護衛部隊『Fate』
我が家の警備やメイドたちの護衛などを行う俺が作った人外の集まりである。
その戦闘力は将軍にも届くかもと思われるほど。
計七つの小さな部隊の集まりであり、それぞれが得意分野で分かれているため、前世からの知識を引っ張って名前をつけた。尚、これに関しては完全に趣味だ。
セイバー、ランサー、アーチャー、キャスター、ライダー、アサシン、バーサーカー
それぞれ二~三人ずつの部隊だが、雑魚相手であれば文字通りの無双も可能な少数精鋭。
勿論、前述の通り、こいつらはまともな人間じゃない。
元々は、俺が助け出した人材たちであり、剣や槍が少し得意だったり、頭がよかったりしただけの普通の一般人である。
唯一普通ではなかったのは、俺に対する忠誠心であろうか。
俺のためなら喜んで死ぬ、とまで豪語した彼らのその熱い言葉には、感動をこえて少しばかりドン引きしたものだ。
で、だ。
ならばと思い、俺は彼らにある提案をしたのだ。
前々から考えてはいたのだが、いざ身内ないでやろうと思うとなかなか踏み出せなかったこと。
魔術による人体改造である。
人体改造といえば元イェーガーズのDr.スタイリッシュが真っ先に思い浮かぶが、彼が科学であるのに対して、こちらは全く理の異なる魔術。
一応、捕まえたスタイリッシュの改造兵を解剖したり、魔術による改造が可能かどうかの実験を家に無断潜入しようとしていたお客様を使って成功していたりするから問題はないはずだ。もちろん、失敗したやつもいたんだけど、仕方ないよね、技術の進歩だと思って、という意見の元、成功体も含めてまとめて処分しておいた。
と、まぁそんなわけで、俺は彼らの改造に踏み切ったのだが、「頼み事がある」で即効「はい喜んで!!」という彼らに俺は呆れてしまったものだ。
その実験なのだが、俺が魔術によって一時的に仮死状態にした彼らを『道具』とすることで俺の持つ道具製作のスキルを存分に発揮。スキルランクCではあるものの、もはや道具製作万能説まで唱えそうな俺である。
結果、彼らの体はもはや人とは思えない程の力と能力を得ることになった。
尚、実験、というよりも手術であるこれは彼らの体の中に俺の魔術回路を解析、模倣した擬似魔術回路を作成し、植え付けたのだ。
これにより、セイバー、ランサーの部隊は身体能力を、アーチャーは視力と膂力の強化、キャスターは脳の強化によるマルチタスク、ライダーは五感の強化、アサシンは脚力と五感の強化。そしてバーサーカーは少し特殊で、普通にしていればただ兵よりも少し強いといった程度だが、発動すれば、セイバーやランサーを越える恐ろしいまでの身体能力と治癒力を与える代わりに著しく体力を消耗し、寿命も縮める狂化能力。諸刃の剣であり、切り札のようなものだ。
もちろん、彼らに持たせてある武器も俺が色々と改造したものだ。
だから、彼らを出した時点で俺はシュラたちの確保は確定的だと思ったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「で? 何か言い残したいことはあるか? この野郎
」
「ふむ? あえて言わせてもらえば…」
「……」
「適度な固さで割りとすぐにイキそうになったな」
「よし殺す」
言うや否や物干し竿を出して首を狙って刃を振るう。
「ふ、他愛なし」
しかし、いくら俺の十分の一の能力であるとしても、どうしようもないホモであっても、こいつは俺の一部、とは認めたくないのだが、それでもこいつはアサシンだ。
口元だけ見える骸骨の仮面であるため、刀を避ける際に笑っていたのはわかる。
ので、ここぞとばかりに急所へと蹴りを入れる。割りとマジで
「△%*▼*△ッ!?!?!?」という謎の悲鳴をあげながら倒れたそいつを見てすこし怒りの溜飲を下げた俺は、分体を回収し、こいつの記憶のみを封印する。鏡を使った暗示の魔術である。
副隊長たちの援護から帰って来た分体を直ぐに回収したまではよかったのだが、流れ込んでくる記憶の中に身の毛もよだつ恐ろしい内容があったため、当事者である分体を呼び出していたのだ。
たく、恐ろしい目に遭った。が、もう思い出せないので関係ない
え? がちほものびーえる? せいくんいいこだから、なにいってるのかわかんないよぉ?
「……っと、こんなことしてる場合じゃねぇや」
止めていた足を動かし、俺は一人イェーガーズの本部へと向かっていた。
別にイェーガーズにも所属している俺が行っても不思議ではないのだが、今回、俺は警備隊長として、そしてチョウリ様の使いとして訪れる。
理由としては、そこにいるとある人物にある提案をするためである。
もちろん、この案は事情を話して無理矢理でもチョウリ様にお許しをいただき、そして皇帝陛下をチョウリ様と二人がかりで説き伏せ、その権利を得たのだ。
「おや、セイ。どうしたんですか?」
部屋にはいると、そこにいたのはラン一人。
なんとも都合がいい。これなら、ここで話してもよさそうだ。
「ちょうどよかった。ラン、お前に一ついい話を持ってきた」
「? 何でしょうか?」
いつも通りに微笑みを絶やさないランは、俺の言葉に不思議そうに首をかしげた。
「地方で指名手配中だった殺人鬼、チャンプを捕らえた。既に死刑判決を下され、その死刑方法については、俺が一任されている」
「……何が言いたいんですか?」
瞬間、ゾッとするような視線を俺に向けてくるラン。いつもの様子からは到底考えられないそれではあるが、以前ランの過去を聞いた際、同じような目をしている時もあった。
「単刀直入に言おう。チャンプの死刑。それをお前に任せようと思っている」
改めて言わせてもらう。
ご都合主義であると!!