Fateで斬る   作:二修羅和尚

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久々に五千文字越えたぜ…


五十七話

「コロ!!」

 

「こ……んのっ!!」

 

コロと呼ばれた巨大化した帝具ヘカトンケイルに向けて、マインは五条の光を放つ。

光ーーレーザーはコロの体を抉り、貫通行くが、生物型帝具であるコロの体はすぐに修復を始めた。

 

「ハァッ!!」

 

「なっ!?」

 

しかし、コロへと気がそれている間に背後を取っていたセリューの蹴りを背にくらう。

いつの間に!? という言葉が出る前に前へと蹴り飛ばされたマイン。そんなマインを待つのはその巨大な腕で殴りかかろうとするコロの姿。

 

「っ!!」

 

空中で崩れた姿勢を、下へ上へとエネルギー弾を放つことで整えたマインはそしてーー

 

「喰らいなさいっ!!」

 

先程よりも太くなった光がコロを襲った。

 

帝具パンプキン

自身の精神エネルギーを糧とすることで攻撃する銃型の帝具。所有者がピンチになればなるほどその威力を増していくという謎仕様。

 

まさにピンチとも言える状況で放たれた攻撃は、容易くコロの胴体を貫通していく。

 

「っ! また火力が…!!」

 

その様子を見ていたセリューが焦りの表情を見せる。

確かにコロは生物型帝具。受けた傷は直ぐに回復する。

しかし、コロの核を破壊されればそれまでとなる。

 

「言っとくけど、前に戦ったときのことも覚えてるから、消去法でだいたいの核の位置は分かってんのよ!!」

 

セリューとコロから距離を取ったマインはそう言いながらエネルギー弾をマシンガンのように連射する。

 

ーー紅い核がその姿を一瞬だけ見せた

 

「っ!?!? コロ!! 奥の手(狂化)!!」

 

「ガァァァアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!」

 

白い体毛が一気に赤黒く染まる。

自身の体内エネルギーを著しく消費することで発動する帝具ヘカトンケイルの奥の手。

基礎ステータスを大幅に上昇させるのだが、使用後三ヶ月はオーバーヒートでまともに動けないという諸刃の剣

 

狂化直後に敵を怯ます咆哮を放つコロ。しかしながら、前回のことで対策がとられていたらしく、あまり効果は見られない。

 

耳栓でもしたのだろう、と考えるセリュー。

 

「コロ! 特攻!!」

 

「ガラァァ!!!」

 

地を蹴って飛び出していくコロ。その突進力は流石奥の手。今までの比にならない勢いであった。

が、しかしマインもマインで新たにピンチを迎えている。

それすなわちーー

 

「撃ち抜くっ!!」

 

何かが爆発したのではないか、と思える音を響かせたパンプキン。

放たれた大威力のこもった1条の光はコロの口から尾にかけてを貫いた。

 

「だからぁ!! よそ見ぃ!!」

 

「ガッ!?」

 

大威力の攻撃を放ったがための一瞬の反動。

コロの後から追走し、その一瞬をついたセリューは手甲をはめた拳を握りしめてマインの顔面にそれを叩き込んだ。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

 

それと連続で

 

マインに反撃する暇を与えずに、顔に、体に、帝具にその拳を放った。

 

「ッンのッ!!」

 

「シッ!!」

 

「グッ……!?」

 

ここぞとばかりに反撃を試みたマインであったが、その攻撃は容易く見抜かれ、身を捻ってかわしたセリューに蹴飛ばされた。

 

「ナイトレイドのマイン! あなた自身に恨みはないかもしれない……けど、敵である以上、ここで討たせてもらうっ!!」

 

「ぐっ……! こ、こっちだって、負けるわけにはいかないのよ!!」

 

問答無用とばかりに、無防備だったセリューへ発砲するマイン。

しかし、その攻撃に対して、セリューはただ、両手を突き出したのみ。

 

「『結界発動』!!」

 

パキンッ、と内部に埋め込まれていた宝石が割れる。しかしその直後、突き出した両手の前にセリューより少し大きめの緑の障壁が現れ、そして光を防いだ。

 

「ッ!? あんたそれ、あの警備隊長の…!!」

 

「セイ君特製の手甲だよ!!」

 

道具製作のスキルをフルで使って、セリュー用に調整したオリジナルの手甲。

魔術師でないセリューにどうやって結界を使わせるか悩んだセイは、悩んだ末、数個の宝石セリューの血に浸すことで馴染ませ、その宝石の分だけ使えるようにしたのだ。まぁ、浸す作業に魔術を使ってもかなりの時間を要したため、セリューへのプレゼントが遅れたわけだが。

 

「ガァッ!!」

 

「クッ……!!」

 

貫通した部分を修復させたコロが、再びマインに襲いかかる。

 

が、その直後のことであった。

 

ドスッ、と

 

何かを突き刺したような音がやけに響いた。

 

「…………え?」

 

