Fateで斬る   作:二修羅和尚

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五十四話

「へぇ! それじゃあ、セリューちゃんは元警備隊の所属だったんだね!」

 

「うん! そうだよ! それに警備隊はセイ君が隊長をしてるんだよ!」

 

「……なぁ、何でお前ら俺の部屋にいんの?」

 

「「いいじゃん、別に!」」

 

俺の言葉に元気よく返したセリューと羅刹四鬼の一人、メズ。

そんな返事に俺は思わずため息をついてしまった。

ちなみに、コロはセリューの部屋に置いてきたらしい。いいのかそれで

 

「おぉ? こんな美少女二人を前にして、ため息はダメだぞぉ~。ニシシッ」

 

「ちょ、メ、メズちゃん…!」

 

部屋の地べたに座りながら、こちらに目をやってくるメズ。セリューはセリューで、美少女という評価に照れているようだった。

 

まぁ、事実ではあるのだが。

 

「その美少女が、男の部屋に無断で侵入ってのもどうかと思うぞ?」

 

「お、美少女ってとこは認めたね? よかったね、セリューちゃん」

 

「うぅ……」

 

顔を真っ赤にして俯くセリューと俺とを交互に見てニヤニヤしているメズ。見た目通り、小悪魔みたいな奴だ。

 

セリューをからかうためなのか、俯くセリューの顔を覗き込もうとしているメズ。流石にセリューが可哀想であるため、俺に背を向けていたメズの頭にチョップを叩き込む。

 

「っ!」

 

が、そのチョップがメズに当たることはなかった。

俺がチョップを叩き込む直前に何かを察したメズはうにょんっとした動きでこれを避けた。

 

「……軟体動物みたいな動きだな」

 

「私たち、羅刹四鬼って、皇拳寺の裏山に住んでるレイクケラーケンって危険種の煮汁を飲んで育ってるからね。こういう動きは得意なの♪」

 

やけに説明口調なメズは、どうすごいっしょ、と自慢気に笑った。

 

しかしながら、胴着を着ていながら、上半身は胸を隠す水着のような布が一枚ってのは眼福ものだな。胸はセリューよりも小さいが、褐色肌に白の布の組み合わせはなかなかいい。

 

「ん? どうしたの? 見惚れた?」

 

「んなわけあるか。あとセリュー、睨むな」

 

「むぅ……」

 

メズと自分の格好を見比べて、何故か頬を膨らませているセリュー。

それやっても可愛いだけだから

 

「それで? 態々俺の部屋まで来た理由でも答えてもらおうか、メズ」

 

「まぁまぁ、セイ君。そう睨まないでよね。で、私がここに来た理由なんだけど……」

 

そこで、一度溜めを作って言った。

 

「さっきのイバラの攻撃を止めたあれ、見せてほしいなぁ~って。ね?」

 

顔の前に両手を合わせ、片目を瞑ってお願いしてくるメズ。

やけにそういったあざとい姿が似合っていた。

 

「さっきの……ああ、俺の礼装のことか」

 

「ああ、あれだね」

 

液体金属に俺の魔力を含ませた攻防索どれにも有能な自慢の礼装。彼女は先ほど見たそれが気になっていたのか。

 

まぁこれは宝具と違って警備隊や他のやつらにもバンバン見せているため、ここで見せても問題はないだろう。一応、敵ってわけじゃないし

 

俺はほら、と腰の大瓶を取り外してメズの前に置いてやる。

彼女は目の前に置かれたそれを興味深げに眺めていた。

 

「これは……銀色の液体?」

 

「一寸待てよ。『沸き立て我が血潮』」

 

「うわっ!? 動いた!?」

 

詠唱と共に中に入っていた水銀が動き出すと、そのまま瓶を飛び出していく。

メズはその動きに驚き、慌てて仰け反ると、華麗な後方ジャンプでセリューの元まで退避。

水銀がいつものスライム形態を取る間、なんだあれはと言いたげな目をセリューに向けていたが、セリューは大丈夫大丈夫と笑っていた。

 

「ほれ、コレがお前の見たかったものだ」

 

「へ、へぇ……は、初めて見たかな、うん」

 

若干顔をひきつらせながらしげしげと礼装、月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)を眺めるメズ。

恐る恐るといった様子でスライムをつついている。

 

セリューもこうしてじっくり見ることがないためか、警備隊の時によく目にしていたにも関わらず、メズと並んでスライムを眺めていた。

 

「触ってもいいが、やりすぎるなよ? それ、人体には毒だから」

 

「ふぇっ!?」

 

「な、ちょ、先に言ってよ!?」

 

