Fateで斬る   作:二修羅和尚

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六十九話

さて、それから数日後のことである。

 

結果から言えば、ランは俺の誘いにのってきた。

まぁ、乗ってくるだろうとは思っていたので特に何も思うところはなかったのだが、今回の件を貸し一つとできたのは大きいだろう。

 

チョウリ様と皇帝陛下。あと、オネストという帝国のトップ3監修のもと、チャンプの処刑が行われた。

 

死刑囚となったチャンプはここまで来る間に何度も暴れて逃げようとしていたのだが、面倒なため、これを麻痺毒で黙らせた。

既に指の健は切ってあったのだが、体が大きいというのはそれだけで武器となる。

あとは既に射ぬかれて壊れていた帝具ダイリーガーを回収。使い物にはならないが、これも一応帝国が受けとる形となった。

 

俺的には研究に使いたかったんだけどな

 

結局、帝具もなく、体の自由が思うよう効かないチャンプが帝具持ちであるランに敵うはずもなく、最後には心臓を長剣で貫かれて死亡。

 

これにて、ランの復讐も終わりを迎える形となった。

 

 

 

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「セイ、感謝します。これであの子達も報われるでしょう」

 

「気にすんなっての。ただ、この貸しはでかいぜ?」

 

「お手柔らかに頼みますね」

 

「さぁて、どうすっかねぇ……」

 

こちらの返しに苦笑いするランは、やれやれていった様子で目の前に置かれたカップに手をつける。今日は紅茶だ。

 

「私からも御礼を言わせてもらうね。ありがとう、セイ君。娘と妻を助けてくれて」

 

「いえいえ。それに、御礼なら家のモンに言ってやってくださいな」

 

そもそもな話、俺はあの場にいなかったんだ。御礼を言うなら、警備隊と、その警備隊が来るまで体を張ったエアやファルにだろう。

 

「お、三人で何の話してんだ?」

 

と、そこへちょうどイェーガーズ本部へと入ってくる二つの人影。ウェイブとクロメだ。

 

二人が空いた席へと座ると、手際よくボルスさんが紅茶を用意する。

 

「別に。特に重要な話はしてないな」

 

「そうなのか?」

 

「ええ。あまり気にしなくでもいい話ですからね」

 

首を傾げるウェイブはランにそう言われてふむ、と頷いた。

となりでお菓子にパクついているクロメを見て少し肩を竦めると、自身も紅茶に手をつけた。

 

「で? そういうお前さんはクロメとどこまでいったんだ?」

 

「ブッ!?」

 

隣のクロメに聞こえないよう、小声でウェイブへと話しかけると、ウェイブは急に飲んでいた紅茶を吹き出した。

 

幸い、真正面には誰もいなかったので被害はないのでよかったが

 

「おいおい、汚いだろうが」

 

「お前が変なこと言い出すからだろ!?」

 

今にも掴み掛かってきそうなウェイブを俺は手で制す。

 

「つってもよぉ、最近いい雰囲気じゃねぇか。まぁ安心しろ。そういうことなのであれば全力でサポートしてやるぜ?」

 

「……クロメとは、まだそんなんじゃねぇよ…」

 

「ほぉ、つまり、後々そうなりたい、と」

 

「……」

 

若干顔を赤くしながら黙り込むウェイブをニヤニヤしながら見守ってやる。

 

隣で黙々とお菓子を食べ続けるクロメは、こちらを一見したあと、首をかしげてまたお菓子に手をつける。

 

ふむ、ということはつまり、今はウェイブからクロメへの一方通行、と。

 

「そ、そういうお前はどうなんだよ」

 

「ん? 何が?」

 

「いや、なにがって……お前とセリューだよ。上手くいってんのか?」

 

一転して、話題を切り替えたウェイブは、意趣返しのつもりなのだろう。意地の悪い笑みを浮かべて話をふってくる。

 

「あ~……うん、どうなんだろうな?」

 

「おいおい……それはないだろ…」

 

「いや、真面目な話」

 

実際、俺もどうすればいいのか答えが出ていないのだ。

 

別に鈍感って訳じゃないから、セリューの俺に向ける気持ちが、そういうものであるってのは分かる。

ただ、同じようなのがもう一人いるみたいだしなぁ…

 

いつかは、ちゃんと答えてやらなければとは思っているが

 

「……なんにせよ、この帝国の状況を変えないと、安心もできねぇからな」

 

「……だな」

 

各自が思い思いに過ごすこの場所で、俺はウェイブとともにため息をついた。

 

いったい、いつになったら終わるのかね

 

理想は腐りすぎた奴が死んで、反乱が治まること。

 

 

そんなとき、本部の扉が勢いよくドンッ! と開かれた。

 

「セイ君! 見回りいくよ!」

 

「何でそんな元気なんだよお前は…」

 

片腕にコロを抱いたセリューが俺の服を引っ張る。

やめい、伸びるだろうが

 

「もう体は大丈夫なんですか?」

 

「はい! セイ君がしっかり治してくれましたから!」

 

ランの質問に、以前のように元気に答えるセリューは、ビシッ! と敬礼を決める。

セリューの復帰を祝ってか、ボルスさんやクロメまでセリューのもとへと駆け寄った。

 

「ほらほら、セリューが来たぜ? セイ」

 

「…まぁ、大事ないなら何よりだ」

 

ウェイブの言葉を無視するように俺は踵を返す。

 

「ほら、見回り行くぞ、セリュー」

 

「あ、ちょっと待ってよ、セイ君!」

 

慌ててこちらへと駆け寄って来るセリュー。

その際、抱えていたコロが落ちて、勢いよく引きずられているのだが、大丈夫なんだろうか?

 

「お疲れ様だな」

 

「え? ちゃんと療養はしたよ?」

 

「コロが」

 

「私じゃないの!?」

 

 

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残る人数はあと五人

これがワイルドハントの戦力である。

しかしながら、そのリーダーでもあるシュラはイゾウとともに今は牢屋。

シュラはオネストの裏工作で何事もなく出てくるだろうが(心は別)、イゾウは時間がかかるだろう。

まぁ、オネストが手を貸す可能性があるため、決めつけられないが、それでも少しはワイルドハントの動きが止まるだろう。

 

俺は分体を呼び出してワイルドハントの各メンバーに一人ずつ監視をつける。

一人になり、隙ができたなら殺っても構わないとも言ってある。

 

さて、そんな中、俺はというとだ。

 

 

自宅の地下の牢屋。

 

 

新たな面子が増えたその場所へと訪れていたのだった。

 

 

 

 


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