Fateで斬る   作:二修羅和尚

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この間の12月3日をもちまして、この小説が一周年となりました。
ここまでこれたのも読者の皆さんと、二修羅の努力のお陰。
ここまでつづいていることに二修羅も驚いています。
ランキングにも載ったときははしゃいだものです。

今後も、こんな二修羅でございますが、温かい目で見守ってやってくださいね。


七十二話

「セイ様。外で鼠が数匹程、こちらを探っているようです。いかがいたしますか?」

 

「ほっとけ。調べたところで、あいつらが魔術がどういったものなのか、わかるわけないだろうしな」

 

私室で警備隊の書類仕事を片付けている途中、足音もたてずに現れたのは家の護衛部隊であるFateに所属するアサシンの一人。

アサシン達には主に家の外の警戒を頼んでいるのだが、予想通り調査員がいるようだ。

 

まぁ、今言った通り全く問題ないんだが。

 

「それに、今回は家の防衛の性能テストも含めてるんだ。ほっといて問題はない。……が、何か動きがあれば報告は頼むな?」

 

「承知いたしました」

 

そう言って、再び音もなく姿を消すアサシン。

 

……自分で言うのもなんだが、あの人体改造成功しすぎじゃない?

あれ、気配遮断のスキルついてるよね?

 

むぅ……と実験当時のことを考えていると、今度はコンコンコンッと扉から音が響いた。

書類の方も一段落ついていたので、そのまま中へと入れてやると、現れたのは台に料理を持った皿を乗せて入ってくるエアの姿。

 

「おぉ、ありがとうな。助かる」

 

「ふふ、仕事ですからね」

 

「悪いな。ところで、メイド達の避難は完了してるか?」

 

なんせ、あのナイトレイドが来るのだ。警戒するに越したことはない。

悪人以外に手をかけないやつらではあるが、仲間の命がかかれば、メイドを人質にとって人質交換など言い出しかねない。

 

「問題ありませんよ。皆、離れの方へ移っています」

 

「そうか。あそこは多重に結界やらトラップやら仕込んだからな。まぁ突破されることはないだろう。残ったお前達も早く移っておいてくれ」

 

なんせ、今日で一週間。攻めてくるとすれば今日だろうからな。

 

 

 

 

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「タツミ、あんまり突出しないように気を付けな。ここ、ヤバイ空気がビンビンしてるよ」

 

「姐さんがそこまで言うのか……」

 

「ああ。前に見た警備隊の本部よりもヤバイ」

 

「まぁあいつの自宅だからねぇ……本部よりもこっちの方が強力になるだろうさ」

 

帝都の民が寝静まった夜

 

セイの自宅の程近い民家の屋根の上で合図を待つレオーネ、ラバック、タツミの三人。

そんななかで一人、レオーネはそのセイの屋敷の雰囲気に息を飲んだ。

 

ライオネルによる野生の勘が告げているのだ。あれは危険だと。

 

「……スーさんがいればなぁ」

 

ぼそりとタツミが声を漏らす。

ナジェンダの帝具であり、帝具人間でもあったスサノオ。

 

頼れる仲間であった彼がいればどれだけ心強いか。

そんな彼は以前のキョロクでの戦闘で殿を務め、そしてエスデスに破れた。

 

「しっかりしろ、タツミ。ブラートの旦那を助けるんだろ? ならこんなところでしんみりしてる暇はねぇぞ」

 

「……あぁ、ごめんラバ。もう、大丈夫だ」

 

一度考えるように目を閉じたタツミ。だが、その目を開いたときには、もうそこに迷いはなかった。

絶対に兄貴を助ける。そんな確固たる意思を持った目であった。

 

「っ、ボスから合図が出たよっ!」

 

暗闇の向こう。位置的にはセイの屋敷を挟んだ反対側。

そこで、一瞬光がついたのを確認したレオーネは直ぐ様戦闘体制にはいり、隣のラバックも表情を引き締める。

 

「殺させはしねぇ……! インクルシオォォォォォ!!!」

 

 

 

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「ボス! 森には入っちゃダメよ! あそこの動物とか虫とか、全部セイの奴の言うこと聞くから!」

 

「なっ……そ、それは帝具の力なのか?」

 

突入開始から数分後、庭の雑木林から身を隠して近づこうと言うナジェンダをチェルシーは止めた。

以前、あの場所で嫌な思いをしているのだ。近づきたくもない

 

「出鱈目すぎるにも程があるぞ……」

 

チェルシーの言葉にナジェンダの表情が曇った。

 

規格外の程度もエスデスと並ぶ警備隊隊長。だがここまでくるとその存在自体が帝具なんじゃないかとも考えてしまう。

 

まぁ実のところ、セイはそれ以上の存在であるのだが、そんな考えが信じきれないのは当然のことだろう。

 

「アカメ、あまり前に出すぎるな。何があるかわからないからな」

 

「了解した。ボス……!?」

 

アカメがナジェンダへ返事を返したその瞬間、不意に飛来する一条の光。

 

咄嗟に村雨で切り払うが、続けざまに数本の矢が降り注いでくる。

 

数本を切り払い、残りは避ける。

そう考えた矢先のことだった。

 

バラバラに降りかかってくるはずだった矢は、纏っていた赤い光を一瞬強く発光させた。

 

「なっ……!? っ……!!」

 

「っ!! アカメッ!!」

 

矢が意思を持ったようにアカメへと狙いを定める。

 

突然のことで一瞬思考の停止したアカメ。そんなの知るかとばかりに矢は鏃を光らせる。

 

そんな矢を、どこからともなく別の光が撃ち抜いたのだった。

 

 

 

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「ふぅ……危なかったわね」

 

そう呟いたのはセイの屋敷に侵入せず、後方支援に回るようナジェンダに言われていたマインである。

 

狙撃の名手である彼女にとっては、この距離で狙いを外すことはないと言ってもよい。

 

それは動く矢であったとしても同じことだ。

 

「にしても、いろいろと変なもの持ってるわよね、あの警備隊長」

 

今、帝国や革命軍では射程に優れ、威力、連射も弓に勝る銃を使用している。弓のような前時代的な代物は使わない。

が、動く敵を追尾するのなら弓というのもありかもしれない。

 

 

「まっ、私のパンプキンの敵じゃないわね」

 

「そうか。結構な自信作だったんだが……まだまだ改良の余地はありそうだ」

 

「っ!?!?」

 

突然後ろから聞こえてきた声にマインが返したのはパンプキンによる銃撃。

 

だが、その攻撃は突如現れた銀の壁に阻まれる。

 

「おうおう、返事もなく攻撃とは、なかなか良い性格してるじゃねぇか」

 

ゆっくりと壁が球状に固まるなか、その男はそう言って、笑う

 

「……なんであんたがここにいんのよ、警備隊長」

 

「おいおい。攻撃したことについては無視かよ。……まぁいい。なんでってか? よろしい。ならば教えてやろう」

 

ポーチから取り出した宝石を数個ばかり手の中で遊ばせながら、警備隊長ーーセイは手甲を装着した腕で構えをとった。

 

「今回のこの計画、全部お前のために用意してやったんだぜ? 感謝してくれよ、暗殺者」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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