Fateで斬る   作:二修羅和尚

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五十九話

「……来たか」

 

エスデスたちが警護している屋敷の方から兵士たちの騒がしい喧騒が風にのって聞こえてくる。

エスデスの予想通り、やはり今晩を選んだようだった。

 

しかしながら、俺のいるところを通らずにどうやって忍び込んだのかは気になるな。ランの予想では、空からか、もしくは地中から来る可能性があるってことだったから地中からかね?

 

まぁいい。そんなことを考えるのは今回の任務を成功させてからだな。

信徒の女性の食事に少しずつ薬を盛って、色々と好き放題やっているボリックは気にくわない。本当なら警護なんざお断りなんだが、現状この最大の信徒数を誇る安寧道の反乱を抑えているのはボリックのおかげといっても過言ではない。

 

西の異民族に南の革命軍。これに東の安寧道まで加わるとなれば帝国としても面倒この上ないだろう。

だから、今はボリックをどうこうするつもりはない。すべてが終わってから、牢にぶちこんでやる。

 

「……とまあ、そんなこんなでエスデスたちの援護に向かう予定だったが……行かせるつもりはねぇんだろ?」

 

「おっと、気づかれてたか。流石だな、警備隊長」

 

「最近、警備隊の仕事してねぇから自覚薄いな」

 

帰って、副隊長からどんな虐めを受けるのか考えただけでも怖いよ

 

「で? 大方俺の足止めってところか」

 

「だな。お前をあっちに向かわせるつもりはねぇからな」

 

そう言って、肩に担いだ斧ーー二挺大斧ベルヴァーグを構えるブラート。

投擲すれば勢いの続く限り標的を追尾する帝具であり、元々はエスデスの部下である三獣士の大男が使っていたものだ。

 

あれの破壊力はかなりのものだ。正直、月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)の壁や物干し竿で受けるのは禁物。破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)で受けるのもキツいだろう。

宝具であるため、なかなか壊れないとは思うが、それでも壊れるときは壊れる。

 

ブラートと対峙し、俺も破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を構える。

が、その直後に俺を襲った嫌な予感に体が反応し、瞬時にその場から離脱する。

 

数瞬後、俺の元いた場所に大鋏の一閃が振るわれた。

 

「奇襲は失敗か…」

 

「すみません。少し、遅かったです」

 

「気にするな。当たれば儲けもの程度だったしよ」

 

攻撃が外れるや否や、跳んでブラートの隣に着地する紫色の長髪の女性。

 

「…シェーレか」

 

「はい。お久しぶりですね、セイ君」

 

「セイ君止めい」

 

大型の鋏ーー帝具万物両断エクスタスを構えながらにっこりと微笑むシェーレ。

改めて気配を探ったが、どうやらこの二人以外はいないようだ。

つまり、俺の相手はこの二人、と。

 

「随分とまぁ攻撃重視の組み合わせだな」

 

ベルヴァーグにエクスタス。単純な火力なら帝具の中でも上位に位置する帝具である。

 

もっとも、その分速さで劣る訳なんだが。

 

今の俺は、魔術やらを使わないスピード特化の戦闘スタイルだ。正直いってナイトレイドの采配ミスとしか思えない。

 

「いきます!!」

 

鋏の刃を開いた状態で駆けてくるシェーレ。

確かにそのスピードは常人から見ればかなり速いだろう。だが、俺にとってはまだまだ遅い。

流石にあの鋏で宝具を切断されるのは勘弁なため、刃に当たらないように側面を穂先で叩き、軌道を変える。

その直後、真上から分離された斧が飛んできた。

 

「おっ!?」

 

心眼(偽)(スキル)によってさの刃を避けた俺は視線を一瞬ブラートにやった。

まさか真上から来るとは思ってなかったため、今のはビックリした。

 

でもまぁ

 

「脅威、と言えるほどではねぇわな」

 

ボソリと呟いた俺の言葉は二人には届かない

 

 


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