない」
「死ねぇ!!」
クルッと回るように移動すると、頭の横を通過していく光線。
…狙うのは射撃と射撃の隙だ
「『斬』!!」
「っ!?」
撃ったと同時に射線から外れ、
が、そこは流石プロといったところか。
一、二発回避しても避けられないものがあるため、仕方なく水銀礼装での追撃を諦めて防御壁を展開した。
しかし、光線は銀の壁を貫いた。
「っ…」
「フンッ! ようやく、あんたのその顔が拝めたわ」
視線を向けると、いつの間にか起き上がって此方に銃を構えるマインの姿。
俺が少し驚いたことに機嫌を良くしたようでその顔は得意気だ。
「今ので、私の火力はあんたの壁を貫けるようになった。回避だけは上手いみたいだけど、こっちが近づかせなければ決め手のないあんたに勝ち目はないわよ」
「…なるほど。『そして仲間が来るまで耐えれば、確実に倒せる』と。確かにその通りだな」
「っ! ……その帝具で、心を読んだわね…」
「そういう帝具だからな。…さて」
俺はスペクテッドの能力を遠視に切り替える
「……ハハッ」
「何がおかしいのよ」
思わず笑ってしまった俺をマインが警戒するように銃を構えて問いかける。
ナイトレイドが
一定ラインを越えた。
それの意味するのは二つ。
一つ。ナイトレイドはあの
まぁ、それはいい。もともと、そうなるようにトラップの量と威力を下げたんだ。
大事なのはもう一つ。
多重結界が張られることだ。
文字通り、幾多の結界が展開され、外からも、そして中からも通り抜けができない結界。あれを壊すには、ブドー大将軍の帝具の奥の手使わないと難しいんじゃないだろうか?
まぁそれはいい。
重要なのは、もうこちらにナイトレイドは来ない、ということだ。
「お前に残念なお知らせだ。ナイトレイドはここに来ねぇ。…いや、この場合はあっこから出られねぇって方が正しいな」
「…どういう意味よ」
「そのままの意味だ。俺の屋敷は今、簡単に言えば鳥籠だ。入れねぇし、出られねぇ。つまりだ、俺とお前はタイマン張るしかねぇんだよ」
じっとこちらに銃口を構えたままのマイン。
孤立したこいつは、更に火力を増すに違いない。が、こいつの真に厄介なのは、大火力で遠距離から一方的に撃ち込まれることだ。距離さえ詰めれば問題ない。
それに、もうすぐこの拮抗状態も終わる
「いやしかし、助かったぜ。お前がここにいてよ。屋敷に侵入されてたら分断用のトラップも仕掛けにゃならんからな」
「そういえば、さっきも言ってたわね。私のためにどうやらって。何? 私に惚れでもした?」
「そのうっすい胸膨らませてから言え」
「なっ!?」
俺の返しに、一瞬で顔を真っ赤にしたマインが躊躇わずに射ってくる。
「『沸き立て、我が血潮』」
水銀を前方のみに展開。
いつも以上に分厚くなっているはずの防御壁であるが、パンプキンのエネルギー光線はこれをたやすく撃ち抜いてくる。
水銀と光線が拮抗した一瞬で体を横にずらして光線をよける
「もうあんたのそれも怖くないわ。仲間が来ないなら、私一人で殺ってあげるわよ!」
「おお、怖い怖い。だが些か、その気になるのが遅かったな」
「だな」
「っ!?!?」
俺の声に反応したそいつは、音もなくマインの真後ろに出現し、返事を返す。
突如気配を感じたのか、振り向き様にパンプキンを放つが、その時には既にそいつはいない。
「そうね。私なら話なんてしないわ」
「いや、仕方ないって。あの状況じゃ、情報ほしいだろうし」
「っ!? どこにっ!!」
続けざまに両サイドから現れる人影。だがそれも、マインが視界にとらえる前に姿を眩ます。
「オリジン、この演出、趣味悪くない?」
「いいだろ。気にするな」
続いて俺の横に現れる人影も、俺の一言に肩を竦めるとまた姿を消す。
「…女に興味はない」
「っ……」
そして最後に現れた大柄な人影。
そいつを初めとした五人の人影。
全身が黒に染められ、ただ一つ、闇夜に浮かぶようにつけられた真っ白い骸骨の仮面。
「骸骨の仮面……あんたたち、アカメが言ってた…」
「ああそうだな。一人、殺された」
マインの呟きに頷いて答える。
「何あんた。さっきはタイマンとか言っておいて、早速仲間を呼んだわけ? いい性格してるじゃない」
「…あ? あぁ、はいはい。別にタイマンってのはタイマンだぜ? お前にそう見えるだけでな」
「……あんた、頭でもおかしくなったの?」
構えながら、かわいそうな人を見る目を向けるマイン。だがしかし、一般的な感覚で言えば、そう考えるのが普通だよな。
「正常正常。つまりだな、俺とこいつらは全員で一人なわけよ」
「…は?」
「然り。我らは群にして個。個にして群」
「故に我らは皆でセイという一人の人間」
「要するに、こいつらは俺が作った俺の分体。俺を主人格とし、魂を分けて作り出した同胞だ」
「……あんた、分裂なんてできるの…? そんな帝具、聞いたことないわよ…」
信じられないような声で目を見開いているマイン。
だが、その間にも分体との同化は進んでいる。
そして、最後の一人。リーダー格の分体が俺に問いかけた。
「いいのか? そんなことまで話してよ」
「構わない。どうせすぐに喋れなくなるさ」
「死人に口なしってか」
それだけを言い残した分体は俺と同化して消える。
今の今まで、こいつらにはワイルドハントの面々の監視を行ってもらっていたのだが……ドロテアの奴、なかなか面白いことしてるじゃねぇか。
「帝具を二つも所持なんて、今まで聞いたこともないし、普通は出来ないはずだけど、あんたなら出来そうね」
同化を終えたところで、マインがこちらに銃口を構える。
「でも、所詮は戦闘に使えるようなものじゃないわ。数の差も、自分からなくしたあんたはただのバカよ」
「…帝具、だと? フン、これをあんなものと一緒にはしないでほしいな」
「何ですって?」
千年前、始皇帝によって創造された四十八の超兵器。
今尚、その力は絶対視され、それ一つで戦争を左右すると言っても過言ではない代物だ。
エスデスのデモンズエキス然り、ナイトレイドのインクルシオ然り、アカメの村雨然り。
その中には、今あげたようなとんでもない代物が入っていることも認めよう。
だが、俺は宝具はそれら以上のものだと考えている。
「これは帝具じゃねぇ。宝具だ」
「……何よそれ、聞いたことないわよ」
「当たり前だ。
「…ちょっと、何いってるかわかんないわ」
「ついでに教えてやる。冥土の土産ってやつだ。さっきの分体は俺の持つ宝具、
そこまで言えば、察したのだろう。
マインは、焦ったような動きで、俺に向けてパンプキンを連射する。
が、宝具を解いた今、避けるのは容易い。
「つまりだ、互角の勝負なんかにはならねぇ。こっからはずっと俺のターンだぜ?」