Fateで斬る   作:二修羅和尚

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七十三話

さて、屋敷の外でセイとマインが鉢合わせていたころ、セイの屋敷の内部では数々のトラップがナイトレイドを出迎えていた。

 

「クッソッ! この家トラップが多すぎるだろ!?」

 

「ッ!! タツミ! 跳べ!」

 

タツミの足元の変化に気づいたレオーネが叫ぶと、反射的にタツミは上へと跳んだ。

 

瞬間、タツミが踏み出そうとしていた場所から槍が飛び出してくる。

インクルシオの防御を抜いてくるような攻撃ではないが、態々当たる必要もない。それに、ここはあの警備隊長の家。帝具の防御を過信していれば足を掬われかねない。

 

だが、これで終わると思うなかれ。

 

トラップは重ねて発動するとこでより効果を発揮するのだ。

 

 

「タツミ!!」

 

何かを察知したのであろうラバックが、タツミに糸を巻き付けて己のもとへと手繰り寄せる。

 

すると、先ほど飛び出してきた槍の間から更に長い槍がタツミ目掛けて飛び出していた。

イエヤスの槍と同様に、切れ味を魔術によって増したその槍は、掠めただけでインクルシオの鎧に傷をつける。

 

「た、助かったぜ、ラバ」

 

「気ぃ抜くなよ? あいつの家なんだ。警戒しすぎてもまだ足りない」

 

「本当に、なっ!!」

 

狙い済ましたかのように飛んでくる矢をインクルシオの副武装であるノインテーターで凪ぎ払い、その後ろにラバックとレオーネが続く形で駆け抜ける。

 

だが、未だに人と対峙することはなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……おかしい」

 

「ん? どうしたの? ボス」

 

一方、タツミ達が侵入した経路とは逆側から侵入したナジェンダ、アカメ、チェルシーの三人。

 

そんななか、リーダーであるナジェンダは未だ警護の人間と出会っていないことに疑問を覚えた。

 

「侵入してからここまで、矢での狙撃はあったがそれ以外はトラップばかりだ。トラップにしても注意していれば突破できる程度のもの。……ひっかかるな」

 

「まぁでも、あの警備隊長のことだから、トラップだけでも自信があるって考えてそうな気もするけどね……」

 

「否定できないところが何ともな…」

 

そういっている間にも、三人はトラップを回避、あるいはその破壊を繰り返して進んでいく。

 

彼女達の言うとおり、セイはこの屋敷内に張り巡らせたトラップにかなりの自信を持っている。

 

魔術工房である地下を守るための屋敷であり、その屋敷への侵入を防ぐための庭。

Dr.スタイリッシュの手下やオネスト大臣の密偵の侵入を看破し、更には撃破までをトラップのみでやってのけるその守りは宮殿の守備に勝るとも劣らない。

 

そんな中を、彼女たちは進んでいく。

これが、帝都最強と言われる暗殺集団、ナイトレイドの実力であった。

 

 

もっとも、それが本気の迎撃であったなら良かったのだが。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「セイ様が目標と接触。戦闘開始」

「アーチャー部隊は北から攻めてきた三人組の対処のみに当たってください」

「トラップ起動」

「対象の生存確認。トラップは効果を発揮せず」

「アサシン部隊はそのまま対象の監視を続行してください」

「対象六名が一定ラインを通過。多重結界起動」

「囮の設置を確認。ライダー部隊は準備に入ってください」

「ランサー部隊、セイバー部隊は屋敷周辺の密偵の処理をお願いします」

「バーサーカー部隊は非常時に備えて待機」

 

 

セイの屋敷。その地下のとある一室。

そこで情報統制を行っているのは、セイの護衛部隊Fate

その内の一部隊であるキャスター部隊。

 

そんな彼女らが強化されたのは脳。

セイのスキルを十全に用いた結果、並列思考を可能とした彼女らは次々と他の部隊へと指示を出していく。

更に驚くべきはトラップだ。

 

 

全て、手動である。

 

 

 

発動させるタイミングやどのトラップをつかうかなど、ナイトレイドの動きに遇わせて仕掛けているのだ。

 

勿論、セイの指示通りに容易に、かつ不自然にならないように、であるが。

 

「多重結界起動確認。これより、ランサー、セイバー部隊は中への侵入は不可。外にてセイ様の援護が必要であれば加勢を」

「中から外へも出られませんので悪しからず」

 

 

 


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