Fateで斬る   作:二修羅和尚

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七話

「ほぅ? んじゃ、イエヤスとサヨは軍志望か?」

 

「うっす! 早いとこ名を挙げて村を救うんだ!」

 

時は移り、現在は我が家の一室にて食事中。

俺の隣にセリューが、向かいにイエヤスとサヨが座り、ニアとルナが運んできてくれた鍋をつついている。

 

「地方は重税で苦しいですから。私たちが軍で稼げば楽になると思ってるんです」

 

「なるほどねぇ……っと、セリュー。野菜が丁度いい頃合いだ」

 

「あ、うん! セイ君のも取ってあげるよ」

 

器貸してね、と俺の手元にあったのを片手に、セリューが鍋の具材を盛っていく。

少しして、俺の分が出来上がったので受け取ると、肉団子を一つ口の中に放り込む。

 

うむ、美味である。形が悪いのはファルが作ったからかな?

 

 

「まぁ、確かにその考えも間違ってはないが……あんまりお勧めしないぞ?」

 

「え? どうしてですか?」

 

「今は不況で、雇える数に限りがあるからな。それに、採用されても地方だ。名を挙げるのなんざほぼ皆無だぜ?」

 

現在、帝都はそれはそれはもう不況の波がすごいのである。

更に、大臣のせいで税金は高いわなんやでそれも問題となっている。

俺はこうしてかなり楽な生活ができているが、本来ならもっときついはずなのだ。

 

「あと、街中じゃあんま口に出せないが、今の帝都で働くのはやめといたほうがいいかもだぜ?」

 

「? なんかあんのか?」

 

不思議そうに首をかしげるイエヤス。そういえば、この二人は今日帝都に着いたばかりで、何にも知らないんだったな。

 

「一言で言えば……」

 

「…腐ってるんだよ」

 

俺の言葉を遮り、セリューが徐ろに口を開いた。

 

「腐ってる、ですか?」

 

「うん。私もセイ君に教えてもらうまでは何にも知らなかったんだけどね……闇が、深いんだよ」

 

「まぁそういうこった」

 

「……どういうことだ?」

 

いまいち話の内容が理解できなかったのか、イエヤスが俺に問うてくる。

 

「例を挙げりゃ、地方から出てきたばっかの田舎もんを言葉巧みに騙くらかして趣味で拷問にかけたり、女性を攫っては死ぬまで暴行を加えたりなんかざらにある」

 

「い、田舎もんって……」

 

「も、もしかして、私たち、かなり危なかった……?」

 

一歩間違えていたら、自分たちがどうなっていたのかが想像できたのだろう。二人は少しの間口を閉ざし、ブルッと身震いをする。

 

「まぁそういうことだ。お前ら、セリューに感謝しとけよ? 一応、見つけたのはこいつだからな」

 

「ちょっとセイ君。私年上」

 

「なら、もっと年上としての自覚を持て」

 

ペシッ、とセリューの頭にチョップを落とせば、セリューの口からあぅっと言葉が漏れた。

おっと、コロは現在、ニア、ルナ、ファルの三人娘が様子を見てくれているので大丈夫だ。無視しているわけではない

 

「……どうして、そんなことに?」

 

「今の大臣が一番の要因だな。てか、それ以外に思いつかん」

 

「だね」

 

サヨの問いに即答でオネスト大臣の名を挙げる。

現在の皇帝は幼くまだ子供だ。だが、この子供を皇帝に仕立て上げたのがそば付きの大臣であるオネストだ。前にチョウリ様の話を聞いたが、なかなか頭は切れる曲者なのだとか。

んで、この大臣のいうことは何でも信じちゃう皇帝。傀儡以外の何でもない。

国をよくしたいと願う皇帝らしいが、それも大臣を信用しきっているが故に叶わぬ願い。皮肉以外の何でもない。

 

「おまけに、大臣と真っ向からやりあうような良識派の文官は冤罪で処刑やら暗殺やらで消されることもある。腐りきったんだよ。この国は」

 

「だから、国の周りに敵が多いんだもんね」

 

西の異民族やら、北の異民族、おまけに南には革命軍。

まぁ北の異民族は帝国最強とか言われたる人が制圧に向かっているらしいが。

 

「んじゃあさ、何で二人は国に仕えてるんだよ? 見限ってもいいくらいだろ?」

 

話を聞いていたイエヤスが尋ねてくる。まぁ、もっともな質問だ。普通なら、革命軍とかに入ってもおかしくはない。

 

「何で、ねぇ……まぁ、あえて言えば信じてるから、かな?」

 

「? 何を?」

 

「今の現状を変えるには二つの方法がある。革命軍みたく、外から全部ぶっ壊すか、中から変えるかの二択だ。幸い、近々俺の恩人の元大臣が帝都に戻ってくる。そうなりゃ、道は見えたも同然だ」

 

「政治で対等にやりあえる人らしいからね。その人を中心に良識派がまとまればうまくいくはず」

 

「それに、元大臣ーーチョウリ様には確実にあのブドー大将軍が後ろ盾になってくれるはずだ。そうなりゃ、あのオネスト大臣も簡単に手は出せねぇ。そこに俺や警備隊も加われば、良識派の戦力はグッと上がる」

 

ただ、一番のネックは帝国最強と言われるエスデス軍とやらがオネスト側にいることだ。それさえどうにかできれば、オネスト派は簡単に傾く。

ついでに、オネストの尻尾もつかめりゃ万々歳だ。

 

「へぇー、なんか、難しそうな話だな!」

 

「……イエヤス……あんたのそのバカ丸出しの発言は止めてよね」

 

「んだとぉ!?」

 

ため息を吐くサヨに、騒ぎ立てるイエヤス。俺とセリューはそんな様子に苦笑した。

 

「まぁそんなわけで、だ。軍とかはもうちょいじっくり考えることを勧めておく。二人の意見がまとまるまでは、この屋敷で過ごしてくれてもいい。部屋は案内させるから安心してくれ」

 

「あ、はい。何から何まですみません…」

 

気にすんなよ、とだけサヨに返し、俺はセリューとともに席を立つ。

食事の片付けは、他の使用人の人たちに任せているので心配する必要はない。

 

「んじゃ、セリュー。腹ごなしに一戦、道場でどうだ?」

 

「あ、やるやる! ここ最近やってなかったからね。今日は一本取るよ!」

 

「取れるもんならな」

 

 

その日、俺とセリューの格闘戦は深夜遅くまで続くのだった


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