あれから数日。
サヨたちはまだ結論が出ないようだ。最近は、ただ泊めてもらってるのは悪いということでうちの屋敷の使用人&護衛見習いみたいなことをしている。
二人とも、村ではかなり鍛えていたようで、うちの護衛の人間を相手に十分な立ち回りを見せていた。
できれば、警備隊に欲しいくらいに。
他にも、タツミという名の少年と一緒に帝都へ向かっていたそうなのだが、途中で夜盗に襲われてはぐれたのだとか。その少年は二人よりも強いらしい。
見つけ次第、サヨたちも含めて警備隊に誘うかな。
ちなみに、二人の世話は年が近いということもあって、エア、ルナ、ファルの三人娘に任せている。
時折、鼻の下を伸ばすイエヤスの姿を見かけるが、その度にサヨに耳をつねられているので、まぁ暴走はしないだろう。したら俺が締めるけど。
まぁ、そんな感じで数日の日数が過ぎたんだが、今の俺が何をしているかといえば……
「A班、B班は西から、C班、D班は東から回り込め!! いいな!」
『了解!!』
お仕事中でした
「セリュー!! お前はコロと隊員数人を連れて正門から突入しろ! 俺は裏から回り込む!」
「わかった! セイ君も気をつけて!!」
「わかってら! あと、仕事中は副隊長と呼べ!!」
部下数名と駆けていくセリューの背中にそう怒鳴ると、俺はすぐに駆け出した。
何故今こんなことになっているのかといえば、答えは勿論一つだ。
帝都内にナイトレイドが現れた。
標的になっているのはとある貴族の家だ。
つい先ほど連絡が回ってきたため、大急ぎで隊員を集めて向かわしたが、これでも間に合うかは分からない。
すでにその家の貴族はみんな死んでいると判断しても構わないだろう。
「帝都のクズか減るのは歓迎なんだけどなぁ…」
ため息とともにそんな言葉が漏れた。
ナイトレイドが標的とするのは帝都の闇やオネスト派のクズ文官や外道貴族。きっと、今回の犠牲となっている貴族も例に漏れないはずだ。
東西から向かっている隊員にはそれらの証拠を集めさせるとして、問題はナイトレイド。
いくらやっていることが助かることでも、世間からすれば殺し屋集団なのは変わりない。そして、俺たち警備隊の仕事は帝都内の治安維持だ。
お仕事はお仕事。給料もらっている立場であるため、それは仕方ない。
……まぁ、給料貰わなくとも問題はないんだけどね!
手甲の腕の内側に取り付けられた宝石と腰の大瓶の状態を確認する。
そんな時だった。
「! 動いたか!!」
前方通路、その上空。
屋根伝いに通り過ぎていく七人の影。
今晩は月明かりが弱いため、はっきりとは見えなかったが、それでも、その中の一人とはバッチリと目があった。
アカメ
帝具村雨を所持する少女。調べた話、元は帝国の暗殺部隊の人間だったとか。
残念ながら、俺はアカメとの面識はない。が、今見えた一瞬の身のこなしだけでも、強いのはわかる。
その他もみんなそうだ。一名、担がれていたので、そいつのことは分からないが、流石帝具持ちの一味だ。
あれがフルメンバーかどうかは分からないが、顔さえ見れれば、手配書が作れる。それに、今は仕事中。なら、ここでの選択肢は一択だ。セリューたちを呑気に待っていられる時間はない。
「追うっきゃねぇよな!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「俺が斬る」
「あ………」
バタリ、と一人の少女が少年に斬り伏せられる。
少年ーータツミは、昨日、アリアと名乗った貴族のお嬢様に家へと招かれ、今日1日を護衛として過ごしていたのだが、事件はその夜に起きた。
帝都最強の殺し屋集団、ナイトレイドが自身が身を置かせてもらっている屋敷へと襲撃しに来たのだった。
が、その最中で、タツミはこの家の者の本性をナイトレイドの女ーーレオーネによって教えられ、そして今現在へと至っている。
「アカメ、こいつも連れて帰ろうぜ」
「構わない。人材はいつでも不足している」
「……え?」
何を言っているんだ? と頭に疑問符を浮かべるタツミ。どういうことなのか尋ねようとするが、口を開きかけたところで別の声に遮られる。
「アカメちゃん、姐さん、ヤバイ! もう警備隊の奴らが来てる!!」
「はぁ!? 幾ら何でも早すぎるわよ!!」
上空ーー正確には空中に張られた糸の上で、ツインテールの少女が声を上げた。
「任務は完遂した。これより、直ぐに撤退する。ブラート、この少年を頼む」
「おう! 任せとけ!」
「え? 何が……ちょっ!?」
ブラート、と呼ばれた鎧の男がタツミの体を担ぎ上げる。
その様子を見て頷いた少女ーーアカメとレオーネ、ブラートは直ぐに糸の上に飛び乗ると屋根伝いに帝都の街を駆けていく。
「ちょっと! いったい何がどうなって……」
「安心しろ。すぐに良くなる」
一瞬、鎧の男の背後にバラ園が見えた気がしたタツミであった。
「……む?」
「ん? どうした? アカメ」
そんな中で、何かに反応したアカメに、レオーネが問いを投げた。
「……今、警備隊の副隊長と目があった気が…」
「げっ!? アカメちゃん、それマジ?」
「なによ、ラバ。普通の隊員でしょ?」
「いや、あれは普通って呼んだらダメだと思うんだけど……」
アカメの言葉に過剰に反応するラバック。そんなラバックの様子に少女ーーマインは首をかしげるのだった。
「多分セイなら、この後追って……」
『追うっきゃねぇよな!!』
「ほらきたぁっ!!」
七人の後方、屋根に飛び乗ったのは一人の手甲を嵌めた青年だった。
ちょっと戦闘に入るよ