Fateで斬る   作:二修羅和尚

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ちょっと、無理矢理で雑になったかなぁと思うけど、それでも


六十五・五話

アルフレッド・バルトフェルドは元執事である。

 

帝国でとある田舎貴族に仕えていた彼は、幼少の頃から仕える主のため、日々研鑽をつんでいた。

礼儀作法は完璧に。いざというときのための戦闘力。更には、役に立つよう知識も深めた。

 

元々、天才気質であった彼はそんなものも淡々と何でもないようにこなしていた。

できて当たり前。それが彼の当たり前だった。

 

全ては己の主のため。そう言いつけられて、彼はその才を磨いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『今日で見習いは終わりだ。付いてこい』

 

執事長である父に連れられたのは五歳の頃だった。

連れていかれたのは、他の部屋よりもややしっかりとした造りの部屋。そして、危険種の皮で作られたソファーに腰を下ろす一人の男。

自身の父よりも若い見た目のその男であったが、静かに目を閉じ、堂々としたその様子から、ここの主であると瞬時に悟る。

 

『旦那様。連れて参りました』

 

座る主の前にたち、そう告げた父。初めて目にする自身の主に、少しばかり緊張したのを覚えている。

 

『おっ、マジ? てか、父に似て無愛想だなぁ~!』

 

この人主なの?

 

その時、父にそう問うのだったが、父は眉間に指をやって呆れるばかりだった。

 

その後、軽い挨拶(というか、一番偉い人が一番軽かった)を済ませた三人。そして『カモ~ン』という謎の掛け声を発する主の合図で入ってくる同い年くらいの少年。

 

父は言う。この人が自身の主になるのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの軽い主の父は、意外にも優秀らしい。言動からは想像できないのだが、自身の父よりも才があるのだとか。

 

だが、自身が専属となった主には、そんな才はなかった。

それも無能、といっても過言ではないくらいに。

唯一の長所といえば、お人好しであるところだろうか。

しかし、貴族としてこの家を継ぐのであれば、そんな長所は短所に等しい。

ならば、自分が代わりをすればいい。才のない主よりも、才のある自分がやればより上手くいくに決まっている。

主の至らぬところを補うのが自分達の役目であると父は言った。ならば、主の至らぬ全てを自身で補えばいい。

 

 

なんせ、自分はこの主の執事なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言われたのはいつの日だっただろうか。

 

あの軽い主の父と自身の父が、帝国へ向かう途中、賊に襲われて死亡した。

そのため、急遽その後を継いだ主は、無能ながらも領地を守ろうと頑張っていた。

ただ、主のやり方は全てが非効率で生産性が悪い。そんなことではこの領地は守れない。

 

父の後を継いで執事長となった自分は、そう考えて主の政策を改良していた。

全ては主と、その主の守ろうとする領地のために

 

お陰で、領地は潤った。田舎貴族ながら、帝都の貴族に負けないくらいの財はできた。

その頃からだっただろうか? 夜逃げする領民が出始めた。

 

訳がわからない。何故逃げる必要があるのか。

領地が潤えば、富むのは領主のみならず、それは領民にも言えることだ。

 

『抗議の声が上がっている』

 

主に呼び出されたのはそんな時。

 

『少し、やり方が厳しいんじゃないか?』

 

そんなことはない。

いいものを作ろうと思えば、そのくらいの苦労は必要だ。自身が学んだ方法で作れば、それは最上級の品になるし、それは高く売れるのだ。

だから、厳しくなんかない。それにだ。一度自分でもやってみたが、あれくらいなら誰でもできる。

 

『何でも君基準で考えるのは良くないよ』

 

そう言って、主は自分を下がらせた。

その後、主が新しく政策を改訂した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり、主は、無能だった。

 

生産効率は落ち、前ほどの税収も得られなくなった。

 

これではダメだ。

そう主に抗議しにいったのだが、返ってきたのは『人の笑顔が増えて喜ばしい』というとんちんかんな答え。

 

何が笑顔だ。

前より貧しくなって、笑顔になれるわけがない。

何故自分のやり方を拒否するのか。自身のやり方なら、もっと上手く主も領民も(あなたたちを)豊かにできるのに

 

そのような内容で猛抗議した。

 

 

 

 

 

 

『君は人の気持ちが理解できないのかっ!?』

 

出来ることを出来ると言って何が悪いのか

 

『皆が皆、君みたいな才を持ってないんだよ!』

 

ならそれはその才のない者が悪い

 

『っ……もういい。君はこの屋敷から出ていってくれ』

 

そう言われたなら仕方ない。

 

理解されないのならここにいても意味はない。

 

 

 

 

 

 

風の噂だが、元主は没落したようだ。

そんな大それた理由なんてない。ただ、借金がかさみ、それを返せなくなった。それだけだ。

だから言ったのだ。

 

ただ、心残りがあるとすれば一つ。

 

守るべき場所を守れなかった、ということだろうか

 

 

やがて、帝都警備隊に入ることになった。

はっきりとした理由なんてなかったが、帝都を守る、という言葉に、自身の悔いを重ねたのかもしれない。

戦闘に関してはかなり自信があったが、警備隊で扱うのは主に剣や銃。

長年トンファーを扱っていた身としては扱い難いことこの上ない。

才のある自分でも、剣の腕はなかったようだった。

 

 

 

そして、私は出会うことになる。

 

『セイだ。まぁ今日からよろしくな』

 

私が、真の主として扱うべき人を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、仕事してくださいよ、隊長」

 

「うおぉぉぉ!! 副隊長の鬼畜ぅぅぅぅ!!!」

 

あと、この人すごく面白い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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