Fateで斬る   作:二修羅和尚

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七十・五話

「よく戻ったな、チェルシー」

 

「ええ。久しぶりね、ボス」

 

セイの自宅を出立し、革命軍の密偵にアジトを聞き出したチェルシーは、何とか仲間のもとへと帰還した。

もちろん、後をつけられてないかの確認は十分に行ってはいたが。

 

ガイアファンデーションがあれば、鳥にでもなって簡単に帰られるのに、というのは帰還途中でチェルシーの呟いた一言である。

 

「ごめんなさい。あんな口叩いて、任務失敗だなんて……」

 

「いや、あれは私の落ち度だ。もっとよく調べるべきだった。……まぁ、こうして無事に戻ってこれたんだ。よかった」

 

そう言って安堵の表情を浮かべるナジェンダ。が、その表情は一瞬。いつもの仕事モードに入る。

 

「それで? お前のことだ。何か掴めたか?」

 

「はぁ……あんまり期待しないでね。調べようとした矢先に捕まったんだから」

 

そう切り出して、チェルシーは話始める。

メイドとして働いていたときのこと、セイとの戦闘、そして地下牢でのこと。

 

ブラートとシェーレの話に入ったところで、ナジェンダが勢いよく椅子から立ち上がった。

 

「生きているのかっ!?」

 

「ええ。今も元気に牢生活よ。あそこ、貴族の家かと思うくらいには快適だから。……閉じ込められる以外は」

 

「……そうか、生きているのか……」

 

ブラート、シェーレ、と二人の名を呟くナジェンダ。

そもそもな話、あのキョロクでの戦いでセイとの戦闘に当たらせた二人は、帝具のみが帝国に回収されてその姿は行方不明。

噂ではセイに肉片一つ残らないように殺された、などというのもあったのだ。

 

「あ、それとこれ」

 

「ん? 手紙?」

 

「セイの奴に渡されたわ。まぁ、勧誘の話だから断っていいと思うけどね」

 

このまま捨てちゃう? と笑うチェルシーに、ナジェンダは苦笑が隠せなかった。

本来なら死んでいたはずのチェルシーがこうして元気なのもあの警備隊長のおかげなのだろう。

 

帝国の敵であるナイトレイドのメンバーを殺さずに捕らえ、かつ拷問どころか客のように扱うそのやり方に、ナジェンダは何とか此方側へ迎え入れられないか、と考える。

 

しかし、その考えは開いた手紙の内容、その最後の一文で吹き飛んだ。

 

「っ! チェルシー! 直ぐにメンバーを集めろ!」

 

「えっ、ど、どうしたのよボス。何か書いてあったの?」

 

この反応でチェルシーは知らされていなかったのだろうと考えたナジェンダ。

説明は後ですると伝え、急いでチェルシーを走らせた。

 

部屋に一人となったナジェンダは、どっかりと椅子に腰を下ろすと、手にもった手紙をくしゃりと握りつぶす。

 

「ずいぶんと嘗めたことを言ってくれるな……!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その後、ナジェンダの部屋へと集まったレオーネ、ラバック、マイン、チェルシー、アカメ、タツミの六名は、チェルシーの帰還、そしてブラートとシェーレがまだ生存していることを知って喜びの声をあげた。

 

「喜ぶのはまだ早い」

 

が、ナジェンダのその一言によって止めざるをえなかった。

 

「チェルシー。お前がこちらへと戻る条件は何だった?」

 

「分かってるわ。私達ナイトレイドの勧誘、でしょ?」

 

「はぁ? あの警備隊長、バカなの?」

 

呆れたような顔で、信じられないと溢すマイン。

だが、それはここにいる誰もが思うことだ。

 

絶対にのらないであろうこの誘いを伝えるためだけに、態々ナイトレイドの一人を返したのだ。

それも、五体満足で情報の規制もしていない。

端から見ればただのアホだ

 

「いやいや、これなんか絶対裏があるでしょ」

 

そんなマインの言葉を否定するのはラバックだ。

なんせ、ラバックはここにいる誰よりもセイのことを知っている。

あのセイがここまでしているのだ。裏がない訳がない

 

「ほぉ? ラバック、どうしてそう思う?」

 

「何でって言ってもなぁ……あいつ、裏で手を回してる割には力技っつーか何というか…。とにかく、わかりきったことをするやつじゃないと思うんですよね」

 

ラバックのその答えに、ナジェンダは黙り込む。

え、まさか当たりなの? という表情のラバック

 

「チェルシーが警備隊長から受け取った手紙の内容。その大半は我々ナイトレイドの勧誘だ。だが、問題は最後の一文だ」

 

『一週間後。ブラートとシェーレを処刑する』

 

その言葉を聞いた瞬間、その場の全員が息を飲んだ。

 

「ボス…」

 

「分かってる。お前の思う通り、これは我々を誘き寄せる罠だ」

 

アカメの言葉にそう返したナジェンダ。

明らかにこちらを誘い出すための罠。

だがそれでも、助けられるならば助けたい

 

「…俺は行くぜ、ボス」

 

「タツミ……」

 

「兄貴が生きてるんだ。絶対に殺させはしねぇ!」

 

腰に携えたインクルシオの剣の柄を握りしめ、強い決意に満ちた顔でそう言ったタツミ。

その姿に、他の面々も表情を引き締める。

 

例え罠だと分かっていても

 

それでも、仲間は必ず救う

 

 

そんな彼ら彼女らを見て、ナジェンダははぁっ、とため息をついた。

 

だが、嫌いではない

 

「各員、これより我々はブラートとシェーレ、二名の救出作戦にはいる。チェルシー、タツミ。あの家に入ったことがあるのはお前達だけだ。頼りにするぞ」

 

 

 


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