「っ!? タツミッ!!」

 

自身の腹から突き出た何かを見つめて困惑を露にするセリュー。そして、二手に別れていた仲間が戻ってきたことに喜びを露にするマイン。

 

「すまねぇマイン。遅れた」

 

インクルシオを身に纏ったタツミであった。

 

セリューからインクルシオの副武装であるノインテーターを引き抜き、跳躍したタツミはマインの隣へと着地。同時に、セリューは片膝を地に付けた。

 

「羅刹の奴はどうしたの?」

 

「あぁ、埋めてきた」

 

グッ、と親指をたてて清々しく言い切ったタツミに、マインはどこか呆れながらもため息をつく。

 

「そんなことより…」

 

「ああ。ここで仕留める」

 

武器を構えて見つめる先には、貫通した腹を押さえながらも立ち上がるセリューの姿。

 

「す、姿が、見え、なかった……!」

 

背後からの一撃。インクルシオの奥の手である透明化を使った一撃はセリューに重症を負わせることに成功する。

 

「ガウ……」

 

「だい、じょうぶだよ、コロ………それより、今は敵に集中……!!」

 

内蔵から上がってきた血が口から流れていく。

 

「私は、まだ、死ねないから……!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ラァッ!!」

 

「うっ……!!」

 

インクルシオの一撃を何とか()()()右腕で受け流す。が、重心の崩れた体に力が入りきらず受け流しに失敗。

手甲があるため断ち切られはしないものの、ダメージは入る。

 

既に左腕を断ち切られ、身体中から血を流すその姿は痛ましい。

所々重症も目立つその姿。しかし、戦意は失ってはいなかった。

 

「……やっかいね…」

 

「だな…」

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……まだ、死ねない……!!」

 

タツミが来たことで一気に状況を巻きかえしたナイトレイド。

セリューはコロがいるものの、隙をつかれては同時攻撃を受けていた。

既に虎の子の結界は使えず、内蔵された弾丸も撃ちきった。

 

「あの時は仕留められなかったけど、今度は仕留めるわ」

 

パンプキンの標準をセリューに合わせる。

 

「ガァッ!!」

 

「タツミ!! あれは任せるわ!」

 

「おう!」

 

コロが突撃すると同時に、ノインテーターを構えて突っ込むタツミ。

ぶつかり合った二者。しかし、コロはもうほとんど動けないセリューを庇いながらの戦闘である一方で、マインも動けるナイトレイドは余裕をもって対処する。

 

「火力は弱いけど、これでもいける!」

 

「ラァッ!!」

 

そして放たれるセリューへの同時攻撃。

所有者さえ倒せば、その帝具であるコロも動けなくなる。

なら、本体を狙うのは当然のことであった。

 

ほぼ同時の攻撃。タツミを抑えたいたコロが慌ててマインの射撃を防ぐが、その隙をついてタツミはセリューの元へと駆けた。

 

「ガッ……!?」

 

「あんたは私が相手をしてあげるわ!」

 

タツミを追おうとするコロに牽制の射撃を放つ。

そろそろコロの狂化も切れるころだ。そうなれば、ナイトレイドの勝利は確実。

 

セリューに受けた傷を強気で耐え、コロを足止めするマイン。

そしてついに、タツミの槍がセリューを届いた。

 

「これで………!! !?」

 

「最後だと思ってんのかビチクソがァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

降り下ろしたノインテーターが紅槍に振り払われ、空いた胴に全力の蹴りが打ち込まれた。

 

防御も間に合わず、インクルシオの鎧をつけているにも関わらず内蔵に大きなダメージを負う。

 

「俺がいねぇ間に、また無茶したようだな、セリュー」

 

「セ……イ、君……」

 

「この後説教だ。覚悟しとけ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺の名前を呟いて崩れ落ちそうになったセリューを慌てて受け止める。

左腕を失い、腹に風穴を開け、大量の血を流したであろうセリューの顔色はかなり悪い。

補充していたダイヤモンドをセリューの口に入れ、もう何個か傷周りに配置する。

 

これで、少しは持つはずだが、直ぐにでも治療に入らなければまずい。

 

「コロ、お前もお疲れさまだ。ゆっくり休め」

 

「ガゥ………クゥン………」

 

狂化が切れたのか、体毛が白に戻って小さくなるコロはぐったりと動かなくなってしまった。

主であるセリューを守るため、限界を越えて戦ってくれたのだろう。

 

お疲れ、と縮んだコロを撫でながらコロをセリューの隣に寝かしてやる。

 

……さて

 

「覚悟は出来てるんだろうなぁ……!! このクソドモがぁ………!!」

 

「……最悪のタイミングで、最悪の相手が出てきたわね…」

 

「……どうする?」

 

「んなもん、やらなきゃ死ぬしかないわよ」

 

ナイトレイドの二人が話し合っているのが見える。

 

俺の手には破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)

