Fateで斬る   作:二修羅和尚

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六話

「では、オーガ隊長。俺たちはこれで失礼します」

 

「ん? おう、セイとセリューはもう上がりか」

 

「ええ。隊長はまだ仕事ですか?」

 

「……ああ。ちょっと、これから会う奴がいるからな」

 

すでにセリューはイエヤスとサヨの元へと向かわしている。俺はというと、一応副隊長であるため、こうやって今日一日、他の隊員たちからの報告をまとめて隊長であるオーガに報告しなくちゃならん。

 

そんなわけで、俺は帝都のメインストリート付近にある詰所の本部へと訪れていた。

 

「ほんと、仲良いですよね〜。隊長とあのガマルって人」

 

「まぁな。ほら、帰るんだろ? あとは俺に任せておけ」

 

「んじゃ、お言葉に甘えて。失礼します」

 

一度出入り口で敬礼し、そのまま詰所を出る

 

油屋のガマル

 

色々と悪事を働く男であるが、警備隊の隊長であるオーガに大金を渡すことで、全く無関係の人を犯人としてでっちあげ、自身は見逃してもらっている。

今日は。その大金を受け取る日なのだろう。人目につかないように、本部の自室にガマルを呼んで受け取ってるのは、以前に屋根裏に潜ませておいた妄想幻像(サバーニーヤ)の分体が目撃している。

 

警備隊連中には、武術を教えたりなどして信頼はされているが、裏があれでは台無しだ。

 

実際、警備隊である俺にも優しかったりする。

が、そこに情などない。それはそれ、これはこれ。

あんたが隊長でいられるのも、今だけだ。近いうちに、まずい飯しかでない牢屋行きだ。

 

それくらい、オーガがやってきたことは重い。

 

「まぁ、それだけじゃないんだけどな…」

 

いや、主な理由としては合っている。が、俺が隊長の座を奪おうと動き出したのはここ最近だ。

 

理由は一通の手紙

 

チョウリ様からの手紙だ。

 

三年ぶりに連絡がきたことに歓喜しつつ、中を読めば、近々、チョウリ様は帝都に戻り、また大臣として皇帝に仕えるとのこと。

オネストと真っ向から戦う決意がついたそうだ。

 

スピアも一緒に来るのだとか。

あっちを出る頃にもう一度手紙を出してくれるそうなので、その時は迎えに帝都から出るつもりだ。

 

 

それと、もう一つ。

 

チョウリ様が来るのなら、部隊の一つくらい、良識派閥にしておいたほうがいいよねってことだ。

あのオネストには、帝国最強とかいわれている女とその部隊がついている。

チョウリ様が戻られた場合、ブドー大将軍率いる近衛隊がついてくれそうではあるが、万が一ということもあるし、戦力は多いに越したことはない。

 

それに、俺が隊長になれば、道具製作Cで作成した魔導具も導入できる。

今やっていないのは、ここでそんなものを使って成果をあげても、それは必ずオーガの評価を上げることに繋がってしまうのだ。何故、俺がそんなことせにゃならん。

 

まぁ、そんな諸々の事情で、俺が隊長になる必要があるのだ。

残り少ない隊長生活、今のうちに楽しんでおけよ、オーガ隊長さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉーーー!?!? でっけぇーーー!!!」

 

「す、すごっ……」

 

「ふふん、驚いたでしょ!」

 

「何故セリューが得意顔なんだよ……」

 

その後、三人と合流した俺は、そのまま自宅へと向かった。

俺の自宅は帝都の端と宮殿のちょうど真ん中くらいの位置に建っている。

治安もそれなりに良い場所で、更に広い土地を確保できる場所がここしかなかったわけなんだが。

 

そんな自宅ではあるが、先ほどイエヤスが叫んだ通り、かなりでかい。多分、そこらの貴族よりも、だ。

 

当然であろう

 

なんせ、俺の家はいったい何を間違えたんだと言われそうな寝殿造りの家なのだから。

 

もう一度言うぞ

 

寝殿造りである。

 

寝殿造りとは、日本の平安時代くらいで見られる貴族の家だ。

 

もちろん、庭の池や中島までちゃんと再現してあるぞ。

 

 

黄金律B

 

某英雄王が持っていたものと同じスキルだ。

まぁ、あのお方はランクAだったけども、それでもBは破格だ。なんせ、一生をかけても支えきれないほどの額らしいからな。

 

ただ、俺は宝石魔術を使用するため、これにはかなり世話になっているのだが。

 

「ほら、そんなとこで固まってないで、さっさとついてこい」

 

「了解! ほら、二人とも! 早く行くよ!」

 

門をくぐり、続いて二人の手を引いたセリューが続いた。

その様子を確認した俺はその場でパチンッと指を鳴らす。すると、先ほどまで開いていた門の扉がひとりでに閉まっていく。

指パッチンは…まぁ、あれだ。演出

 

「いつ見てもセイ君のそれ、不思議だよねぇ…」

 

「な、なにっ!? 今の!? スゲェ!!」

 

「……驚くことに疲れる…」

 

セリューは慣れたような口調で、イエヤスは興奮が未だに覚めておらず、サヨに限っては、もうげんなりとしていた。

 

まぁ、初めてなら、この二人の反応のどっちかだろうな、と思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

「あ! セイさん! お帰りなさい」

 

そんな時、俺の背後から声をかけられた。

振り返ってみると、そこにいたのは和服に身を包んだ一人の少女。

 

「おう、エアか。悪いけど、三人泊めるから、そのこと屋敷の全員に伝えてくれ」

 

「はい、わかりました! あ、セリューさんも泊まるんですね!」

 

「やっほ〜エアちゃん。久しぶり〜!」

 

「ちょ、セリューさんくすぐったいよ…」

 

いつの間に移動していたのか、セリューはエアの背後から抱きつくと、そのまま頬擦りをしていた。

 

「おい、セリュー。エアの邪魔をするんじゃねえよ」

 

「アイタッ!?」

 

軽く頭頂にチョップを落とす

 

「う〜、セイ君、今日は多くない?」

 

「そんだけいらんことをしてるんだよ。んじゃ、エア。よろしく」

 

「はい! 『通達します。本日、セイ様のお客様三名がお泊まりになられます。今から準備に取り掛かりますので、手の空いた方から別棟へ向かってください』」

 

『了解!』

 

エアが首から掛けられていた小さいルビーに話しかけると、その内容が屋敷内にいた女中の人や屋敷内警備の人達に伝えられた。

これも、俺が作った魔導具だ。効果といえば、同じものを付けている人と会話ができる、いわゆる携帯みたいなものだ。

 

……もっとも、話し相手は指定できないが

 

それでは失礼します、といってエアが立ち去っていくのをただぼんやりと眺める。

まぁ、まだ準備には時間がかかるようだし、ちょいと屋敷の中でも案内しようか

 

そんなことを伝えてみたのだが、その言葉に、イエヤスは大はしゃぎ。サヨはといえば、もう何か悟っていらっしゃる。

 

セリュー? さぁ?

 

まぁ、案内終わるころには準備もできているだろうし、問題はないはずだ。

そう思って、俺は二人に屋敷の中を案内するのだった、

 

 


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