Fateで斬る   作:二修羅和尚

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今回からいくつか、セイの過去でもやろうかと。
時期的にはセイが帝都に来てからの一年間ですね



過去編

長かった。本当に長かった

 

「やっと……ついたぁああああ!!!」

 

チョウリ様の家が北の辺境だってことは前々から聞いてはいたが、予想よりも到着には時間がかかった。

食料については、数日分持ってはいたのだが、途中で尽きたため、あとは現地調達。危険種やらがわんさか出てきたが、そこは問題なく斬り殺している。

 

ここまでの道のりで、偶然にも危険種に襲われていた商人の人たちを数回ばかり救ったため、臨時収入があったのは嬉しい誤算だった。流石黄金律先輩である。

ていうか、黄金律先輩さえいれば、俺働かなくてもいいんじゃね?

 

「とは言っても、職は探さなきゃだが」

 

帝都の入り口付近で叫んだために、周りの人から変な目で見られている。

俺はそんな目を誤魔化すように呟くと、一人そそくさと帝都の門を潜った。

 

 

 

ここが何の世界なのかはわからないが、まぁ何かしらの原作、もしくはそれに似たような世界であるに違いない。勘だがな!

 

そんなわけで、全くの無知状態でスタートなのだが、帝都なんていういかにも物語の中心になりそうな場所があるんだ。

西の方には王国とやらがあるらしいが、そんときはそんときだ。

それに、チョウリ様との約束もあるから、離れられんしな

 

まぁでも、王国の錬金術ってのには魔術師として興味がある。いつか行ってみたいものだ。

 

「っと、そんなことしてる場合じゃねぇや」

 

確か、軍が募集の受付してるってとこまで行かなきゃだ。

 

荷物に入っていた帝都の地図を取りだし、現在位置を確認。少しばかり急ぎ足で目的地へと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁっ!? 何でだよ!?」

 

「だから、応募してくる奴が多いんだって」

 

目の前で五月蝿そうに顔をしかめる男はその顔を更に面倒臭そうに歪めた。

 

「だからって、何ですぐ地方なんだよ!」

 

「うっせぇなおい。言ってるだろ。帝都の軍だって人数に限りがあるんだ。現状じゃ、もう溢れてるからそういう処置は仕方ねぇんだよ。ほら、わかったらさっさとこれに名前を書け」

 

ほらよ、と手渡された羊皮紙には既に十数名の名前が記入されていた。

俺はそれを受けとるや否や男の目の前に叩きつけ声高々にいい放つ。

 

「だったら! 俺の実力を見てくれ! そうすりゃきっと考え直すはずだ!」

 

 

 

 

 

 

放り出されました

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あのおっさん曰く、そうやってアピールしてくるやつは多いらしく、いちいち相手にしていたらきりがないとのこと。

納得できるだけに悔しいものである。

 

軍にはいっても地方じゃ意味がねぇじゃねぇか。

 

「はぁ……どうすっかなぁ…」

 

金はあるから問題なしとして、ここからどう動くか、だ。

 

とりあえず、近くにあった喫茶店に入店し、軽く食事を取る。

久しぶりにまともに調理したものが食えて嬉しいです。

食料尽きてからは俗にいう男料理だったからな。

 

「ん~、まずは宿でも取るか。んで、空いた時間で帝都の情勢でも調べてみよ」

 

チョウリ様やスピア曰く、もうこの国は腐敗している状態らしいし、その大本がいる帝都のなかを調べてみるのも一つの手だろう。

まぁ、動くとすれば夜の方がいいのは当然か。

 

「それまでは観光にでも洒落込むか」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

なんというか、日中街を歩いて気づいたんだが、随分と街の雰囲気が重い。

俺とすれ違う人のほぼ全員が顔を俯かせたり、暗い顔だったりでどんよりとしている。

これもチョウリ様が言ってたオネスト大臣による影響なのかね。

 

「おい、オリジン。ここらへんの情報収集が完了したぜ」

 

「お、早かったな。流石、アサシンだ」

 

「それが仕事なのよ。気配遮断のスキルしかないしね。オリジンと違って」

 

現在夜。

路地裏へ待機していた俺の背後に現れた九つの影。

骸骨の仮面を着けた全身黒一色の男女。

 

「それで? どうだったんだ?」

 

「ぜ、全部ビンゴだったよ。この辺の貴族の殆どはグルだったし……の、残りも裏で人身売買とかやってるみたいだったよ」

 

奥にいた少しなよッとした見た目の分体がそう発言すると、その周りの分体もそうだとばかりに頷いた。

 

「資料は?」

 

「写しを取ってきた。心配はねぇよ」

 

ほいよ、と少々口調の荒い分体に渡された羊皮紙の束を受けとる。

早速一ページから見ていくが……おうおう、色々とやってますなぁ

 

「で? オリジン。おめぇはそれを見てどうすんだ?」

 

「ん? そういうのって分かるもんじゃねぇのか?」

 

「アホ抜かせ。確かに、俺たちは根っこの部分じゃ繋がってはいるが、考えが分かる程のもんじゃねぇんだよ」

 

「へぇ……そりゃ知らなかったぜ」

 

「そういうわけで、だ。理由聞いてもいいか?」

 

その問いに、俺は勿論、と頷いた。

 

「こんなけの外道どもだ。金目のもんごっそり頂戴しても文句は言われんだろ?」

 

「……つまり、盗みか?」

 

「失礼な。もうちょいマシな言い方をしろよ」

 

「こそ泥」

 

「酷くなってるよ」

 

呆れたような目を向けてくる分体達に、それじゃと別れを告げて宝具『妄想幻像(サバーニーヤ)』を解除する。

直前で、あ、こらてめぇ! と言われたような気がしたが気にしなーい気にしなーい

 

それに、ただ単に金目的って訳でもない。

ここのリストに載っている奴は皆オネストにつく奴等だ。

チョウリ様が戻ってくる時には確実に邪魔になるだろう。

なら、ここで証拠を集め、時が来たさいに一斉検挙でもしてやればいい。

そしてそんな奴等だ。捕まる前にその財産奪っちまっても問題はない! はずだ!

 

それに、だ。

そういう、裏で暗躍みたいなのってカッコよくない?(本心)

 

おまけに俺の魔術でも役に立つ宝石を揃えられるのだ。損はない。

 

そんなわけで、だ。

 

「怪盗セイ、参上! 何つってな!」

 

その日、真夜中に少年の高笑いが響いてうるさいとの苦情が警備隊に来たらしい

 

 




当初のセイ君ってば、若干中二が混ざってたのかな。
ちなみに、このときのセイは十六才。
正統派のヒーローよりもダークヒーローの方が好きだったご様子

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