正直、今すぐにでもこの二人を半殺しにしたいぐらいだ。

生きてるうちは、俺の屋敷で魔術の実験にでも使ってやろうか? 肉体も頑丈だろうから、さぞかし優秀なモルモットになってくれるだろう。

 

が、最優先事項はそれではない

 

「貴様らにチャンスを与えてやる。今すぐここを退くか、今すぐ俺に殺されるかだ。正直、殺してやりたいぐらいだが、時間が惜しいんだよ」

 

「あら、随分と優しいじゃない。選択肢をくれるなんて」

 

「勘違いすんじゃねぇ。いつか必ず、お前たちは俺の手で殺す。今か後かの話だ」

 

チラリ、と後ろのセリューに目をやる。

現在、半分となっている俺のスペックでは、この二人を相手にするのにも時間がかかる。

 

「……それじゃ、その言葉に甘えさせてもらうわ」

 

「っ! おい、マイン!」

 

「仕方ないわよ。今の状態じゃ、敗北必至。……行くわよ」

 

「クッ……分かった」

 

小声で何かを相談したのち、ナイトレイドの二人はこの場を去っていった。

 

それを見届けて、俺は直ぐにセリューの元へと駆け戻った。

 

「おい、セリュー! しっかりしろ!」

 

首筋に手を当てる。

 

「……まだ生きてる……が…」

 

このままじゃいずれ死ぬ

 

んなこと、絶対俺は許さない。

こいつにゃ、このあと泣きべそかくくらい説教せにゃならんのだ。

 

妄想幻像(サバーニーヤ)で分体を作り、セリューの左腕を拾ってこさせる。

ポーチの中は補充を済ませたお陰でかなり余裕がある。

 

セリューの助けにはいる前に、分体にあのサファイアを持って来るよう言ってある。あれが届くまでだ。

 

直ぐにポーチの宝石を使って、取れた左腕を浄化する。菌や汚れがついたままくっつけては、体力の低下したセリューには毒でしかない。

 

「死ぬんじゃねぇぞ!!」

 

身体中の怪我は治せるが、唯一、腹に空いた大穴は手持ちの宝石と俺の腕では治せない。

 

「セリュー、すまんっ!」

 

傷口がよく見えないため、血と土で汚れたセリューの服を破いて脱がす。

その際、下着が露になってしまうが、そんなことで躊躇してられない。

 

「分体!! お前たちはセリューの腕を縫って繋げろ! 宝石はいくら使っても構わない!!」

 

「OK! オリジン! 任せろってな! 裁縫は得意だぜ!」

 

どこからそのキットを出したんだとツッコミそうになったが、ぐっとこらえる。

 

何とか出血だけでも押さえなければ

 

 

 

 

 

 

 

「オリジン! 持ってきたぞ!」

 

少しして、闇夜から駆けてくる分体の姿をとらえた。手には、あの木箱。

 

分体から奪い取るようにそれをつかむと、直ぐに解錠して手に取り出した。

拳大のサファイア。帝都に行ってからの二年間魔力を込め続けた一級品だ。

 

原作では、六代に渡って魔力を込めた宝石が死に瀕した主人公を助けていた。

だが、まだ間に合う。この状態なら、このサファイアでも助けられる。

 

俺は受け取ったそれを静かにセリューの腹にかざした。

 

「絶対、助けてやるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、セリューは無事に息を吹き返した。

左腕は完全に繋がり、腹も少し傷が残る程度まで治せた。が、傷が残ってしまったことに関しては謝った。

 

女の子が、柔肌に傷を残すなんぞ、あってはならない。

エスデス? ありゃ女じゃねぇ。違う何かだ

 

目覚めた直後は、上半身下着姿の自分に気づき、思いっきり叩かれた。

ちょっと痛かったが、甘んじて受け入れよう。

 

今は、著しく消耗した体力の回復に努めてもらっているためベッドの上だ。もちろん、コロも一緒に。

ただ、今回のボリックの護衛任務にコロはもう使えない。

 

ナイトレイド二人相手に生き残った、ということでエスデスからは何もなかったとのこと。早く復帰しろと言われたらしい。

 

以下はその後の会話である

 

「覚えてない?」

 

「んー………確かに、インクルシオの中身が誰か見たはずなんだけど……」

 

「…死にかけて記憶が飛んだのか」

 

「うっ……ごめん…」

 

「構わねぇよ、生きててくれただけで。治療も間に合ったし」

 

「っうぅぅ……セイ君に見られた…」

 

「っし、仕方ねぇだろ。治療、だったんだからよ……」

 

「……ぅぅうぅぅぅぅぅぅ…」

 

「……はぁ…その、なんだ。せ、責任くらいは取ってやるから」(ボソッ)

 

「え? 今、何…」

 

「そんなことよりだ。説教はまだ済んでねぇんだ。覚悟しとけよ」

 

「うぅぅ……できれば優しくね?」

 

「無理だな」

 

 

 

 




あえて言おう。ご都合主義!

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