Fateで斬る   作:二修羅和尚

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六十四話

「国外には反乱軍やらがいるってのに、帝都は随分と平和なんだな」

 

「帝都の治安維持については、我々が責任を負ってますからね。しかしまぁ、これが帝都の外となると、また話は違ってきますが」

 

地獄の書類作業から数日後。俺と副隊長は久しぶりに帝都でパトロールを行っていた。

すっかり冬となり、雪も降るようにはなったが、俺手製のローブの性能は抜群である。これ一枚で寒さがほとんどないのだ。

 

「悔しいが、俺たちは帝都警備隊だ。ここの外までは干渉できねぇ。……もっとも、反乱軍との蹴りがつけば、すぐにでも手を出すがな」

 

「……見てみたいものですね、そんな世界を」

 

「…死亡フラグじやね?」

 

「殴りますよ?」

 

チャキッ、と一瞬で先端の尖ったトンファーを掲げてちらつかせる副隊長。

ちょっ、怖い怖い怖い。危ないからそれ

 

手でストップをかけながら落ち着かせる。何お前、暴れ馬なの?

口で言おうものなら、すぐにでもトンファーが飛んできそうなため、心の中にもとどめる。

渋々といった様子で舌打ちをしながらトンファーを降ろす副隊長。一応、立場は俺のほうが上なんだけど、なんで対応がこんなになってるのかな。

 

「……しかし、久しぶりですね」

 

「ん? 何が?」

 

「隊長とパトロールすることが、ですよ。前回はまだ私が新人の頃でしたから」

 

表情は変わらないながらも、どこか柔らかい雰囲気の副隊長。

 

「あぁ…確かそうだったっけな。俺の記念すべき部下1号だったわけだし」

 

俺が入隊した後に入ってきたこいつの面倒をあのときまだ隊長だったオーガに押し付けられた俺は、仕方ないながらもこいつと行動していた。

しかし、剣の腕はないながらも、トンファーを扱うこいつの実力はなかなかのものだった。あのときで既にオーガくらいなら倒せそうな感じだったし。

 

暇さえあれば俺に稽古を頼んだりもしていたため、今ではその実力も相当なものだ。特級危険種くらいなら辛勝できるだろう。もちろん、武器は普通のものでだ。

 

「まぁ何にせよ、俺たちのやることは変わりない。……パトロール続けるぞ」

 

「ですね。帰ったらまだ書類もありますし」

 

「なん……だと……!?」

 

なんでも、先程終わらせたのは昨日までの分らしい。そして、息抜きとしてのパトロールが終われば、今度は今日の分。量は今までよりも圧倒的に少ないのだが、もう、手がヤバい。正直、治癒魔術がなかったら手が死んでたかもしれん。

 

「まぁ、これも隊長になったからしかたないですよ」

 

そんな副隊長の笑顔は黒かった

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「何だと!? それは本当か!?」

 

「は、はい!!」

 

本部で仕方なく書類を片付けていると、突然慌てて部屋に駆け込んできたイエヤスとサヨ。

何事かと思って事情を聞いてみれば、何やらワイルドハントとか名乗る集団が帝都の劇団を訪れ、調査という名目で惨殺、強姦を行った、とのこと。

 

「副隊長。すぐに隊員を率いて劇場へ向かって、人払いを。そのあとは見張りをつけて劇場の内部を調べてくれ」

 

「了解しました」

 

手早く準備を整えた副隊長はそのまま本部の部屋を出ていく。

一応、近くの支部が対応してくれているだろうが、数が足りないはずだからな。

 

「イエヤス。そのワイルドハントについて、何か情報は?」

 

「お、おう。あんまり知らねーけど、大臣の息子が率いてたとかなんとか…」

 

「そうか、わかった。それと、今は事態が事態だ。敬語は使え」

 

「お……はい」

 

「よし。イエヤスはそのまま副隊長につけ。サヨはそのまま下のマップについてくれ。使い方は分かるな?」

 

「はい!」

 

「話は以上! 行ってこい!」

 

元気よく返事をして部屋を出ていく二人を確認して、俺は装備を整える。

 

「分体、いるか」

 

「ああ、いるぜ」

「呼ばれて飛び出てなんとやらだ」

 

手甲を嵌めながらそう呟けば、背後に音もなく現れる二つの影。

俺が調査に出していた分体だ。

 

二人の存在を確認したのち、俺は妄想幻像(サバーニーヤ)を解除する。

すると、二人の掴んできた情報が丸々ごっそりと俺に還元されるのだ。

 

……途中のしょうもないやり取りはカット。恐らくシュラと思われる人物のケツの映像もカット。…こいつは何をヤッていたんだ?

 

 

思わず頭を抱えたくなるような情報はさておき、かなり役立つ情報が多い。

敵はあの金髪ロリのドロテアとオネストの息子であるシュラを含めた六人。

 

 

……

 

 

「え、あいつ息子いたの!?」

 

しかも美形だ。何それ怖い

 

 

まぁやってることが屑であるため容赦はしないが。

 

 

そして、もうひとつ。このチャンプとかいうデブなんだが……

 

「確か…ランの仇だったっけか?」

 

ロリショタを殺すことに快感を覚える変態らしいが、その姿形から見ても変態だ。町で見かけたら不審者なレベル。

 

あとは元海賊だったり、人斬りだったり、魔女だったりとなんとも言えない連中だ。

そして、各々が帝都で好き勝手できるというシュラの誘いにのってやってきたみたいだ。

 

「まったく、嘗められたものだな」

 

ドロテアには他の連中にも言っておくよう言ったんだがな。どうやら、あのシュラの認識では、俺たち警備隊はとるに足りない雑魚らしい。

オネストにも注意されていたようだがなぁ。

 

まぁいい。

帝具持ちだろうが、なんだろうが、俺の縄張りであるこの帝都での狼藉は許されない行為だ。

 

額にスペクテッドを装着し、部屋を出る

 

 

よろしい

 

 

「ならば、戦争だ」

 

 


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