俺の言葉に、バッ! と勢いよく手を引っ込めた二人に睨まれる。

意外にも可愛い声を出したメズにちょっとだけ萌えました。ええ、萌えましたとも

 

 

「え、ええっと……こ、これって帝具なの?」

 

先ほどの声のせいか、少し顔を赤らめているメズはそういて話題転換にはいる。

その様子に、思わずプッ、と吹き出してメズにジロリと睨まれた。

悪い悪いと謝ってから俺は帝具ではないと否定する。

 

「俺の帝具はこっちの目の帝具だ。それはまた別だ」

 

「嘘だぁ~」

 

「嘘じゃねぇよ。な、セリュー」

 

同意を求めるようにセリューに話を振ってやると、その通りだよ、とセリューも頷いた。

 

「セイ君って、警備隊に来たときからこれ使ってたしね。それに、やることなすこと全部不思議で異常だからね」

 

「おいこら、不思議で異常は失礼だろうが」

 

「だってそうじゃん。私、宝石武器にしてる人なんて見たことないよ?」

 

「え、宝石? マジ?」

 

うんマジだよ、と宝石という言葉に反応したメズに返すセリュー。

その話を聞いて、見せて見せてとしつこくせがんでくるため、残りが少なくなった宝石をポーチからひとつだけ取り出した。

 

ほれ、とメズの掌に乗せてやるとほぉ~と宝石を掲げて黙り混んでしまった。

 

「……殺し屋とはいえ、女の子、か」

 

「…ん?」

 

「いや、何でも。あと、それはやらんからな」

 

「ええ~。セリューから聞いたけど、すっごいお金持ちなんでしょ? いいじゃん一個くらい」

 

「よくないね。大事な俺の武器だ。その一個が勝負を分けることもある」

 

「ぶぅ~、ケチ」

 

文句を言いつつも、はい、と宝石を返してくるメズ。

俺はそれを受けとるとすぐにポーチへとしまった。

 

「んじゃ、俺はクロメの部屋に行ってくる。この部屋使ってもいいが、あんまり散らかすなよ?」

 

「大丈夫だよ!」

 

「お、これから夜這い?」

 

「メズ、あとでシバく」

 

「ニャハハ、冗談冗談」

 

部屋を出る直前にもう一度だけメズの方を睨み付けておく。

 

さて、まずは分体から追加の宝石を受け取らないとな。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「で? セリューちゃん、セイ君とはどこまで進んでるの?」

 

「……え? 何が?」

 

「何がって……セイ君のこと好きなんでしょ?」

 

「ふぁっ!?!? な、何を言って……!?」

 

「まぁたまた~。気付かないとでも思ったの? フフン、このメズ様の目は伊達じゃないよ?」

 

ま、見てたら誰でも分かると思うけどね、とメズは心の中で呟いた。

元々、あのセイという男がどれ程なのか、個人的に興味がわいたためにここに来たのだが……

あれは強い。それも羅刹四鬼最強のイバラよりも、だ。

 

噂では、あのエスデス将軍と互角に殺り合ったと聞いていたが、デマではないだろう。彼には、それだけの力がある。

 

「うぅ……何でバレちゃうんだろ…」

 

いや、あれでバレないわけがないだろう、と声には出さずにツッコんでおく。

 

実際のところ、セリューの恋心はクロメやラン、更にはボルスなどにもバレバレなのだ。

 

「まぁ大丈夫。応援はしてあげるからさ! なんなら、帝都に帰ったときに服でも見繕ってあげるよ?」

 

「え、いいの? それは助かるよ!」

 

「うんうん。セリューちゃん、着飾ったらかなり可愛くなると思うんだよねぇ~。ふふっ、このメズ様に任せなさいって!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

分体から宝石を受け取ったのだが、何故か、あの大宝石も持ってきていた。

曰く、日課としていた魔力を込める作業をこっち来てからやってないだろ? とのこと。

確かに、と納得して受け取っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、余談

 

「んっ……ぁ……っ!」

 

「どうだ? クロメ」

 

「な、んか……これ、すごぃ……!!」

 

「んじゃ、これをくわえてくれ。絶対噛むなよ? やってる間はなめておけ」

 

「んっ」

 

「おいセイ!! お前クロメに何やってんだ!?」

 

 

「へ?」←(セイ、クロメに宝石をくわえさせて治療中)

 

「…あれ?」←(ウェイブ、勘違い)

 

「……ウェイブって変態だったんだね…」

 

「……う、うぁぁあぁぁぁぁぁ!?!?」←(恥ずかしくて逃げ出すウェイブ)

 

 

 

 


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